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卒業まで

作者: SPiCA

 彼のちょっかいは私で遊んでいるだけなのだと自分に言い聞かせていた。両思いなんて期待しないように。

 卒業まであと少し…、彼といられる時間は残り少ない。

 妄想だけならいいだろうと思って、卒業後を考える。

 淡い思いが心を揺さぶって、心が落ち着くところを知らない。

 今はそんな日々…。



 この前、幸せな出来事があった。

 掃除の後に彼と普通にたわいもない話をしていて…そのまま放課後、教室からちょうど死角になって皆から見えない場所でずっと話をしていた。

 話をしている途中、私が時計を見たとき、話し始めて20分経っていた。さすがにこれはまずいかなと思って、彼に時計を見せた。私は彼に教室に帰るかどうか判断を仰ごうとした。私からこの状況を自分からやめようと言う事が出来なかったのだ。大学受験真っ只中でこんなことをしている時間があるのなら少しでも勉強するべきなのだと分かっていながらも、もうこんなことは二度とないかもしれないと思ってしまった。彼は、「戻るかどうかは○ちゃんしだい。」と言った。判断を仰いだ私に戻ってきてしまった。戻ろうと言えるはずがない私は、そのまま何も言えず、いつの間にか違う話を展開させていた。彼にも受験があるのにと罪悪感がある私はもう一度時計をみて、5分経っているのを確認して、彼にも見せた。彼は、「時計を見てると、時間が長く感じられるよ。」と返した。それから私が時計を確認することはなかった。

 教室から次々に同級生が帰っていく。さすがに帰らなくてはと思って時計を見ると、話を始めて1時間を優に越えていた。この時程、漫画によくある「この時間が永遠になればいいのに。」というヒロインの感情が身にしみることはなかった。



 卒業してしまったら、私は看護学科のある医療専門の大学に通う。そして、彼は工学部。

 職場で再開なんていう淡い期待も虚しい程、私達の進む道は全く違う。

 きっと私達は、大学に入ったら新しい出会いをたくさんする。

 そして、お互いに違う人を好きになるのかもしれない。


 でも、こんな想像をしてもいいだろうか。

 いろんな出会いをして、たくさんの恋をして、それでもふいに彼が私のことを思い出してくれる時があることを…。


 彼を好きになったのは4年と半年前。長い長い片思いがようやく実をつけようとしているかもしれないのに、別れがくる。いつも相手に思いを告げることのない私は今まで両思いになることはなく、別れがきて終わっていった。そして、この恋も終わりがくるのだろう。

 好きな人がが幸せであれば、それが1番いいのだ。私と一緒に時を過ごすよりも幸せな事があれば、それが私にとっても1番なのだ。他人から見れば、それは恋をまともにしてないからだと言われそうだが、その考えはわたしにとっては多分これから先も変わらないことだろう。昔から臆病な私は思いを告げて関係が変わってしまうこと、嫌われることが1番悲しいのだから。


 だからこそ、彼の笑顔が見られなくなるその日まで、残りの日々を宝物のように大切にしていきたいと心のそこから思う。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 読みやすい文章でした。 未来へと歩んでいく感じがよく伝わってきました。
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