サバイバルゲーム
ある日、世界の主要国家を中心に、戦争行為が完全廃止された。無論、それは一部の国家間での争いが消えたわけで、世界各地で起こる紛争がなくなったわけではない。しかも、争いを好まない人々ならともかく、軍備関連の予算ありきで生計を立てている人々にとっては、被害この上ない。世界は「戦争はもうしません。☆ミ」と言われて、「はいそうですか。」と答えられるような仕組みにはなっていないのである。
戦争行為の廃止に伴い、一つの対応策が同時に発表された。それが、国家規模のサバイバルゲームを開催することであった。もはや対応策と呼べるのか、今まで戦争で命を落とした者に対しての冒涜ではないか、などと議論は巻き起こった。しかし、各国家は本気だった。一年後に第一回目を開催することを目標に掲げ、軍隊の内外を問わず参加希望者が募られた。募集要項には、訓練教育を施し、その期間の活動に応じて支払いをするという内容が記述されていた。これは大きな反響を呼び、サバイバルゲームの経験者、未経験者問わず多数の応募があった。
しかし、流石に全員を受け入れるわけには行かず、選抜試験が行われた。射撃能力のセンスは勿論のこと、基礎体力や語学力などが主に問われることになった。
各試験に合格し、入隊した直後から訓練は行われた。射撃訓練、サバイバル術、各種銃器の扱い方、果てには軍用車両のスペックまでも頭に叩きこまれた。サバイバルゲームよりむしろ、本当の兵士を育成していると世論は騒いだ。しかし、各国政府は新しいルールのサバイバルゲームだと言って一蹴した。
そんなこんなで第二次、第三次と募集され、増えに増えた参加者は、とうとう10万人を越えた。
「葵、次に銃撃終了と同時にフラッシュ。悟は一緒に突撃。」
二人が頷く。銃を構え直して目を閉じる。背中から聞こえる跳弾の音が止むのを待つ。
『クローバー小隊、全員突撃せよ。』
無線から突然聞こえてきた声。その声が聞こえた途端、重い溜息をついた。いつもこうだ。いつも出鼻をくじくようにこの無線が介入してくる。無視することは許されない。だが、これのせいでいつでも結果はおなじになってしまう。
『繰り返す。クローバー小隊、全員突撃せよ。』