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カースト最底辺からの成り上がり  作者: けんもも
第一章 アルンガルト王国編
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国境都市ジュラム 奴隷契約編

「それで、アリスはどこから攫われて来たのか思い出したかい?」


「うんとね。よく思い出せない。でもとっても怖いことが起きたと思う。あんまり思い出したくないけど、思い出した方がいい、お兄ちゃん。」


アリスはあの後数時間眠り続け、馬車に揺られてその日の野宿の準備が終わった頃に目を覚ました。それから事情を聞いたけど本人も記憶が曖昧で名前もはっきりと思い出せなかった。そのうちに俺のことをお兄ちゃんと呼び、彩のことをお姉ちゃんと呼んで二人の間に挟まってきたのでそのままにしている。今も俺と彩の寝袋の中に入り込んできている。ちなみにさっきまで岩風呂に皆で入っていたから全員マッパ状態だ。


生きている馬は無限倉庫に入れられなかったので可哀想だけど雷魔法を使って仮死状態にして入れてある。と言うのは、盗賊たちの所に20頭以上の馬がいて、そのまま逃がすわけにもいかないし、かと言ってぞろぞろ曳いて行く訳にも行かないので仕方なく馬車を曳かない馬は仮死状態にして運ぶことにした。ちなみに、ちゃんと蘇生できることは確認済み。生きたまま保存できるような魔法をいろいろ試したけどできなかったので仕方ない。現在地は森の奥深くだしね。そのままにしてたら夜中に魔物に襲われちゃうかもだし。


ともかく、奇妙な成り行きで3人で寝袋に入っているんだけど、アリス自身の情報が得られないし、取り敢えずは明日国境の街に行くことにした。アリス自身の記憶はないのに妙に他の記憶はしっかりしてるんだよなこの子。


「隠蔽」で名前と職業を含めて全部変えてるから俺達のことばれることはないだろうと思う。ちなみに黒髪とか王国に普通にいたし、黒目も普通にいた。茶色が多かったけどね。あと青とか緑とかいるしね。夜遅くまでおしゃべりしてアリスが眠った後静かに交合った。翌朝起きたら俺の上にアリスが乗ったまま眠ってたのはどうしてだろうと思ったけど、気持ち良さそうに眠っていたんでしばらく胸の上で眠らせておいた。



翌朝、街道に出て昼前に国境の都市ジュラムに着いた。


「この街へは何の用だ?」


「はい、ノエクタム王国へ行ってライカ粉を仕入れてこようかと思っています。」


「持ち出しの品は何もないのか?」


「はい、ジュグドーの街で全て売れましたので空荷です。」


「そうか、運が良かったかもしれんな。先日、黒狼団に商人が襲われたそうだぞ。荷を積んでたら、お前らみたいな商人の馬車など一溜まりもなかっただろう。しかし、それだけ美人の奥さんと兎族の奴隷を持っているのを知られていたら、空荷でも危なかったかも知れんぞ。運のいい奴だ。一応、ステイタス確認するぞ。奥さんの方も。」


前もって考えていたいい訳が無事に通って、ステイタスも怪しまれることなく国境の街に入れた。このいい訳には、アリスの知識も役立ってる。

ともかく、この街の中央部分が国境線らしいけど、この街自体が自治領になっているそうだ。


「さて、アリスの情報通り無事にこの街に入れたね。さてこの後は、冒険者ギルドで黒狼団殲滅の報告をするんだったけ?」


「そうだよ、お兄ちゃん。黒狼団はこの近辺では有名な盗賊団だからね。殲滅したって解ったらお兄ちゃん英雄になるよ。」


「じゃあ、あんまり報告したくないなぁ。目立ちたくないからなぁ。」


「えーそれじゃあ、ダメだよ。黒狼団がいなくなったことを皆に知らせないと。」


「皆って誰に?」


「皆は皆だよ。黒狼団に苦しめられてる人とか。」


「今も苦しめられてる人がいるの?」


「もしかしたら人質にされて、脅されてる人がいるかもだし。」


「例えばどっかの兎族の村とか?」


「えっ、そんな村ってないよー、お兄ちゃん。」


「そうだなー。あーそう言えば、この街に奴隷商館あるんだよなー。彩、奴隷商会に行ってみようか?」


「えっ、なんで、何しに行くのお兄ちゃん。アリスいい子だよ。兎族は希少種なんだよ。」


「ほー、よく知ってるなー、アリスは。流石物知りだなぁー。でも、もっといい子がいるかもしれないしなー。やっぱり何でも正直に話してくれる子の方が可愛いしなぁー、ねえ、彩。」


