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 本能寺が新聞配達店に着いたのは7時45分だった。通常なら7時前には着いてるはずだが土砂降りのため他の配達員も本能寺と同じく大幅に遅れてきていた。もっとも本能寺が鬼塚とのやり取りの後に残りの数十件も配達して帰ってたとしたらゆうに8時半は超えたであろう。


 本能寺と同年代の店長の山田がやってきた。


「本能寺さん、この土砂降りの中お疲れ様です。これどうぞ。」と言って缶コーラを手渡した。


本能寺は無言のまま受け取り「それじゃ。」と言って自転車置き場に向かいアパートに帰宅した。


本能寺は自転車で8分の距離にある聖和荘につき2階の角部屋の206号室についた。


 まず、携帯電話を見た。予想通り新聞配達店からの着信が何件もあった。本能寺は新聞配達店を着信拒否にした。山田からもらったコーラーを飲み米をといだ。本能寺は仕事後の朝飯1食しか食べない。そし

て聖和荘の家賃が水道料金込みで2万1千円と安いから手取り7万円でも何とかやっていけたのであった。

 もっとも便所共同・風呂なしであった。風呂がないから夏場は水道で頭を洗い台所で体を洗った。それ

も3日に1回であった。冬場は週に1回スーパー銭湯に行った。


 本能寺は全てが嫌になった。貯金は20万円弱あった。3か月くらいはやっていける金額であった。本

能寺は米を炊飯器にかけたあと、4畳半の布団に横になった。


 ”もう、こんな人生どうだっていいや”本能寺は眠りに落ちた。


 新聞配達店店長の山田はクレームの対応に追われていた。山田は本能寺に裏切られた感じだった。給料

をそんなに出せない分、45歳の山田には合コンを設定してあげたり缶ジュースをあげたりと気を使ってい

た。


 ”まさか本能寺君が客を殴り配達を放棄するとは・・・”


 山田はとりあえず客の怒りを止めるために洗剤をもって本能寺が配達放棄した客の家を回っていた。


 「おたくとは契約を止めたい」


 「申し訳ございませんでした。今後、このような事は二度とないように厳重に注意します。当該配達員

は解雇致しますのでどうか契約を継続して頂けないでしょうか。」


 山田は単身の客には詫び状と洗剤を玄関の前に置いて行った。山田の携帯に電話がかかってきた。鬼塚

のアパートに謝罪に行っていた大川からだった。これで何十回目だろうか。山田は嫌だったけど取った。


 鬼塚の罵声が飛んできた。


「おいっ。ぶんや。てめーの配達員を絶対に許さないからな。あの配達員を連れて謝罪に来い。この野郎

!!」


「何度も申し訳ございませんが、本能寺とは連絡が取れないのです。他のお客様のクレーム処理が終わり

次第、本能寺のもとの向かいますので、それまでどうかお待ち頂けないでしょうか。」


「てめぇ。なめてんじゃねーぞ。目の治療は保険がきかなかったんだからな。それと、てめーの従業員に殴られたんだ。慰謝料5千万円払えや。ごらー!!!!」


「何度も申し訳ございませんが、刑事事件は警察にて処理してくださいませんでしょうか。又、民事訴訟

は法的な手続きにのっとってください。私どもとしても配達員である本能寺に対しては管理責任がござい

ます。しかし5千万円はとてもお支払できません・・・」


 山田は深々と謝罪して電話を一方的に切った。後は大川が30分くらいは怒鳴られて何とかしてくれるだ

ろう・・・


 本能寺は山間部を見晴らしながら大空を飛んでいた。気持ちが良かった。突然、後ろに気配がした。振

り返ると巨大なコンドルが本能寺の後ろを飛んでいた。


 コンドルがふいに言った。


「お前に身体能力を与える。この中からお前の欲しいものを選べ。体格・筋力・スタミナ・スピード・パ

ンチ力・キック力のいずれの中から選べ。」


 本能寺は意味が分からなかった。そんなものよりも金が欲しかった。それも一生、遊んで暮らせるだけ

の巨額の金が欲しかった。本能寺は聞いた。


「金ではだめなのか?」


 コンドルが言った。


「金はお前に与えられる身体能力で自分で稼げ」


 本能寺はしばらく考えた。筋力をとれば格闘技の世界やボディビルディングの世界で活躍できるかもしれないが金にはならない。スタミナをとればマラソンで金メダリストになるかもしれないが人気選手になっても数億円稼ぐのがやっとだろう。スピードをとればボルトのように100mで金メダリストになり数十億円稼げるかもしれない。パンチ力をとればボクシングで活躍できるかもしれないがスピードとスタミナで逃げられたら逆転されるだろう。キック力もミルコのようになれても格闘技そのものが衰退している。消去法で体格が残った。もし世界一身長の高い人間になったらどうなるだろうか・・・バスケットボールでは当然のごとくディフェンス・オフェンスともの活躍できるだろう。ボクシングでは顔面をガードせずにすむ。総合格闘技ならヘビー級の王者になれるかもしれない。様々なスポーツの分野で活躍できるし何よりも鬼塚のような偽ヤクザからなめられることもない・・・そして自分が街を歩けばほとんどの人間が自分を見るだろう。うまくいけばギネスにものりTVにも出れる。

 

 本能寺は答えた。


「体格はどれくらいまでいいのか?」


 コンドルが言った。


「現在ギネスブックに載っている最も身長の高い人間の身長は2m55cmだ。身長はそこまでだ。体重はお前の自由でいい。」


 本能寺はどれくらいの体重がベストなのかを考えた。大型力士の身長がだいたい190cmくらいで体重が


180kくらいだ。すると無駄な脂肪がなく255cmでアスリートに適してる体重は220kくらいだろうか?本能寺は答えた。


「分かった。体格をとる。身長は2m55cmで体重は220kgだ。」


 コンドルの目が笑ったように見えた。そしてコンドルが言った。


「賢い選択だ。お前の望みをかなえてやる。脳下垂体をいじって成長ホルモンを3か月間過剰に分泌させてやろう。体重はとにかく食べる事だ。」


 言うなりコンドルは素早くはるか彼方へ飛んでいった・・・



 


 

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