出会いは突然に
ドムという少年と出会ってから、ビリーはトランプ兵たちに、立ち向かいにいったのであった・・・・・・という訳でもなく、出会ってから数週間ビリーはドムと洞穴ことドムの住居でほぼドムにお世話になってもらっていた。
ビリーも助けてもらったからには、手伝おうとするが例えば、洗濯といっても、そもそも洗濯機などなく、洞穴の奥深くの水辺で洗っているとビリーは聞いて、ついて行こうとした時に
「ここより奥は暗いからやめといた方がよいぞ、ワシは服など持っているから手をつなぐ事はできんから、迷ってもかまわんならついてくるか?」
そう言われ「やめておきます・・・」とあきらめたのだった。
だから出来る事といえば掃除と料理だけである。
ビリーが外に食糧を探しにいってる間にしているが、ドムもほぼ家にいないからか掃除もすぐにお終わってしまうのだった。
「はあ・・・暇だなぁ・・・まあ、ちょっと前に「ついていくか?」と言われて、心の準備できてからついていくといって数週間・・・白い服も目立ちにくい茶色の服にしてもらったり、武器も渡して貰えたのに・・・いまだ心の準備がつかないとか・・ああ・・もう!どんだけビビリなんだよ、僕は!」
ドスン!
独り言をぶつくさとしていたビリーの後ろから何かを置いた音が聞こえ、ビリーが振り向くと、いつもの食糧ともうひとつ、本らしき物を背負ったドムが帰ってきた。
「そうじゃのう、暇なら手伝ってもらいたいがのお」
「ど、ドム!い、いつからそこに!?」
「お前の独り言が聞こえていた時からだ、長―い独り言だったの!ハハハハ!」
「いたなら話しかけて下さいよ・・・!」
「暇だったろ?だから驚かせててやろうと思って、黙っていたのだ、ハハハハ!」
「心臓に悪いからやめてくださいよ」
「そんな事言っていると、いつまでたっても出れんぞ?ここから」
「それはそうですけども・・・・」
さっきまで、思っていた事を突っ込まれ、ビリーは落ち込んだような顔でうなだれてしまった。
「また落ち込むのか、お主、この話をするたびに嫌な顔するが、外に出ない記憶も何も、探せないぞ?」
「・・・・・・分かってますよ・・・」
最近のビリーとドムは、こんな会話をドムが帰ってくるたびしていた。
「・・・・まあ、よい。ワシも正直、焦ってはおらぬからな。
あ、それはそうとビリー、明日は外に出るぞ」
「え?」
「さ、食糧もとってきたから、早く料理してくれ」
腹がへったと連呼されるうえに、グイグイと台所に押されるので、ビリーはなんともいえない顔をしつつ料理をし始めた。
その間、荷物を奥の方に置き、出来たら起こしてくれと、ドムは寝てしまった。
先ほどの外にでるという、爆弾発言について聞きたいが、寝てしまうと、早々起きない。
料理の準備をしつつ、寝ているドムを見ていると、本当にドムは本当に子供にしか見えないなとビリーは思った。
外に出る時は、鎧やら盾を、みにまとっているため、少年にしてはゴツくて、少年らしくはないのだが、此処に帰ってくると、ほぼ脱いでしまう為、見た目、ほぼ少年そのものだ。
ただ、何故髪の毛が白い、目も青に近い黒で、多分小説とかなら隻眼の美人ともいえるが、脱いだら、筋肉質なのがよく分かるくらい、がっしりしていている。
「この人も相当謎が多いよな・・・本人は覚えてないから聞いても、意味がないけど」
と晩御飯の準備を終えて、座りながらまた独り言、していたら、ガバッとドムが起きてきた。
「いいにおいしてきたな!!!食べるか!!」
「うわっ!!だから脅かさないでくださいよ!!それに起こさなくてもにおいで、起きるなら起こさなくてもいいじゃないですか!」
「腹が減っていたからな!さ!食うぞ!」
「理由になってないですよ!あ、ちょっと!僕の分まで食べないでください!」
