盟約
アーネル王国とチョーカ帝国によるカイラン南北戦争。
それに、水の大精霊とそのパートナーの森人、世界2位と8位の魔導士がアーネル側として参戦する。
停戦を持ちかけにきたはずの俺の口から発せられた言葉に、その場にいた全員の顔には安堵と疑問が浮かんでいる。
なので、誤解される前に補足しておく必要があるだろう。
「ただし、俺たちの参加はあくまでも同盟としてだ。
アーネルと敵対する行動をとるつもりはないが、指揮下に入るつもりもない。
参加に際して報酬は戦後に払ってもらうし、現地の戦果に応じた分け前も貰うからな?」
「同盟……?」
全員の顔からは安堵の表情が消えて疑問だけが残り、さらに警戒の色合いが増す。
フランシス5世が小さくこぼした言葉を相槌と解釈し、さらに俺は言葉を続けた。
「報酬は大金貨で1000枚。
それから、エルベ湖とその周囲2キロメートルの土地を、俺の領地として。
……まぁ、エルベ湖については元々水の大精霊のものだから異存はないはずだが。
水を止めたり、水に課税するようなくだらない真似はしないから安心してくれ。
どちらかと言えば、心情的な問題なんでな……」
今のところはな、と心中で付け加える。
「戦果報酬については、俺たちが参加した戦いで得られたもののうち、一律で2割を貰う。
当然、参加しなかった部分については口を挟まない」
俺が口を閉じた後、一気に謁見の間の空気が凍る。
これを、国家戦力クラスが自国に加勢することに対する正当な報酬ととるか。
あるいは、それが自国に敵対しないことに対する保険料ととるか。
俺にとって、そしてアーネルにとって、これは交渉なのか、恐喝なのか。
見方によっては破格とも法外とも言える俺の申し出に、王と宰相、宮廷魔導士と騎士団長は混乱のまま押し黙った。
この戦争、俺が参戦する以上は確実にチョーカの敗北に終わる。
そして、アーネルに大きな被害が出ないままに終わってしまえば、アーネルがその強さを増すだけだ。
戦争をなくす、という目的のためには、アーネルの国力も削いでおく必要がある。
戦場の混乱に乗じてアーネルの兵力を削る、という最終手段もあるにはあるのだが、現段階でアーネルと敵対することはデメリットの方が大きい。
正当な理由でもってアーネルにダメージを与えるためには、国力の源たるエルベ湖の接収くらいしか思いつけず、要求はこちらが本命だ。
もちろん、エルベーナのようなふざけた村をまた作られたくはないし、アイザンとの約束でもあったという、俺の個人的な感情による部分も真実ではある。
大金貨の方は、ついでにすぎない。
大金貨1000枚、つまり金貨5000枚あれば、この世界の1世帯が50年は暮らせる。
俺とアリスが将来までギルドを利用し続けられる保証がないため、とりあえず現金を確保しておきたかっただけだ。
レートが微妙だが日本円なら約5000万円、大国であるアーネル全体からみれば大した金額ではないだろう。
また、現金報酬を求めたことで、俺たちとは対価がある上でなら対等交渉が可能なことを示しておく狙いもあった。
俺とアリスは、言ってみればテロリストだ。
本来の目的が明るみになれば『浄火』の二の舞、世界を敵に回すことは避けられない。
最終的にはそうなるだろうが、しかし、それは今ではない。
目的や行動理念をわかりにくくすることで、俺たちの実像を見えにくくしておく時間稼ぎが必要だった。
知識がないことに伴う、勝手な想像での希望と不安。
時としてこれらは、明らかな絶望と恐怖以上に、人の思考能力を奪う手段となり得る。
「こちらからの希望内容は以上だが、どうする?」
上空400メートルに意識を走らせながら、俺は笑顔で交渉相手に問う。
