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カースト最底辺からの成り上がり  作者: けんもも
第三章 古代遺跡編
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情報操作

翌日、ジュラムの手前の街道に転移して馬車に乗ってジュラムの街に入った。ちなみに朝早く迷宮に入りリリアナの冒険者昇格に必要なアイテムをザクザク集めた。冒険者カードの発行やパーティー編成は古代遺跡のコントロールルームで行えた。冒険者ギルドが持っている水晶版は、遺跡で作られたアイテムでその情報はコントロールセンターでもアクセス可能だったみたい。まあ当たり前か、情報収集のために前任者が作って冒険者ギルドを作った冒険者に渡したんだろう多分。いずれにせよ、A級に一発で上がれると思う。S級に上がるのは明日だな、多分。もしかしたらお昼後にもう一度潜るみたいだから今日でS級まで上がるかもだけど。




「こんにちは。タクヤと言いますが、大旦那様はいらっしゃいますか?」


ミミがいた商会に入って店にいた小僧さんに聞いてみた。


「はい。少々お待ち下さい。あっ、ミミ。あっ、お嬢様の。」


小僧さんが気がついて、すぐに番頭さんが出てきてそのまま母屋の方に案内され、大旦那様が出てきた。


「これはタクヤ殿。よく来て頂きました。そう言えばあの風呂はタクヤ殿か?」


「あー。そのまま使って頂けたらと残していたんですが邪魔でしたか?」


「いやいや。あのような立派な風呂。王族でも使っておらんじゃろう。わしも毎日使わせて貰っておる。湯が冷にくいのでな、毎日入っても湯を沸かす手間がほとんどかからん。」


「気に入って頂けたら何よりです。お風呂好きでしたら、こちらをどうぞ。」


そう言って、自作の石鹸を大量に取りだした。


「これは、どこで買い求めた石鹸ですか?このような石鹸みたことはないですが。一つで金貨10枚はするでしょう。」


「これも自作なので、そのまま収めてください。」


「なんと、タクヤ殿は多才なのだな。それはそうとお約束の情報ですな。」


そう言って、冊子を取り出した。かなり詳しい情報を仕入れてくれたようだ。


「わしらが調べた限りはこの通りじゃ。アルンガルト王国に35人、ドボルグ帝国に40人、聖精霊教皇国に35人の合計110人の勇者が召喚された様じゃ。しかし、アルンガルト王国の勇者2人は行方不明となっている。勇者ではなく一般人であったため訓練の迷宮で命を落としたらしい。そういう噂とは別に2人だけ国を出たと言う話しもあるが、召喚されて何の訓練も受けていない召喚者が生きていけるほど甘い世界ではないからな、途中で死んだのだろうということになっている。」


大旦那様はじっと俺の顔を見ているけど、俺はポーカーフェイスでやり過ごす。


「それで現在、勇者達は各迷宮で訓練中と言うことですね。」


「そうじゃな。かなり集中的に訓練を受けて今では指導していた騎士と互角の戦闘力を身につけておるようじゃな。LVも15にはなっていることだろう。」


「結局のところ勇者達は各国の戦力に組み入れられていると言うことですか?」


「そのようじゃな。隷属の首輪をつけられておったと言う話じゃからな。他の国でも同じようじゃ。各国は勇者の力を上手く宣伝しておる。お陰でいろいろ情報を集めやすかった訳じゃが。」


「大旦那様はどう思われます?」


「危険じゃな。3大国にのみ各国の騎士団長と同等あるいはそれをこえる戦力をこれだけ大量に手に入れたのじゃからな。小さな国を飲み込み、やがて3国の争いに発展するじゃろう。隷属の首輪をつけられているのが痛いな。召喚された勇者が自由意思で動けるならまだ別の道もあるのじゃろうが。」


「勇者達を魔族の大陸の方へ誘導できないですかね。勇者召喚の名目は魔王討伐なんですよね?」


「出来なくはないじゃろうが、タクヤ殿何を考えておる。」


「俺は勇者の力はこの西大陸においては強大すぎると思っています。恐らくは勇者の力は東大陸の魔族と同じぐらいの能力を身につけることになるでしょう。つまり西大陸に魔族が100人以上いるのと変わらないと思います。俺はこの強大な力を東大陸に封じるべきだと思っています。」


「しかしどうやって、あの欲に目の眩んだやつらを東側行く気にさせるんじゃ?」


「例えば、東側に入った地点で新しい古代遺跡が見つかったと言うのは、その呼び水にはならないでしょうか?」


「な。それは誠か?古代遺跡が出たのか?」


「実際にはでなくても、出たように見せかけることは可能です。例えばこれが見つかったと喧伝するとか。」


「これは?まさかマジックアイテムポーチか?」


「はい、これが2つあります。違うタイプのものです。」


「な、タクヤ殿が持っているのはあのテンバ王国の失われたマジックアイテムポーチではなかったのか?」


「ええ、まあそんなところです。」


横でリリアナが何か言いたそうだけど、俺がテンバの国王になったことはなるべく秘密にってことになっているから、目を伏せて黙っている。


「これを俺が見つけたらしいという噂を流せば、大国なら無視できないのではないですか?」


「確かに、他国に先駆けて古代遺跡を掌握したいと思うだろうな。」


「その時に、どうやら古代遺跡は異世界召喚者だけが立ち入れるらしいという話を付け加えれば、余計な奴らは寄ってこないですし、勇者を向かわせざる得ないでしょう。その時に王国からいなくなった勇者の2人が発掘したことにすれば話しが合いますし、持ち出せるアイテムは一人一つまでという話にすれば、全員を向かわせることになると思います。」


「それでは、タクヤ殿にいろいろ不都合が出るんじゃないのですかな?」


「その辺りは仕方ありません。と言うか現時点なら大した脅威ではないです。」


「そうですか、タクヤ殿がそうおっしゃるなら。」


「そうだ、SS級冒険者からの情報だと伝えて下さい。」


「なんですと、タクヤ殿はSS級冒険者でしたか。なんと。S級冒険者は2パーティーいると言う話は知っておりましたが、タクヤ殿のことは存知らなんだ。申し訳けない。失礼をしておりました。」


「いえ、前回お会いした時には冒険者でもなかったですから。では噂の方よろしくお願いします。その依頼料はどうしましょう?」


「何をおっしゃる。前回謝礼も受け取って頂けず、物々交換した商品も半分以上残されておった。我らが支払うべき恩は、何もお返ししていないのと同じじゃ。」


「では、引き続き、勇者の情報と、噂を広めて頂くと言うことで、全ての貸し借りはなしにしましょう。よろしくお願いします。」


『旦那様、大旦那様にミミからお礼をしたいんですが。霜降り肉と、三角肉と、尾頭付きを大旦那様に渡してもいいでしょうか?』


『ミミの好きなようにやっていいよ。』


念話でミミと話をした。ミミがピコピコと尻尾を振りながら大旦那様の横に立って、


「大旦那様、ミミです。お陰さまでミミは幸せにやっています。タクヤ様のお嫁さんにして貰いました。それで、これはミミから大旦那様へのお礼です。」


「おー、ミミ。結婚したのか。よかったのう。これは、このようなレア食材受け取る訳にはいかぬぞ。」


「大旦那様、これらはミミが迷宮で戦って得た物です。大旦那様に食べて頂きたいと思って残しておいたようです。どうぞ受け取ってあげて下さい。」


「なんとミミが得たとな。ミミはタクヤ殿について行って本当によかったのう。」


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