数分もしないうちに、ドムは平らげてしまう為、ビリーは元々、急いで食べる事はなかったが、早く食べるようになってしまった。
二人が食べ終わり、ビリーが後片付けをしている中、ドムは先ほど読んで欲しいと行っていた本を読んでいた。
ビリーは読んで欲しいといっていたのに、自分で読めてるのなら必要ないのではと言わんばかりの顔を皿を持ちつつ、ドムに疑問顔を向けていた。
「ビリー、顔に出ているぞ」
「えっあっごめんなさい・・・」
「お前は顔に出やすいタイプだな、まあ、疑問なのも分かる、この本はまだワシが読める文字で書いている本だからだ、お前に頼もうとしていたのは、ワシが読めぬ、文字の本だ」
「あ、なるほど・・・その本も含めてですけど、どこからもらってきたんですか?」
「ああ、おとぎ図書館という場所から、盗って来た」
「・・・・いままであまり突っ込みいれずにいようと思ってた事がいくつかあるんですが、後片付けした後聞いてもいいですかね?」
「後からか?めんどくさい!今、聞けばよかろう」
「僕が落ち着かないので、先にしてきます」
ビリーはそう言い、いつもどうり片付けをささっと慣れた手つきで済まして、ドムが座っているベッドの下、床に座り、ドムの方は向かずに先ほどの疑問をぶつけた。
「ドムさん、色んな食料は物品はいつも・・・・もしかして泥棒してきてません?」
ビリーは、冷や汗をかきながら、(やばいこと聞いているのかもしれない)と思いから、ブルブル震えつつ聞いた。
「そうだが、それがどうかしたのか?」
「やっぱり・・・・それ、人間として駄目だと思います・・・・」
「そもそもワシはニンゲン?というのは知らん、お前の姿みたいな姿をしている奴はヒューマンと呼んでいるが」
「それですよ・・・」
「なら、ワシは人間ではないぞ?見た目お前に似ているがな、ワシはこれ以上、高くはなれない、それに、ほれ」
そういうと、いつも邪魔そうなのにずっと、長いまま、くくらずにいた白い髪の毛をどけると、耳がとんがっていた。
「え・・・・?」
「人間はこんなとんがってないとある資料に載っていた」
「・・・・・なら・・・ってそうだとしても駄目ですよ!ちゃんとお金はらわないと捕まりますよ!」
「ブハハハハ!それはあり得えん!ワシは逃げ足は、自信があるから、そう簡単には、捕まらないからな!」
「いや、だから・・・捕まらないどうかより、普通にお金払って買いましょうよ」
「そうしたいがなぁ・・・今いる、トランプの女王の領域では、法外な値段でしか売られてないのだ、しかもワシのような、お前もそうだが得体の知れない者は即、死刑だ」
「え・・・?」
「だから、奪うしかあるまい」
「悪い事だとしても・・・ですか・・・・・そうですか・・・」
「死ぬよりマシだろう?さあ、そんな事は置いといてだ」
聞いてしまって、後悔したような、聞かなければよかったと思わんばかりに、うつむき、うなだれているビリーをよそに、ドムは先ほど読んでいた本を、ポイっとどこかに投げて、ベッドの上から、あるものを渡した。
斧だ。
「お前の素性を、調べる為に、おとぎ図書館を襲撃するぞ」
「は?」
「情報があるのは図書館が多いが、どれがお前の世界と関係しているまでかはわからん、だから調べにいく」
「いやいや、むむむ・・・・無理ですよ!!」
「無理でも、行くぞ。防具や武器はワシが作った。
この後、奥にある、鍛冶場に置いてあるから、ついてこい、重たければそこで作り直すからな」
「無理でもいくとか!僕、なんの力もないのに・・・・ついていっても僕かなり足手まといですよ・・・
それにまた、盗むのでしょう?僕、そんな事をしたくないです」