どこまでなら相手が許してくれて、どこからは相手が許してくれなくなるか。
そのギリギリを見極めて、踏み込める最大のところで勝利を得る。
俺は、レブリミに教えたことをそのまま実行していた。
「……ソーマ殿、仮にその盟約を余が断った場合はどうするつもりなのか?」
しばらく時間をおいて、青い瞳を細めたフランシス5世が穏やかに問いかける。
当然の疑問だな。
「その場合、俺たちはチョーカに付く。
生きて言葉を交わす機会は、これが最後になるだろうな」
予想通りの答えだったからだろうが、フランシス5世やユーチカの表情は変わらなかった。
「先に言っておくが、後になってこちらからこれ以上のものを求めるつもりはない。
アーネルが、王に宰相、宮廷魔術師と騎士団長が揃っていて正しい決断ができないような国だとも思っていない。
少しだけ待つから、今すぐに決めてくれ」
「「……」」
「「……」」
眉をしかめる王と宰相。
アワアワしている宮廷魔術師と、ピクリと体を震わせた騎士団長。
それぞれの反応を見ながら、俺は【氷鎧凍装】を展開する用意だけはしておく。
「1つ、条件の追加をしても?」
フランシス5世と短く視線を交わしたユーチカが、軽く提案を投げてきた。
にこやかな表情で、狡猾な商人としての視線も隠しきっている。
「聞くだけなら、聞こう」
上位者として、俺も小さく笑みを浮かべて視線をユーチカに向ける。
アーネルも、ギリギリを見極めに来たのだ。
魔力のそれとは違う、権力がぶつかり合うプレッシャーに、視界の片隅でマモーが倒れそうになっていた。
そちらのプロフェッショナルであるユーチカは、努めてひょうきんに、あっさりと難題を突き付ける。
「大精霊殿の力を疑っているわけではないのですが、戦場の兵たちを納得させる必要もありますからな。
カイラン大荒野を越えたウォリア高地、そこにあるチョーカの国境防衛の要塞であるクロタンテ。
こちらの砦を……」
ユーチカがにこやかに笑い、さらりとお願いしてくる。
「お1人で落としていただきたい」
「いいだろう」
「……」
俺もにこやかに笑って、さらりと即答した。
「これ以上、条件面で話し合うつもりはないからな。
……じゃあ、それを含めて証書を作ってくれ。
言った言わないの、時間の無駄でしかない水掛論は好きじゃない。
俺のパートナーが持つ分も含めて、2枚必要だ。
戦場にも持ち込むわけだから、王の署名が入っているできるだけ丈夫なものがいいな」
1人での攻城戦をあっさりと承諾した俺はさっさと次の段階へ進もうとするが、アーネルの8人からは反応がない。
フランシス5世、ユーチカ、マモー、ランドルフ、近衛兵4人。
いずれも、無表情で絶句している。
俺が大精霊就任1週間でエルベーナを壊滅させた「実績」を知っているはずのシムカとレブリミだけが、当然できるでしょう、とばかりに無言で控えていた。
全員を無視して、話を続ける。
「とりあえず、明日にはリーカンへ転移するつもりだ。
現場の責任者に挨拶くらいはするつもりだから、先に話をつけておいてくれ。
それとも、勝手にクロタンテへ向かっても構わないのか?」
リーカンはアーネルで最も南に存在する城塞都市だ。
カイラン大荒野までは、徒歩2日の位置である。
「陛下……?」
「よい、その内容で同盟を結ぼう。
書状を用意せよ、ユーチカ」
「かしこまりました」
1人での攻城戦をあっさり承諾し、その契約書の提出を求める俺に、フランシス5世とユーチカがようやく動き出す。
ランドルフは小走りで退室するユーチカを静かに見つめ、マモーに至っては完全に呆然自失の体だ。
「そういえば、あの魔人についてはどう分析してるんだ?
