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第十一話 少し贅沢をし過ぎたみたいだ

文部科学大臣のために呼ばれたコンパニオンは……

 都内、某ホテルの宴会場にて。

「コンパニオンは、まだ来ないのか!」

 会場担当の佐渡谷さどやあせっていた。間もなく野見山のみやま文部科学大臣主催のパーティーが始まるのに、大臣付きのコンパニオンが来ていないのだ。野見山大臣は背が低いため、立食パーティーでは人波にうずもれてしまう。そこで、赤いバルーンを持たせたコンパニオンを同行させ、会場のどこからでも大臣の位置がわかるようにとのリクエストなのだ。

「すみません、佐渡谷キャプテン。いつも手配を頼んでいる会社で、たまたまインフルエンザが蔓延まんえんしてしまい、コンパニオンが全滅状態らしくて」

 汗だくになった手配係の説明を聞きながら、佐渡谷はあることを思い出した。

「その会社って、最近、ロボットを導入したところじゃないか?」

「えっ、そうですけど。ああ、だめですよ。いくらなんでも、大臣にアンドロイドのコンパニオンを付けるなんて」

「背に腹は変えられん。ロボットなら、まさかインフルエンザにはかからんだろう」

「それは、そうですが」

「それしかない。いや、逆に、いいかもしれんぞ。野見山大臣は『もっとロボットの働く場所を!』と演説して、厚生労働大臣と大ゲンカした人だ。よもや、文句は言うまい」

 佐渡谷は、念の為大臣の秘書に連絡を取ったが、やむを得ないだろう、との返事だった。


 コンパニオンが到着したのは、ギリギリの時間だった。胃の痛む思いで待っていた佐渡谷は、コンパニオンの姿を見て驚いた。

「き、きみは、本当にロボットなのか?」

 目が覚めるような美人で、九等身ぐらいありそうなコンパニオンは、優雅に一礼した。

「はい。正確にはアンドロイドでございます」

「うーん、声もきれいだ。これなら文句ない。というか、人間よりいいじゃないか」

「ありがとうございます」

 だが、手配係から発注明細を見せられて、目玉が飛び出しそうになった。ゼロが一つ多いのだ。始末書しまつしょものだが、今更いまさらどうしようもない。佐渡谷は急いでアンドロイドに業務内容を説明した。

「きみはこの赤いバルーンを持って、野見山大臣から離れずに同行するんだ。いいか、主役は大臣だぞ。きみはなるべく目立たずに、と言っても無理だろうが、とにかく、大臣を引き立てるんだ。いいね」

「かしこまりました」

 本当に大丈夫なのか、不安がつのるが、もう時間がない。

 佐渡谷は、会場全体が見渡せる中二階ちゅうにかいのモニター室に移動した。スタッフへの指示は、すべてここからインカム(=構内通信機)で行う。アンドロイドにも子機こきを渡そうとしたら、「周波数だけ教えてくだされば、大丈夫です」と言われた。

 来賓らいひん挨拶あいさつも終わり、パーティーは順調にスタートしたかに思われた。だが、アンドロイドが美人過ぎ、スタイルも良すぎるため、どうしても注目を集めてしまう。佐渡谷はインカムで注意した。

《おい、あんまり目立つな》

《はい》

 アンドロイドをしかったものの、佐渡谷はやや安心していた。何より、野見山大臣が上機嫌だ。

 秘書からも、「ロボット労働者の良いPRになる」と言われた。

 だが、悲劇は突然やってきた。バルーンが照明用のスポットライトにれ、パーンという大きな音とともに破裂はれつしてしまったのだ。

 一瞬、会場がシーンとなった。

《何とか対処しろ!》

《かしこまりました。大臣を引き立ててさしあげます》

《あ、おい、ちょっと待て!》

 佐渡谷の制止は間に合わず、アンドロイドは片手で大臣の襟首えりくびをつかんで、ネコののようにヒョイと持ち上げてしまったのである。

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