「お姉ちゃん、アリスいい子だよねー。こんないい子いないよねー。」


少し涙目になってきてるので、ちょっとだけ可哀想になったけど本当は別の目的があったのでそのまま奴隷商館に向かった。


「さあ、アリスおいで一緒に行こうか。」


「えっ、本気なのお兄ちゃん。ごめんなさい、アリス嘘付いてました。もう2度と嘘をつきません。本当はちゃんと覚えています。でも、盗賊団が殲滅されてアリスが奴隷になっているのを知られたら村からすぐに迎えが来て一生、村からか出してもらえません。アリスお兄ちゃんと一緒に冒険がしたいの。お兄ちゃんとっても強いんでしょう?凄い能力を持ってるみたいだし、アリスずっとお兄ちゃんと一緒にいたい。お姉ちゃん、お願いお兄ちゃんを説得して。」


「あーごめんなアリス。ここに来たのはアリスを売るためじゃないよ。アリスの隷属の首輪のことだよ。それを何とかできないかと思ってね。アリスを売ったりしないから、さあ機嫌を直して。」


そう言うと、アリスが正面から抱きついてきてエグエグ泣き出した。彩とは昨日寝る前に相談してたし、アリスの嘘は解っていたしね。ともかく奴隷商の中にアリスを連れて入った。



「すみません。隷属の首輪について尋ねたいのですが。」


「ようこそいらっしゃいました。おや、兎族ですか。今日は売買ですか?」


「いえ、この子の隷属の首輪を取り外すことはできないかと思いまして。」


「えっと、それは可能ではありますが、首輪を外しますと自由民になりますので、特に兎族の場合、希少種ですので誘拐され強制的に隷属させられることもあり得ますが。」


「本人の意思と関係なく嵌めることが出来るんですか?」


「要は本人の首輪を嵌めると言う承諾の意思だけですから。中には悪辣な奴隷商人もおりますので。」


「なるほど。では、この首輪以外であまり負担にならないような物はありますか?」


「それでしたら、貴族がメイド向けに嵌めておりますこちらのチョーカータイプですとそんなに目立たないかと思います。」


「アリス、どうしたい?このまま首輪を外してもいいんだよ。ただアリス自身が自信がつくまで俺の奴隷でいてもいいけど。」


「アリス、お兄ちゃんの奴隷でいる。お願いこのままでいさせて。」


「ほう、大変、懐かれておられるようですね。最近では珍しいです。では、こちらの赤いチョーカーに付け替えいたしましょうか?服装を変えればそんなに目立たなくなるかと思いますよ。」


「じゃあ、そっちでお願いします。料金はおいくらでしょうか?」


「外しの代金はおまけさせて頂きます。チョーカーと新しい隷属の契約料として金貨1枚でいかがでしょうか?」


「ではそれで。」


店の奥の部屋に案内されて、すぐに付け替えが行われた。首輪を外すのにも付けるのにも「隷属魔法」を使っていた。頭の中でシュミレートすると闇魔法の中級魔法みたいだ。意識を集中すると闇魔法を習得した。イメージは出来ているので隷属魔法も使えると思う。


「では、こちらに一滴血をお流し下さい。」


ナイフで指先から血を出しチョーカーに垂らした。傷は回復魔法ですぐに塞いだ。


「そう言えば、解除の場合には血は必要なんですね。」


「はい、外すだけでしたら、本人の意思が明確にあり、隷属魔法を使える者であれば、通常の隷属契約なら解除可能です。」


「すると他の奴隷を奪う様な不埒者が出て来るんじゃないですか?」


「奪われた奴隷自身がそれを望んでいる場合にはそうなることもあり得ます。ですので奴隷の持ち主は、奴隷に対して主への忠誠心を持てるように世話をし教育をしなければなりません。勿論、奴隷の意思を無視して隷属魔法を使った場合、使った者に呪いが発動しますので、わざわざ危険を冒して他人の奴隷を奪う様な輩はいないのです。それに、簡単に外れないように特殊な隷属契約を施す場合もありますが、手間暇を考えますとわざわざそのような契約にする者はおりません。」


「なるほどなー。まあいい奴隷を売買しなければ、この商売は成り立たないのだろうし、普通の商売よりも信用が重要なんですね。」


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