「だが、ワシもお前もこの国、まあ、今は領域、トランプの女王の村っていったようなものだが、それはともかく、よそ者だぞ?それ以外に方法はないだろう?」
「うううう・・・・でも・・・」
ビリー不満そうな顔をしていた、方法はなかった事は分かっていても受け入れられないそんな態度だ。
「ビリー、お前、いくじなしの割には頑固な奴だな。なら、盗む前に読んでしまうのはどうだ?」
「はえ?」
何を言っているのか分からないと言いたいばかりの口をポカンと開けてビリーはドムの方を振り返って変な声をだしてしまった。
「お前が弱そうなのは見た目でよく分かる、戦えとは言わん。
戦うのはワシがやる、その間にお前は、お前が戻る為の資料を集めろ、そしてそこで読んで覚えろ」
「えええええええええええ!?何無理な事を言ってるんですか!!そんな人間離れした事できませんよ!?」
「それも出来んのか・・・!ワシが若い頃なんて、一日で百冊くらいはよんで暗記したというのに」
「人間ではないからでしょう?見た目的にもですけど・・・」
「ううむ・・・しかしそれ以外に調べる方法といってもあそこが一番、色んな資料が置いてある場所だから、あそこを襲撃が最適なのだがな・・・・・・ああ、そうだ!」
難しい顔をしていたドムであったが、急にパアッと笑顔になり、ビリーの肩を掴んだ。
「うわっ!」
「お前が探したら、ワシを呼べ!それを暗記してやる。読めるかどうかはしらんが、文字の暗記なら完璧だからな!ドハハハ!」
「いやいや、探すって、どんな場所かも知らないのに、僕が探している時間なんてないですよ!」
「地図ならあるぞ、ほうら」
そういうと、館内案内のようなパンフレットみたいな、四つ折りした地図を出してきた。
「なんか美術館とかのパンフレットと同じくらいだ・・・そこまで大きくはないんですね」
「美術館?なんだそれは?」
「図書館は本を置いてる所ですよね、美術館は絵とかを置いてある所です」
(図書館は知っているのに、美術館は知らないのか・・・不思議だな)
ビリーが不思議に思って、ぼんやりしているうちに、ドムがパンフレットで、地図の説明をし始めようとしていた。
「なるほど、勉強になった。さて、それはともかくだ、明日襲撃しに行くにあたって、どこに何があるか、そしてお前が探す場所を教えておくから、せめてそこだけ覚えろ」
「え?探す場所知っているんですか?ならドムが探せばいいのでは?」
「場所は知っていても、お前の欲しい情報は分からんからだ、さて、無駄話は明日向かう途中に出も、語ればいいだろう、明日の作戦を立てるぞ」
「え、いや、あの、まだ行くなんて一言も・・・・」
「あぁ!?」
「・・・・・はい・・・」
最終的に、盗む事は譲歩してもらえたのと、最後の、いいかげんにしろよ?といわんばかりの怒り顔につい、条件反射で「はい」と答えてしまっていた。
この夜、ビリーとドムは明日の作戦、そして、ビリー用の防具、といってもドムが着ていたような防具は重たすぎて着れないので、足と上半身と頭にかぶる甲冑なども、出来る限り軽い物を、ビリー用に作っていた防具をドムがその場で、打ち直してくれていた。
ビリーは初めて、鍛冶場に行ったことと、ドムの腕さばきに、感動していた、荒々しいが、すごく早く、手捌きも、そして目も、爛々とかがやいて見えた。
(楽しそうだな・・・うらやましい・・・)とそんな、何故かうらやましさにビリーは少し胸がチクリとした。
そして、ついに、ビリーとドムの襲撃ならぬ忍び込み作戦の日がきた。
ビリーはほぼ眠れなかったような、青白い顔をしていた。
ほぼ徹夜で起きていたせいである、朝ご飯も手が震えつつも作っていた。
ドムそんな事は露ともしらず、すやすやとまだ眠っている。
