初めての我が家
家は、予想以上に素晴らしかった。もっと朽ち果ててるのかと思ったけど平屋のレンガ造りで、庭も十分広かったし馬小屋もある。井戸が枯れてるってことだけど今の俺達に井戸は関係ないからね。ミミを除く3人が水魔法を使用できるし。ミミもすぐに使えると思う。随分と上達してるし。馬車を外して厩の整備をした後、皆で家に入った。
家に入る前に、俺が浄化魔法をかけて綺麗にして、家の中では土足厳禁にした。
まずみんなで向かったのはお風呂場。旅の間にアリスとミミはすっかりお風呂好きになっている。いいことだ。湯船は大きな盥が置かれていたけどそれを取り外して、自慢の檜風呂を設置した。お湯は入っているのでこのままでもすぐ入れる。石鹸やタオルなどを出しておいた。ちなみに石鹸は自作品だ。旅の途中で問題なく練金出来るようになった。香りも彩達が好きな香りを使っているので彩達のお気に入りだ。
続いて向かったのは寝室。主寝室は20畳ほどの広さがある。後10畳ほどの部屋が2つあるけど当面は使わない予定だ。一応アリス達にも聞いたけど個室は要らないってことだ。その内、何かに使うこともあるだろう。
俺はここでベッドを作ることにして、先にキッチンの整備を彩達にやって貰うことにした。
キッチンでは購入した魔道具のコンロを設置した。ミミの希望通りオーブンタイプのコンロもあったのでそれも設置。魔道具は魔石を使って動くらしい。魔石は迷宮の魔物がドロップすることもあるらしいけど、俺の場合この魔石に俺の魔力を注入することが出来るので特に魔石が不足することはないと思う。しばらくの間はミミが使う水は大きな盥に貯めたものを使って貰うことにして盥も設置して水を入れておいた。
食器類は、アルンガルト王国の国境の都市ジュラムの商人からそのまま貰い受けた食器がたっぷりある。途中の野宿の間も使ってたけど、ここでも使うことにしよう。あと、食材や、調味料なども全部取りだした。
「あっ、その前に、ミミにメイド服を渡さないといけないね。こっちへおいで。」
俺はさっき買ったメイド服をミミに渡した。エプロンを渡す前にポケット部分に無限倉庫の魔法を付加した。ミミが目の前で着替えを済ませてエプロンを身につけた時に、
「ミミ、このポケットはマジックバックと同じになってるからね。ここになんでも収納できるよ。」
「えー、お兄ちゃん、ミミにだけずるい。アリスも欲しいぃ。」
ミミのマジックバックの説明は彩にお願いして、
「じゃあ、アリス、さっき買ったアリスのバッグをかしてごらん。」
そう言ってアリスからバッグを受け取って無限倉庫を付加した。
「よしこれでマジックバックができた。じゃあ、アリスの荷物は全部そっちに移す?」
「ほんとー。お兄ちゃん嬉しい。アリス専用のマジックバックなの?」
「アリス、ミミ。これは大事なことだからよく聞くんだよ。マジックバックはこの世界では遺跡級の超レアアイテムだってことは解っているよな?もしそんなアイテムを他の誰かが知ったら、アリスやミミを殺してもそのアイテムを奪ってしまうかもしれない。だからこのアイテムを使う時には十分に注意するんだよ。それとバッグを取られてしまったら中身も全部取られるってことだからね。何を持ち歩くかも十分に考えて使うようにね。」
「拓哉の能力のことも勿論、絶対に秘密よ。これは何があっても他の人に知られちゃいけないことだよ。」
「わかってる。お兄ちゃんやお姉ちゃんのことは他では喋らないよ。バッグを使う時も注意するね。」
「旦那様、ミミも大丈夫であります。このエプロンはずっと身につけてます。」
「いや、お風呂の時と寝るときは外すでしょう?ミミのバッグの方もマジックバックにしておくから、お風呂とか寝る時には俺に預けてね。アリスもね。そしたら盗まれる心配もないし。」
「「わかったー。」」
「ついでに、こっちもやっちゃおうか。」
そう言って下着類とか、ワンピース、帽子などを出した。
「彩、常に身につけておけるものだし、耐性系の魔法付与がいいと思うけど。」