俺も、王都の騎士隊のことはそれなりに評価しているつもりなんだが」
待つ時間も暇なので、昨日の襲撃者のことについて話を向ける。
建前上はギルドの所属である俺は、ギルドが公表した情報しか知らない。
文字通り、王国の中心部だけが知っている事実があるなら聞き出したいところだった。
「ランドルフ」
「は」
フランシス5世が、謁見の間ずっと俺の前で王に向かって跪いていた白騎士に説明を促す。
「魔人ですが、王都内の住民に魔人はおりませんので、外部からの侵入と思われます。
ただ、経路についてはわかっておりません。
また、本日の四の鐘が鳴るまでの間に、さらに2名が襲撃を受けましたが、いずれも軽傷との報告を受けております。
都民のパニックを避けるために公式に発表はしておりませんので、ソーマ殿におかれましても同様にお願い申し上げます。
1人目は騎士隊の若い隊員で、弐の鐘の直前に東地区の商店の納屋で。
2人目はCクラスの冒険者で、参の鐘の鳴る頃に王都の外、街道を南へ2キロほど下ったところでそれぞれ襲撃を受けたそうでございます」
「待て、町の外で襲われたのか?」
「両名からの聴取内容とも、白い肌に黒い長髪、赤い瞳の服を着ていない女ということでしたので、間違いないと思われます。
古来の記録によれば、魔人は己の体を灰にして、密封された建物の中以外ならどこにでも現れたと伝えられております。
侵入の件も合わせると、おそらくは都市壁を越えて自由に移動ができるものかと。
騎士隊の見回りを強化して、目下捜索中でございますが……」
「難しそうだな」
「このようなお願いは騎士団を束ねる者としてお恥ずかしい限りでございますが……。
もし、ソーマ殿の前に現れることがあれば、是非とも討伐にお力をお借りしたいところでございます」
「わかっている」
密封すれば、移動は封じることができる。
それさえわかったなら、対処の仕様はいくらでもあるからな。
借りは、きちんと返すつもりだ。
「出現した場所の状況については?」
「……こちらに関しては、ギルドとの公式発表以上のことはわかっておりません」
「そうか……」
ユーチカが3名の文官と共に戻ってきたのは、俺とランドルフの会話が終わってからすぐだった。
書状というから羊皮紙か何かかと思っていたら、渡されたのは自陣片と同じサイズのオリハルコンの板だった。
現世で勤めていた工場で見た覚書の要領で、アーネルと『スリーピングフォレスト』がこの戦中に限り盟約を交わした旨とその報酬。
付帯条件として俺が承諾したクロタンテの個人攻略についても、間違いなく記載されている。
ユーチカに連れられた文官がフランシス5世と俺の間を往復し、お互いが内容に異存がないことを認めた上で、それぞれが魔力を込める。
3枚のカードの下部2行にはフランシス5世の長すぎる本名と、短すぎる俺の名前が記載された。
2枚を俺が受け取り、ポーチにしまう。
残りの1枚はユーチカが連れてきた文官がそのまま持って、退室した。
長い交渉が終わり、俺はいつもの癖で首をクキクキと鳴らす。
今度から、話が長くなる場合はイスを用意してもらおう。
そんなことを考えながら、上空に意識を向ける。
少し間をおいて、城の外から歓声やどよめきが聞こえてきた。
「……何事だ?」
「季節外れの雪が降っているんだ、10万トンほどな」
怪訝そうな顔をしていた謁見の間の全員、そして青い瞳を細めてつぶやいたフランシス5世に、俺は簡潔に答えた。
一拍置いてその意味を理解し、全員の顔に戦慄が走る。
そう、俺はこの「交渉」を投げかけた段階で水天宮の直上400メートルの上空に1辺50メートル、12万トン近くの重量の氷の立方体を作り、それをずっと浮かせていたのだ。
仮にアーネルがこの同盟を断った場合は、この氷塊をそのままここに落とすつもりだった。
本当にあと一歩で、ここは地獄になる可能性があったのだ。
「間違った判断をしてくれなくてよかった。
言葉を交わす機会が最後にならなくて、俺も嬉しいよ」
