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第六話 幼なじみ

坂本が忘れたものとは……

 ある日、坂本宛てに警察から一枚のハガキが届いた。

 ハガキには『遺失物確認通知』と書いてあった。品物は『機械製品』となっているが、坂本に心当たりはない。期日までに確認に来ない場合は処分するとのことなので、とにかく行ってみることにした。

 次の休日、坂本は指定された警察署を訪ねた。

 最近は危険を伴う仕事である警察官のなり手が少ないため、ここもロボット警官ばかりである。デスクワークが中心であるはずの遺失物係さえ、ロボットだった。

 坂本は窓口にハガキを差し出した。

「こういう通知をもらったんだけど」

「ああ、坂本さんですね。中に入ってください」

 普通は窓口で品物を見せるのだろうが、よほど大きなものらしい。

 中に入ると、正面の壁際にえらく旧式な戦闘ロボットが一体置いてあった。そのロボットに『遺失物00547231』という黄色のステッカーが貼られていた。

 だが、坂本には、まったく見覚えがなかった。

「残念だが、人違いのようだ。おれはこんなロボット知らないよ。第一、戦闘ロボットを一般市民が所持するのは、法律で禁じられているはずじゃないか」

「いえいえ、そうではありません。このロボット本体は遺失物ではないのです。これは違法な業者からの押収品おうしゅうひんです。その業者は、廃棄はいきされたり盗まれたりしたロボットを解体し、使えそうな部品を組み合わせてやみロボットを製造・販売していたのです。いずれにせよ、ロボット本体は融解ゆうかい処分される運命です。ただし、所有者がはっきりわかる部品があれば、遺失物扱いになります」

 そう言うと、遺失物係ロボットはその戦闘ロボットの頭部を開け、何かを取り出した。

「これはメインメモリーですが、大部分の記憶がロックされていました。処分する前の確認作業でロックを解除した結果、このメモリーがあなたのものであることが、いえ、このメモリーが本来入っていたロボットがあなたのものであることがわかったのです」

「変だな。家事ロボットは何台か買い換えたが、そのたびにちゃんと下取りしてもらっている。失くしたものはないと思うが」

「型番からみて、家事ロボットではありませんね。GNT−A型となっていますので、かなり古いタイプの保育ロボットのようです」

(遠いかすかな記憶。ずっと気になっていたこと。はて、何だろう)

 坂本が思い出せずにいると、遺失物係はもう一度戦闘ロボットの頭部を開いた。

「あちこちサビついていますが、一応動くようなので、接続してみましょう」

 一旦ガクンと脱力状態になった後、戦闘ロボットはキョロキョロと周囲を見回し、坂本に気付いた。

「アア、新平ボッチャマ。ツイニ見ツケマシタヨ」

 その瞬間、坂本の記憶がよみがえってきた。

「そうか。おまえはゴンタなのか! あの時、かくれんぼの途中で忘れて帰ってしまって、すまなかったな。後で父さんがずいぶん遠くまで探してくれたらしいけど、結局、見つからなかった。もうすっかりあきらめていたよ」

 その時、戦闘ロボットが腰のホルダーから銃を抜き取り、坂本に向けて構えた。

「ろっくおんシマシタ。ボッチャマ、今度コソ逃ガシマセンヨ」

「や、やめろ! ゴンタ、もうかくれんぼは終わったんだ。それに、その銃は本物じゃないか!」

 横にいた遺失物係ロボットが、さっと坂本の前に回り込んだ。

「危ない! やめなさい!」

 耳をつんざくような大きな銃声が響いた。

 思わず坂本はその場に伏せたが、二体のロボットが取っ組み合う音が聞こえた。

 だが、すぐに静かになり、おそるおそる坂本が頭を上げると、倒れた一体の上に、もう一体が馬乗りになっていた。

「サア、ボッチャマガ逃ゲル番デスヨ」

 一瞬、ゾッとしたが、幸い、倒れている方のロボットがゴンタだった。やはり、性能の違いは歴然としている。ゴンタを押えたまま、遺失物係ロボットが坂本に謝った。

「どうも失礼しました。先に武装解除しておくべきでした。このまま処分場に運びますね」

「いや、待ってくれ。別にゴンタが悪いわけじゃない。危険のないボディに移し替えればいいだけの話だ。メモリーを返してくれ」

「え、引き取られるのですか?」

「ああ、もちろんさ。数少ない、幼なじみだからな」

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