「私もそう思う。物理攻撃耐性と、一番ポピュラーな火魔法耐性、水魔法耐性がいいかなぁ。」
「お兄ちゃん、どういうこと?この下着普通の物じゃないの?」
「多分な、特殊な素材で作られているみたいなんだけど、あの店の店主が作る物の中でごくたまに魔法付与できるものが出来ているみたいなんだ。」
「お兄ちゃん、そんなこともわかるの?」
「あー、うんそんな感じ。俺のスキルの一つだな。」
「お兄ちゃんって本当に規格外だよね。もしかして勇者とか?」
「いいや違うよ俺は勇者じゃないよ。勇者でも俺みたいなスキルはないと思うけどな。」
「勇者以上って、精霊様とか?」
「でもないな。普通の人族だよ。」
「「「普通じゃない(です)。」」」
「そんな3人とも否定しなくてもいいじゃん。」
「否定じゃなくて、拓哉は普通ってカテゴリーの上にいるってことだよ。拓哉以外にいないんじゃない、遺跡級のアイテムをポンポン作れる人って。」
「まあ、そこはそうだけどな。ともかくだ、まずはこれにできるかどうかやってみよう。」
そう言って。帽子やワンピースから始めた。帽子には物理攻撃耐性、ワンピースには魔力消費半減を付与した。アリスは細身剣を2本持った近接攻撃型の攻撃スタイルを持っているけど、風魔法を併用した戦い方も身につけている。ただ俺や彩と違って能力値の上昇が少ないために寝る前の魔力枯渇法で最大魔力値を増やしても俺達と比べると魔力が低い。アクセサリーには魔力半減の魔法付加は出来ないようなので防具で補おうと検討していたのだ。今回のワンピースはグレゴリーウルフの皮で作られているみたいで、そのまま防具としてもつかえるし、お洒落着としても普段から身につけられるので若干お値段が高かったけど購入したのだ。下着には物理魔法耐性、スリップには火魔法耐性、ビスチェみたいなものには水耐性を付けた。
「その内2つとか3つ魔法付加できるような素材が出来るまではいろいろ付けて貰うことになるけど。」
「大丈夫だよ。普段から身につけられるものだし。拓哉ありがとうね。」
「まあ、これで多少のダメージを受けても無効化できるだろうしな。」
「回復魔法も3人とも使えるんだし問題ないよ。明日から迷宮に行くの?」
「家が落ち着けばそうしようと思ってる。できるだけ俺達のレベルを上げて力を付けてて方がいいだろうしな。」
「ミミも頑張るです。でもミミはお料理以外役立たずです。」
「そんなことはないぞ、ミミの料理はとってもおいしいしな。」
「でもでも、ミミも強くなりたいです。旦那様が奥様とやってることしたらミミも強くなれるんですか?」
「なっ、ミミ何を言ってるのかな?」
「夜寝る時に、奥様とアリスはいつも気持ち良さそうにしてます。そしてアリスがこれでまた強くなったって言ってました。」
「ミミ、夜は眠ってるんじゃなかったの?」
「だって、側で運動してるからミミも起きますよー。ミミ子供じゃないんだからー。」
「そうだな、ミミは子供じゃないな。」
「ミミ、あなたにはまだ早いわ。」
「えー、ミミの方がアリスよりしっかりしてますよー。アリスは一番奴隷だけど一日しか変わらないんだからー。」
「身体の問題よ。」
「えー、ミミの方がおっぱい大きいよ。旦那様もそう言ってたし。」
「なんですとー。そ、それは種族の違いよ。兎族の発育はこれからなのよ。最近随分大きくなったんだから。お兄ちゃんも大きくなったねって言ってくれたもん。」
「えー、でもミミの方が柔らかいってお風呂の時に言ってたよー。」
「柔らかさだけじゃなくて、形が大切なのよ。ねえ、お兄ちゃん。」
「うーんとな、俺はどっちも好きだよ。両方とも十分に魅力がある。」
「拓哉―。彩のは?彩のはダメなの?」
「いや、彩のが一番だな。彩は全部が俺のドストライクだ。」
「お姉ちゃんには負けるけど、その次はアリスだよね。」
「まあ、この話はおしまい。ミミもそうだな。ミミの身を守るためには必要かもしれないな。彩、どうする?」
「うん、拓哉の言う通りかもしれない。ここで私たちと一緒に暮らしていく以上、ミミが狙われる可能性もあるし。私達が常にミミを守れるって絶対の可能性はないし。」