幸せそうに寝ているのを見ていて、ビリーは恐怖もあるが、苛立っていた、こっちは全然寝る事もできず、体調もよくないし、ご飯も入りそうにないのにと。
だが、その反面、ドムがこうでもしなければ、ビリーは、ずっと、動かなかっただろうと、ビリー自身、わかっていたから、恐怖心、苛立ち、感謝、など複雑な思いを巡らせていた。
「あーあ・・・やっぱり忘れたままの方が安全だし・・やめておこうって言おうかなぁ・・・・」
独り言を言いつつ、ご飯の用事を済ませていく。
朝ご飯の準備ができ、ドムを起こそうとすると、においにつられてガバッと起きる。
「腹減った!」
「うわっ!朝からよく、そんなバッと起きられますね、僕とかそんな起き方したら、フラっとしそうですよ」
「お前は、見た目も中身もひ弱だからな!もっと強くなる事だ。
まあ、どちらにしろ、今日、お前が嫌でも強くなれると思うぞ」
「あの・・・その事ですが・・・やっぱり・・」
「早く食え、食い終わったらすぐ着替えて出発だ」
「・・・・行かなきゃダメですかね?」
「このワシの協力が嫌か?ふうむ、どうしても嫌なら、今更だが出ていけ」
「え??」
「改めて聞くが、お前に協力する理由、料理だけだと思っていたか?」
「それは・・・・不思議に思っていました。・・・それだけで助けてくれて、でもそれ以上聞くと、本当に
追い出されたらとか、色々考えてしまっていて聞けなかった・・・」
「お前もワシも、記憶がない、だからこそ、もしかしたら、もう一度初めに出会ったあの人が現れてくるかもしれない、お前の記憶探ししていると、ヒントでも与えにくるかと思ったからだ。」
「どうしてですか?」
「同じ記憶なしだろ?なら、お前の記憶を探してたらワシのも出てくる可能性があるかもしれんと思ったからだ。
しかし、お前が探さないというのなら、これ以上一緒に居てもらっても食い扶持が増えるだけだからな、一応、お前が探しに行くというまで待つ、つもりではいたがいつまでたっても言わないから、強硬手段をとったまでだ、さあ、どうする?ワシはこれ以上待つ気はない、決めろ」
「き、決めるって?」
「此処を出るか、おとぎ図書館に記憶のてがかりを探しにいくか」
どちらにしろ、危険な目に合う。
それはビリーにもわかりきっていた、だが、何も力の持たないビリーにとって、此処を放り出されたら、即捕まる事も予想できること、だからこそビリーは、苦悶の表情をうかべながら、叫んだ。
「・・・探しに行く・・・しかないじゃあいか!そんなの!」
「決まり切って居た事だっただろう、さあ、早く飯を食って、準備しろ」
「もし・・・そこで僕や貴方の記憶が戻す手がかりさえ見つからなかったら、どうするつもりですか?」
「お前をそこにおいていくつもりだ、ワシはまた違う場所に探しに行くつもりだったからな」
「ええ!?それ、聞いてないですよ!?」
「聞かなければ、言う気なかったからだ」
「・・・・はあ・・・僕は結局、どちらにしろ、行くしか選択肢はなかったのか・・・・もしも、なかったとしても放り出されるし・・・」
「そういう事だ、諦めろ、ほら!早く食え!ワシはもう食べ終わったぞ!」
「いつのまに!?」
恐怖心が消えたわけでもないが、『このままで』という希望も空しく、ビリーは諦めに近い覚悟を決めさせられ、せかされた通り、いっきにお腹にかきこんで、後片付けをして、ブツブツいいながら準備をしていた。
「・・・・はあ・・・もう・・・どうにでもなれだよ・・・はあ・・・」
ビリーが準備をしている間に、ドムは準備を終え、さらに、ビリーは気づいては居なかったが、奥の洞窟にある鍛冶場で、さらに武器や防具を作っていた。