ユーチカを真似て明るい調子で言ってみた俺の言葉は、しかし、聞き手にはあまり笑えなかったようだった。
ギルドの会議室では、アリスが悶絶していた。
シムカを下がらせた後に、俺は呆然とするフランシス5世に辞去する旨を告げ、何も言わないランドルフの案内で王城の外に案内された。
雪は広範囲に散らしたため積もることはなかったようだが、通りを歩く間も子供たちがはしゃぐ声がいたるところから聞こえていたので、まぁいい思い出にはなったのだろう。
子供たちにも、アーネル首脳部にも。
ほぼ望む通りの交渉をできたことから足取りも軽く、冒険者ギルドに入る。
フロントで、ロビーに見当たらないアリスたちの居場所を聞くと、奥の会議室にいる旨を丁重に説明された。
支部長のカールが、勝手に気をまわしてくれたらしく、『ホワイトクロー』の面々も一緒とのことだったのでその部屋に向かう。
そして、ノックの後に入った俺の視界に飛び込んできたのが。
テーブルに顔を伏せて、室内だというのに被った青いフードの上から頭を押さえて、うぅ……、と小さく唸っているアリスの姿だった。
【水覚】でも魔力でも特に異常な反応はないことを把握した上での光景だったため、俺はそのままの姿勢で停止し、部屋の中に素早く目を走らせる。
ドアに近い席から時計回りにネイリング、ブランカ、アリス、エレニア、アネモネと座っており、当然だが魔人がいるわけでもない。
が、全員が挙動不審だった。
ネイリングは、俺の顔を見て明らかに怯えた顔をしている。
ニヤニヤ笑いも完全になりを潜め、座っていたイスごとゆっくりと部屋の奥に後ずさっていった。
ブランカは逆に、上気した表情で俺の顔を凝視している。
長い耳はだらしなく垂れ、血走った視線は俺の全身を舐めまわすようにさまよっており、はっきり言って気持ちが悪い。
視線を右に振ると、イスの上で体育座りをしたアネモネが俯いて、低い声で何かをブツブツと……。
「どうして私はロクな男と巡り合えないんだろうそれなりに強いし見た目だって悪くないし食事や掃除や洗濯だって丁寧にやるしむしろ好きなのに一応本国ではそこそこ稼いでるしだけど要所要所で男のことはきちんと立てているし精一杯尽くしているつもりなのにどうしていつも私を裏切ってどこかに行ってしまうんだろうどうしていつも私が家に帰ると書置きが残してあるんだろうどうしていつも私より頭も悪そうで弱そうで男に媚びるしか能のないふざけた女いや雌のところに行ってしまうんだろうちょっと目つきが怖い男は恰好よくてちょっと目つきの悪い女は怖いってなに喧嘩売ってるの私はまだ20歳よなにが姐さんよ私が可愛い服を着たらそんなに変なの早く結婚したい両親の視線がだんだん鋭くなってきてる早く結婚したい実家に帰るのがそろそろ嫌になってきた早く結婚したいなによこの貧乳早く結婚したい命くらいは懸けてやるよって言ってくれて早く結婚したいとか無表情なくせに恥ずかしそうに照れながら自慢してるんじゃないわよ早く結婚したいその後すごく優しくでも激しくて朝まで3回も早く結婚したいとかエレニアとブランカにあいつは絶対淡白だって煽られたからって真っ赤になりながらむきになって言うことないじゃない早く結婚したいまだ夕方なのよいい加減にしてよ早く結婚したい彼が笑ってくれるなら私はそれでいい早く結婚したいとかそんなに幸せそうに言わないでよ早く結婚したい私だってそうよ早く結婚したい私だって……」
……いや、アネモネは何も言っていない。
そう、アネモネは何も……言っていなかった。
エレニアは困ったように笑いながら、だが楽しそうに俺の顔を見上げている。
金色の瞳が肉色獣、いや肉食獣の愉悦を浮かべているのを、俺は引きつった笑みで受け止めた。
そのままアリスに視線を滑らせると、おそるおそるといった感じで俺の顔を見上げる緑色の瞳、顔から耳から首から全身が真っ赤になった俺のパートナーと瞳が交錯する。
涙目のアリスは、そのまま再度テーブルに額を付けて、ただ自分の失敗を悔いていた。
「一応聞くが、この状況はなんだ?