「時間をかければ、ミミの能力を上げることはできるんだろうけど。ミミには彩とアリスの方から説明してやってくれ。3人の気持ちが一致するなら俺は受け入れる。取り敢えず、俺はベッドとか作って来るから。」
そう言って、ダイニングに3人を残して寝室に避難した。そう言えばリビングのソファーとかも準備しないといけないな。明日にでも家具屋を回ってみるかな。
そんなことを考えながら寝室に檜の大木を出してサクサクベッドを作った。作りながらスプリングが出来ないものかと考えたけど、底板を二重構造にして、間に板ばねを入れてスプリングを効かせることにした。その上に買ってきた寝具を敷くといい感じのベッドになった。練金の上位スキル「生成」もLV3になっている。
後は、今日見た「裁縫」と「彫金」スキルの習得だ。裁縫は裁縫道具と生地を買っていたので、カーテンを作りながら習得することにした。イメージはバッチリだ。習得スキルは手本となるスキルのレベルが高いと習得レベルが上がるのが早い。カーテンを作り終える頃にはきっちり縫製LV3になっていた。本当にチートだよな。これも3人に付与することになると思う。これがあれば自分達で服の作成が可能になるかなきっと。
彫金の方は、カーテンレールの代わりにシャワーカーテンレールみたいにわっかを作ってスライドできるように加工している時に習得できた。彫金とは違う気もするけど金属を細かく加工するので彫金になっているのかな。ふと思い立って、ブレスレットを生成する時に複雑なデザインをイメージしながら作ったら彫金レベルも一気にLV3まで上がった。併用使用でもスキルアップできるんだ。材料は練金の練習がてら旅行の途中で集めた金属が少しあったので、小さなアクセサリーならいろいろ練習できそうだ。ちなみにミスリルや銀でアクセサリーを作ると100%空欄持ちのアクセサリーができるようになった。生成のレベルが上がれば複数の空欄持ちのアクセサリーができるんじゃないかと期待してるけどまだ複数のアクセサリーは作ったことはない。
「拓哉、夕飯の準備できたよー。」
彩が夕飯に呼びに来た。
「えっ、このベッド拓哉が作ったの?」
そう言ってベッドに乗ると予想外のスプリングにびっくりしたみたい。
「凄ーい。スプリングが効いてるね。寝心地いいかも。」
彩は気に入ってくれたようだ。
「お兄ちゃん、ご飯だよー。あーお姉ちゃんだけ、ずるーい。」
「いや、アリス、今は寝ないからな。彩はベッドを確かめてるだけだぞ。」
「解ってるよー。わー、何このベッド柔らかい。ポヨンポヨンするー。これもお兄ちゃんが作ったの?」
「そうだぞ。試作品第一号だけどな。これからいろいろ改良していくよ。希望があったら言ってくれ。そうそう、裁縫のスキルを習得したけど欲しい?」
「勿論。って、部屋の雰囲気が変わってるって思ったらカーテンだ。これも作ったの?」
「そっちも練習で作ってみた。後の部屋とか家の飾りつけは彩達に任せるよ。」
「わかった。裁縫スキル貰ったら練習しながらやってみるね。」
「旦那様まだですかー。ミミのお腹と背中がくっついちゃいますけどー。って、すごーい。ベッドですね。これはミミもこの上で眠ってもいいのでしょうか。いや旦那様と一緒に寝るのはメイドの嗜み。ミミも眠るのは決まりですね。」
そう言ってミミもベッドの上がってきてポヨンポヨンしてる。
「ミミのお腹と背中がくっついたら大変だから、ご飯食べに行こうか。」
こうして、新しい街、新しい家での生活が始まった。この日からミミも俺と交合うようになった。ミミ曰く、こんなに楽しいことを奥様とアリスだけで独占していたんですね。もうミミはプンプンですよ。ミミは一日3回を要求します。ってことらしい。やはり嵌ったか。ミミは本能に素直だからな。嵌ると思ったんだよ。一日3回って朝、昼、夜ってことなんだろうか。深くは追求しないことにした。ともかく最初は、水魔法と聖魔法のスキルを与えた。レベルが上がって能力値がある程度上がるまでは迷宮では俺の横で後方支援として戦わせるつもりだ。