忍び込む事自体ドムにとっては、そこまで大変ではないが、今回は一人ではなく、戦えるのかも怪しいビリーを守りつつ、というのもあり入念にメンテとさらに使える物がないか調べて、なければ作るという作業をしていたら、ビリーが、鍛冶場に向かって叫んでいた。
「終わりましたよー!!!」
ドムは、作っていた物、準備していた物、すべてを持って生活部屋の方に戻り、いまだに不安な顔のまま、立っているビリーの前に立ち、ビリーの為の防具と武器を渡した。
「お前が準備できたら、出発だぞ」
「はぁい・・・・・」
渡された防具は足や、上半身、腕、と別れていて、すっぽりかぶるようなゴツイ鎧ではなく、少し手間取りつつも着替えを済ます。
武器もベルトにさしておけるくらいの短剣のみだった。
「ドム、着替え終わったよ」
「ふむ、なら行くか!」
「・・・ドム、本当に大丈夫かなぁ・・・捕まったりしたら・・・」
「行ってから、考えればよいだろう、いくぞ、そろそろ行かなければ、着いた頃にはまた、明るくなってしまう」
そういって、ドムはドアを開け、すたすた進んでいくので、ビリーはワタワタしながらついていく。
(そういえば・・・洞窟から出るの、この世界に来てから、あの日以来初めてだな・・・)とふと考えていた。
洞窟を出ると、久しぶりの明るさに目がまぶしくて、目がチカチカして、フラフラとビリーがしていた。
「久しぶりの外は、まぶしいだろう、森の奥とはいえ、洞窟比べるより、明るいからな、まあ、慣れろ」
そういって、早々に進んでしまうので、置いていかれないようビリーは若干ぼやけて見えにくいまま、ドムを追いかける。
洞窟を抜けて、薄暗い森の中を、進んでいく、ドムは迷いもなく、ずんずん進んでいく。
「ドム、地図とか見なくても道、覚えているんですね」
「ああ、何回か行っているからな」
「・・・作戦の時にもきいたけど、おとぎ図書館ってその女王の城と隣接している所あるんでしょう?
危険極まりないと思いますよ、いまでも」
「見つからなければ、いいからな」
「そうですけど、ドムは初め入る時に緊張とかしなかったんですか?」
「しなかったな」
「即答ですかっ!図太いというか、強いですね」
「まぁあ。そもそも強くなくては、あの人分かれた後に生きてこられなかったからな。」
「・・・・・・・・」
(過去の事は思い出せないとは言っていたけど、その誰かと別れた後は覚えているはずだし、聞いてみたいけど、聞く勇気ないしな)
ビリーとドムは一緒に暮らしてはいたが、そもそも過去の話はほとんどしてはいなかった、ビリーは自分が何者なのか名前すら分からない、ただ、日本人で、現代人のはず、とあやふやで、話すこともない。
ドムも詮索はあまりせず、そして自分の事は、初め会った時以来語ってはいなかった。
お互いに、利害関係のようなまま、生活していた。
ビリーが黙ってしまった後、会話もでてこず、静かに森を進んで、かれこれ数時間、ドムは元気に歩いていたが、ビリーは、久しぶりにかなり歩いたのもあり、疲労がたまりつつあった。
ビリーが、立ち止まり、ドムに尋ねた。
「ド・・ドム・・ふう・・はあ・・・あのさ、休憩とかいれません?」
「入れられない」
「ええ・・・もうクタクタなんですが」
「暗くなる前に抜けないと、身動きとれなくなるぞ、暗すぎて」
「ドム、ランプらしきものとか持ってるじゃないですか」
「持っていても意味がなくなるくらい、暗くなるからな、それまでには抜けないと、この森は
変な奴らがいるらしいからな、危ない」
「らしいって、知らないんですか?」
「明るいうちに抜けているからな、ただ、この森の出口兼入口に、書いてあった。
お前も出来る限り、安全な方がいいのだろう?」
「そうですけどぉ・・・わかりましたよ・・行きましょう」
諦めて、もう動けなさそうな足を前に動かそうとした時に
ドン!!!
