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第十三話 ロボットソムリエ

家事ロボットを探しに来た吾妻は……

 店の前でさんざんためらったが、吾妻あずまは思い切って入ってみることにした。

「いらっしゃいませ」

 いかにも営業用という笑顔で出迎えたのは、レストランなどで見かけるソムリエの恰好かっこうをした男だった。

 吾妻はあわてて頭を下げた。

「あ、すみません、間違えたみたいです。ここはロボットを売ってるお店じゃないですよね」

 すると、男は笑顔のままで首を振った。

「いえいえ、お間違えではありませんよ。当店はロボットの販売をいたしております。どのようなロボットをお探しですか?」

 吾妻はホッとすると同時に、少し不安になった。とんでもなく高い商品を売りつけられるのではあるまいか。

「あ、いや、えっと、家事ロボットの、まあ、中古でいいんだけど。独り暮らしだと、何かと不便でさ」

 男は大きくうなずいた。

「お客さまは運がいい。ちょうどいいものが本日入荷しました。どうぞ、どうぞ奥へ」

「うん」

 男に従って店の奥に行くと、様々なタイプのロボットが雑然と並べられていた。

 その一角に、ガラスのショーケースに入った、極めて古いタイプのロボットが展示されていた。吾妻はそれを見て、ブリキのオモチャみたいだな、と思った。

「どうぞご覧ください。すばらしいでしょう。初期に開発されたロビータイプの、完全復刻版ふっこくばんです。ボディーはチタン合金やジュラルミンをえて使わず、当時使われていたステンレス製にしています。それから、頭部で光っているのは、ダミーではない本物の真空管です。もちろん、多少能力が落ちますし、メンテナンスも大変ですが、その分、意外な行動をしたりするのが面白いと評判です。ここだけの話ですが」

 男は、少し声をひそめた。

「時々ですが、命令に逆らったりするんです。あ、いえいえ、ご心配なく。人間に危害は加えませんから」

 危害を加えられてたまるか、と吾妻は思った。

「ああ、いや、違うんだ。こういうビンテージものとかじゃなくて、本当に、普通の、中古でいいんだ」

「失礼いたしました。では、こちらにどうぞ」

 ショーケースの場所から左に曲がると、標準的なアンドロイドが裸のマネキンのように林立りんりつしている部屋に入った。

「中古といいましても、当店ではスペックにこだわっております。この部屋のロボットたちは、見た目はほぼ均一ですが、それぞれユニークな能力を備えています。こちらは片手で十トンを持ち上げられる、怪力タイプ。そちらは百メートルを一秒で走る、快足タイプ。その向こう側は、目から破壊ビームを出すタイプ。それから」

「ちょ、ちょっと待って。最初に言ったと思うけど、ぼくが欲しいのは、ごく普通の家事ロボットだよ。普通にしゃべれて、普通に仕事をしてくれれば、それでいいんだ。それに予算もそんなにないから、特別なスペックなんかいらないよ」

「さようでございますか。それなら、打って付けの一体がございますよ」

 そう言うと、男は両手で自分の首から上を外した。

「頭部の付け替えはオプションになりますが、いかがですか?」

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