索敵
クローバー小隊の3人が集合地点に辿り着いた時には、既に10以上の小隊がいた。乃木が支持したとおり、開始地点から離れた場所にある古城へと歩を進める。どうやら籠城をするらしい。
集まった訓練兵を4つのグループに分け、グループ内それぞれが背を向け合い、円陣を作って進む。更にグループ同士がお互いに様子を見ることで、密な索敵陣形を構成していた。
『グループAこちら異常なし』
『グループBこちら異常なし』
『グループCこちら異常なし』
『グループDこちら異常なし』
定期報告をしながら、予定距離の半分ほどを過ぎた時、クローバー小隊を含んだグループBに突如異変が起こった。
グループBの頭上、木から何かが突然降ってきた。咄嗟に見れば、2つの影が降ってくる。それは人型をしているが、頭に特徴的な三角形の耳がついていた。事態を確認するまもなく、二人の訓練兵が組み伏せられた。
『こちらグループB!襲撃を受けた!』
悟が無線に怒鳴る。慶斗は襲撃者に銃を向ける。しかし、影は2つとも既に消えていた。襲われた訓練兵さえいない。おそらく脱落してしまったのだろう。たった数秒の出来事に、大半の者はいまだ事態を飲み込めていなかった。乃木でさえも悟が指示を仰ぐまで言葉が出てこなかったほどである。
「さっきのは獣人族だね。文章で読んだイメージより素早かった。」
慶斗がつぶやく。
「慶斗は冷静ね。私なんて何が起きたか教えてもらうまで理解できなかったよ。」
半ば関心したように、半ば呆れたように葵は言った。