「「きゃあ!うわ!!」」
元気ならば、倒れる事もなかったが、動き疲れてフラフラだった為か後ろから激突され、前のめりに、ビリーは倒れてしまった。
一応鎧のおかげもあり、そこまで怪我することもなかったが、上に誰か乗られていて動けずにいた。
「ごめんなさい!!!」そういって、上に乗っていた誰かが謝りながらどいてくれたので、立ち上がり、改めて、急に当たってきた子の顔をみた。
「お兄さん、ごめんなさい!」
謝ってきてた子はビリーからみて、とても顔立ちの整っていて、ドムよりは背は高めだが、僕よりは小さく、どこか見覚えがある、美少女だった。
大きいリボンをつけていて、青いワンピースにエプロンみたいな服を着ていて、
「怪我とか大丈夫?」
「あ、ああ」
「私、兎を追いかけてたの、そしたらお兄さん達にぶつかちゃって・・・あ、そういえば兎さん知らない?」
「知らないよ・・・」
「そっかぁ、じゃあ、私、帰る・・・・・あれ?ここどこ?」
「僕も知らないよ、でもドムなら」
とそういおうとした、矢先にドムはその女の子の後ろに居た。
ナイフをその子の首筋に、突き付けて。
「きゃああ!」
急に、冷たいものが首筋に感じて、叫びながら、涙目になっていた。
「お前、何者だ」
薄暗く顔は見えにくいが、低い声がさらに低く、ドスがきいた声で、ナイフを首につけたまま、ドムは女の子に聞いた。
「何者って・・・貴方こそ誰!?やめてよ!お兄さん!助けて!」
「ド・・・ドムだよね!?なにも危ない物とかその子もってないから!」
「隠し持っている可能性もある、疑われたくないなら、名乗れ」
「何も持ってないもん!アイリス!私の名前!これでいい!?」
「・・・・分かった」
ちゃんと名乗ったからなのか、ドムはナイフを首筋から離し、アイリスから離れた。
「怖かった・・・ぐすん・・・」
「ご、ごめんよ。この森は変な奴出るっていうから、ドムも警戒しててさ・・」
なぜか、ビリーが何かした訳でもなかったが謝っていた。
その後、ドムに先ほどあった事情を伝えて、アイリスにも、敵とか危ない奴ではないという説明をビリーが、間に入り、一応、誤解は解けた(?)ようだ。
「本当怖かったんだから!私だって、この森に迷い込んだ方なのに」
「そうなの?」
「うん、アタシこんな森知らないもん、ただ、うさぎさんを必死に追いかけたから・・・・ぐすん・・・」
「ちょっ、泣かないで、大丈夫だから!た、多分だけど、ドムなら地図とか持っているからさ、帰り道とかわかるよ、きっと!」
少女を慰めつつもビリーは、『大丈夫だよな?』と言いたいかのような不安げに、ドムの方をチラ見したが、ドムは首をふっていた。
「断る。もっと暗くなる森を急いで抜けなくてはいけない、そして武装もしてない者など、邪魔でしかない、置いていけ」
「で、でも、こんな暗いしさ、ここで置いていくのは、悪いような・・・」
「ぐすん・・・置いていくの?怖いよ、一人で此処に居るの・・!・」
泣きながら、ビリーに抱きついてくるアイリスを慰めつつ、ドムにどうにかできないか説得するが、
断固拒否して受け入れてくれなかった。
さらに、話し合いをしている内に、周りも暗くなりはじめ、ドムが持ってきたランプで明かりをつけて三人見えるくらいまで暗くなってしまっていた。
左右前後どちらも、道すらみえない状態になってしまった。
「ふう、作戦通りにいかないというのは、想定内だったが、こんなに早くからとはな、ビリー!