詳細を省いて、簡潔に説明しろ」
ドアに一番近い場所に置かれていたイスに腰掛けた俺は、唯一意思疎通が可能そうなエレニアをにらみつける。
俺の背後には、【氷撃砲】の砲弾が浮かんでいた。
くだらないことを言えば、殺す。
このバカネコが一線を越えた瞬間、ここを地獄に変えるつもりだ。
「ニャハハハ。
別に、……変なことは聞いてないつもりニャ。
せっかくの女同士の機会だし、アリスにソーマがどんな奴なのか聞いただけニャ。
アリスの話に結構意外な部分もあったからそこをツッこんでたら、いつの間にか変な空気になってただけニャー」
「……事実か、アリス?」
「……申し訳ない。
でも、大事な部分は話していない」
「「「「大事な部分?」」」」
「そういうことではない!」
「……」
アリスの謝罪の曖昧な部分に、淫獣どもが声を揃えて喰いつく。
アリスが慌てて火消しにかかるが、全員のニヤニヤ笑い、アネモネは少し違う表情だ、が止まらない。
というか、その手の話はネイリングにはまだ早いのではないのだろうか。
そんなことを考えながら、俺は天井を向いて時間が過ぎるのを待っていた。
俺が懸念しているのは、アリスが惚気話をしたことではない。
無口だと思っていたアリスが、どんな部分であれ俺たち2人の情報を安易に漏らしてしまったことだ。
女性同士の会話をした機会は、男である俺には当然ない。
だから、この程度は普通のことなのかもしれないのだが、それでもなんの必要もなく話してほしくはなかった。
これは独占欲がどうとかいう話ではなく、安全面の理由からだ。
今後、アリスを利用して俺に接触しようとする勢力は必ず出てくるだろう。
俺にとってアリスがどれほど大切な存在なのかという情報は、アリス自身にとってはリスクにしかならないのだ。
部屋の空気が落ち着いてきたのを見計らって、俺はアリスをにらむ。
うなだれているアリスには悪いが、後できちんと話をしておこう。
「アーネルとの同盟締結の証明だ。
アリスも持っておいてくれ」
「……わかった」
「「「「!!!?」」」」
俺が盟約の内容が記載されたカードをここで渡すことにしたのは、『ホワイトクロー』への牽制の意味を込めたからだ。
1国と対等に交渉できる存在に、あまり気やすく近づこうとするな。
そういうメッセージを、この4人なら読み取れると俺は判断している。
見せてもいいのか、というアリスの視線に首を小さく縦に振って答え、俺はアリスの背後からカードを覗き込む4人の様子を観察していた。
驚愕、疑念、嫉妬、称賛、といった感情が見え隠れする中、エレニアの瞳には冷徹な計算の色も見える。
「ソーマ、ウチらを雇わないかニャ?」
「いらん」
席に戻った4人を代表してエレニアから出た言葉は、俺が期待していたものとは真逆の言葉だった。
即座に拒否するも、エレニアに諦めた様子はない。
……が。
「だって、アーネル軍に付くより、絶対2人に付いた方が得ニャ?
それに、ウチらは全員前衛だし、本国でもそこそこの腕利きでならしてるニャ。
少なくとも、足手まといになるつもりはないニャ」
1つ目の理由が本音じゃねぇか。
もう少し、せめて俺が検討しようかと迷えるくらいの理由を出せ。
「それに、魔人の件もまだ片付いてないニャ?
町を出て南下してる、っていう情報も出回ってるニャー」
「……」
……やればできるじゃねぇか。
が、検討できるレベルには至ってないな。
「とりあえず、明日の朝にはリーカンへ転移する。
そこで将軍と面会するからな」
「考えるくらいはしてほしいニャー」
エレニアへの返答をせずに、俺は立ち上がる。
この様子だと、明日の転移のときにもこの4人と会うことになりそうだな。
ふと後ろを振り返ると、立ちあがったアリスにブランカが歩み寄り、何かを耳打ちしている。
アリスの白い顔が見る間に真っ赤になり……。
「絶対ダメ!!」
アリスがそう叫んだ。
残念そうな顔をしているブランカを本気でにらみつけているあたり、何を言われたのかは気にしない方がよさそうだ。
俺は、深く溜息をついた。




