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第二話 DJアンディ

人気のDJの正体とは……

 さあ、聞いてもらった『ムーン・リバー』は、1961年に公開された映画『ティファニーで朝食を』の中で、女優のオードリー・ヘップバーンが歌って有名になった曲だけど、今歌っていたのはぼくと同じ名前の歌手、アンディ・ウイリアムスだ。

 リクエストしてくれたアンディ大好きっ子さん、ありがとう。百年以上前の曲だけど、名曲はいつまでも残るんだね。もっとも、ぼくらの住んでいる月面には、残念ながら川はないけどさ。

 そういう意味じゃないよって、ツッコミ入れられちゃうな。

 さて、次は質問箱のコーナーだ。

 メールをくれたのは、もうすぐ一年生くん。

《アンディさんいつも『ノンストップDJ』を楽しみにしています》

 ありがとね。

《この間友だちから聞いたんだけど、アンディさんって本物の人間じゃないってホントですか。友だちは、人間が24時間ノンストップでしゃべれるはずがないって言うんです。それとも、ぼくが友だちにからかわれたんでしょうか》

 うーん、スルドイ質問だねえ。普段なら適当に誤魔化ごまかしちゃうんだけど、今日は最終回だから、ちゃんと答えよう。えーっなんで急に最終回、って声が聞こえてきそうだけどさ。

 まあ、事情は後で説明するけど、質問の答はイエスだ。また、えーって言われそうだね。

 実は、ぼくは月面基地のメインコンピューターの中に作られた、仮想人格、ヴァーチャル・キャラクターなんだ。だから姿かたちはないんだけど、ぼくを作ってくれた人たちが、一種のアンドロイドだからということでアンディという名前をつけてくれた。

 ぼくの役目は、この月面基地に住む人々の心をいやすこと。

 ぼくが作られる前には、けっこうホームシックになる人が多かったらしいからね。

 だから、通常のヴァーチャル・キャラクターと違って、人間的な感情を与えられている。

 誰だい、人間的な感情じゃなくて、オヤジ的な感傷かんしょうだって言ったのは。

 まあ、癒しというのがうまくできたかどうかはわからないけど、この十年間、ノンストップのおしゃべりに乗せて名曲を流し続けてきた。

 でも、みんなにも伝わっているかもしれないけど、地球政府の財政難で、一時的に月面基地は閉鎖されることになった。そのため、今後はメインコンピューターの全能力を、撤収てっしゅう作業に振り向ける必要がある。そこで一足早く、この『ノンストップDJ』は終了することになったんだ。

 つまり、ぼくの人格プログラムは、一旦、完全に停止される。さびしいけどしかたがない。

 こんなことなら、感情なんかない方が良かったかもしれない。

 いや、きっと、また、みんなが戻って来て、ぼくを目覚めさせてくれると信じているよ。

 最後に、ぼくから曲をリクエストしていいかな。いいよね。

 それじゃ、『フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン』を流しながら、お別れだ。

 さよなら、ありがとう、みんな。

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