このまま動くと迷うのは確実だ、明るいうちに抜けるべきだったが、そいつの件はおあずけだ。
今は、ここで野宿するぞ」
「え、あ、野宿って、ここで!?危なくない!?」
「危ないだろうが、動いても迷うだけだ」
「まあ、そうだけどさぁ・・・でも、野宿するにも寝る場所やご飯もないよ?」
「寝る場所はないが、食料は持ってきている」
「さ、さすがだね、確かに大きいリュック持ってきてて、不思議には思っては、いたけど」
「非常事態はいつ、くるか分からんからな」
ドムは、話しつつ、鞄を下ろして、ランプの明かりで食料を探していた。
その間、ランプもひとつしかないので、そのリュックに、全員が近寄る。
といってもアイリス自体は、ビリーにただ、後ろにしがみついているという状態ではあるが。
「お兄ちゃん達、あの・・・ごめんなさい」
「え、何が?」
「その、私のせいでしょ?ここから動けなくなったのは」
「そ、そんな事ないよ、僕が説得できなかったからだし、気にしないで大丈夫だよ」
先ほども泣いていたが、また泣き出しそうにしていたので、ビリーはフォローをいれる。
「それに、どちらにしろ、あの頃には薄暗くなっていたから、こうなるのも仕方なかったと思うし」
「おい、ビリー、食料だ。アイリスといったな、お前の分はないから、そいつからもらえ」
見た目カロリーメイトのような四角い食い物。
これはドムがお腹がすいた時用のおやつ感覚で食っている食い物だ。
中身は教えてくれないので、ビリーの初めにもらった時は恐る恐る食べていたけれど、普通においしいし、膨れる。
ランプを、真ん中におき、かこむように座りつつ、四個渡してくれたので、二つはアイリスに、渡した。
「いいの?ありがとう!お兄ちゃん達!」
嬉しそうに食べるので、なんだか妹を思い出していた。
似てはいないのだが、ちょうどこれくらいの年齢のもあり、考えないようにしていた寂しさがこみあげてきそうになる。
「おい、ビリー!食わんなら、ワシに渡せ」
「えっ!あ、駄目だよ!食べるよ」
横から、奪い取られそうになるのをふせぎつつ、ほぼ大きくもないので一口で食べようとしたが、そういえば飲み物をまだ、用意してなかったからかつまりそうになる。
「―――――!!!」
声にならない叫びに、悶えるビリーに呆れた顔をしつつ、水をドムは渡してくれた。
渡された水を勢いよく飲んで、ぜえはあと息をはいていたのを、アイリスは背中をさすってくれた。
ドムは食べたし、寝るかと言わんばかりに、寝転んで、寝ていた。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ふう・・・う、うん」
「よかった!このまま倒れてままだったらどうしようかと思ったよ。
でも、えと、私に攻撃してきた、この子・・・お兄ちゃんには優しいね」
横で、すやすやと幸せそうに寝ているドムを見て、アイリスは微笑みながらビリーに言うと
「そう・・・かなぁ。死なれたら困る理由があるから仕方なく助けてくれただけだよ、きっと」
「どういうこと?」
「えーとね、話せば少し長くなるけど・・・」
いままでのいきさつや自分の事をビリーはアイリスに語っていた。
つい、先ほどあったばかりだが、何か悪い事するようには見えない子で、しかもドムのように威圧的でもなく、なにより年下の女の子を見ていると、妹を思い出してしまい、愚痴を含めて気づけばかなり長い時間、話していた。
だが、さすがに途中から、アイリスも眠たくなってきたようであくびをしていたので、話し合いは途中で終わりしようとビリーから切り上げようとしたが
「んー・・・眠たい・・・でも・・・森の中で寝るの・・・怖い・・ベッドがいい・・・」
と、いまの現状、森の中で寝るしか方法がない状況で、無茶ぶりを言われてしまった。
「えーと・・・それは・・・難しいかなぁ、今この場動くの危ないし、怖かったら僕起きてるいるから、寝るの此処じゃダメかな?」
「えー・・・」
うつらうつらしながら、不服そうな顔に、どうにかしてあげたいビリーではあった。
「パンパカパーーーーーーン!!!」
「「うわああああああ!?」」「きゃあああああ!?」」
その素っ頓狂な叫び声は、ビリーの真後ろから聞こえてきた。
真後ろに振り向くと、シルクハットを首位までかぶっていて、顔の見えないタキシード姿の、人間か疑わしい人物がたっていた。とても高く、190㎝くらいはありそうだ。
「いやはや、誕生日ではない誕生日おめでとうございます♪つきましては、この日の為のメンバーが、皆様集まっているので、お迎えに来ました♪」
そう、手をアイリスとビリーに手を差し伸べるが、とても怪しすぎて二人とも、固まっていたが、はっと正気にもどり、ビリーは、アイリスをかばいつつ、その叫んできた、男?に尋ねる。
「あの、貴方誰ですか?」
「申し遅れました♪ハックというものです♪お茶会の主催者です♪さて、行きましょう♪」
「はあ・・・あの、そもそもお茶会ってなんですか?」
「パーティーです♪みんなで楽しむパーティーですよ♪」
「パーティー?なんのパーティーですか?」
「誕生日ではない誕生日です♪」
(・・・何いってるのかさっぱりわからない)と口には出さなかったが、怪しすぎて関わってはいけないとビリーはじりじりとそのシルクハット男から離れていこうとする。
「さ、名前も分かった事ですし♪行きま」
と、言おうとしたら、アイリスの時同様に気配を消していたかのように、シルクハット男の後ろから声が聞こえた。
「誰だ?貴様」
「おやぁ?後ろにこんな小さい子がいたんですね♪これは失敬♪あなたも一緒にパーティーにいきましょう♪」
ビリーの方からは見えないが、ドムはシルクハット男の背中に銃を突き付けていた。
見えてはいなくともアイリスの時みたいにドムが脅しをかけているにもかかわらず、動揺もなくただ後ろを振り向き、楽しそうに返事を返す姿がビリーからみても不気味で、アイリスを抱きしめつつ、離れていこうとする。
「答えろ」
「先ほど名乗りましたよ♪ハックと言います♪あの、前もって申し上げておきますが『それ』は私には効果はないですよ♪夜にしか現れる事ができない者ですから♪」
ザッシュと、ためらいもなくドムは、さしたように『みえた』
ドムのナイフは通り抜けビリー側の方に見えていた。
「ほらー♪効かないでしょう?そのナイフでは聞かないですよ♪ついでに色々もってきておられますが、私には効きません♪普通の人間には効くと思いますがね♪」
「チッ・・・!ビリー、こいつはそんな小娘に比べて怪しすぎる。逃げるぞ」
「え、こんな真っ暗中を!?」
「ランプがあるだろう」
ドムは荷物をもち、ランプを手にしようとしたが、そのランプをすっと上からとられてしまう。
「あ、行く気になりましたか♪なら、先導いたします♪」
そういうとランプをもち、すっすっすっと暗がりを進んでいく。
「返せ!!」
叫びながら、ドムはハックを追いかけていくので、いまだ呆然としているアイリスの手をとりビリーも二人を見失わない様に、走っていく。
なんとか、離されないように追いかけていくと、先ほどの暗がりとは打って変わって、その場所は
とても煌びやかに飾られていて、白い長いテーブルに紅茶やお菓子が置いてあった。
周りは、クリスのライトアップのようにピカピカ気が光っていて、そこだけが異空間のようだ。