ショート・エール 戦者の挽歌 後編
ちなみに、ミオラとミキウスは『森の中』で登場済です。
俺は、逃げ去ったグレートラビィに【氷撃砲】が着弾したのを【水覚】で確認して、後ろを振り返った。
【白響剣】で、そこにあった岩と木を水平に斬って作ったテーブルセットでは、アリスが呆れたように背後の森の惨状を眺めている。
俺は俺で、アリスによって惨殺されたグレートラビィの回収作業に頭を抱えたい気分だった。
今回、アリスと森に入ったのは、魔力15万を超えたアリスの腕試しのためだ。
上位精霊と契約はしていないアリスだが、その魔力はすでにAクラス魔導士の上位に食い込んでいる。
これまでは使えなかった魔導のテストと、すでに習得している魔導の威力を確かめるために、適当な相手を探していただけだ。
食事をしながら、グレートラビィの大群がこちらに走ってくるのを感知したときには、正直何事かと思った。
「……んぐ、任せてほしい。
いざとなったら、サポートはお願い」
どうする、とサンドイッチを置きながらアリスに問うと、アリスはサンドイッチを飲み込みながら、そう言って立ち上がった。
念のためにいくつか【氷弾】や【氷霰弾】の準備をした上で、いつぞやのように俺は感知と出現までのカウントをしていただけだ。
そこからは足止め、自律植物の召喚、毒ガス、死天使の槍、と完璧な立ちまわりだった。
特に、あの日本情緒あふれる監獄魔導は、圧巻の一言だ。
【百牢之召喚】。
【棘柱之召喚】と同じく、足止めを主目的とした木属性魔導なのだが、その威力と陰湿さは比較にならない。
召喚されるのは100本のタケに似た植物である。
タケと異なる点はその外皮の硬度で、なんと純度の低いミスリル合金に匹敵する。
したがって、これを通常の武器で斬ることはできず、それが可能となるのは、高純度のミスリルかオリハルコンの剣、もしくは俺の【白響剣】のような超高位魔導だけだ。
さらにその成長は瞬時に10メートルを超え、上部には同じ硬度の枝と同じ硬度の葉が茂っているため、風属性の飛行魔導でも逃げられない。
逆に根は、タケと同じように地下茎で全てがつながっているため、引き抜くのも無理だ。
つまり、これに貫かれると脱出の手段が1つしかない。
金属鎧を軽く貫通する初撃でさえ、急所に当たれば即死する威力。
それに囚われれば、自分の肉体を引きちぎることでしか脱出できない。
足止めではなく、事実上の終身刑もしくは死刑を言い渡される、俺をもってして絶対に食らいたくない木属性高位魔導だ。
そこから放った各魔導も、順調にパワーアップしているようだった。
【大顎之召喚】は、召喚できる数が2体になっている。
【青毒之召喚】は、明らかに範囲と濃度が上がっていた。
俺が残せと言ったグレートラビィまで巻き込んでしまったのは、アリス自身が思っていたよりも広範囲に発動できてしまったためなので、まぁ、嬉しい誤算、と言えなくもないだろう。
【死槍之召喚】は、長さが伸びている。
ただそれだけなのだが、あの槍に少しでも傷をつけられれば、ほぼ確実に死ぬ。
それを考えると、これ以上アリスの魔力を増やすことを、若干迷ってしまう俺がいた。
誤算と言えば、まさか後ろから別働隊が来るとも思っていなかった。
エルベ湖から帰った後、俺の【水覚】の感知領域は半径300メートル近くにまで延びていたのだが、元のままであれば、撃ち漏らした個体との乱戦にもつれ込んでしまう可能性も高かった。
広い範囲に渡って少なくとも10体が接近していたため、少々乱暴だが、俺はその範囲全てを吹き飛ばすことにしたのだ。
爆鳴気、という気体がある。
これは単一の物質の名前ではなく、水素と酸素の混合気体の俗称だ。
理科で必ず習い、おそらく実験もすると思うので、少なくとも日本の中学生以上の人間は知っているだろうが、水素はそれ自体が燃える。
線香の火を近づけると「パクン!」という甲高い破裂音とともに、一瞬で完全燃焼してしまう危険な物質だ。
同様に、酸素は燃焼を激しくさせるという特徴がある。
正確に言えば、燃焼とは熱と光を伴う酸素との結合反応、酸化反応のことを指す言葉だ。
火の点いた線香を酸素で満たした分厚いガラス容器の中に入れると、赤い点のようだったかすかな火が充満した酸素と激しく反応し、白く輝くように燃える。
この実験の見た目のインパクトは、学校の授業の記憶の中でも、かなりの上位にくるはずだ。
そして、水素と酸素はいずれも水を電気分解することで、得ることができる。
この実験もおそらくやったはずだ。
が、水素と酸素の混合気体に火を点ける実験だけは、ほとんどやらない。
その理由は、非常に単純なものだ。
つまり、危険すぎるから。
今回、俺は能力で自分の背後、半径約50メートルの空間の水分量に干渉し、それを引き上げては分子レベルで分解することを繰り返しゆっくりと、しかし着実に水素と酸素を大量に作り出し続けた。
これに伴い空間中には、通常の環境では絶対にありえないほどの濃度で、それ自体が燃焼する水素ガスと、その燃焼を激化させる酸素ガスが満たされていくことになる。
尚、俺がやろうとしていることのためには、点火が必要だ。
が、俺は火属性の魔導は一切使えない。
したがって、俺が使うのはラルクスで買っておいた【発火】の陣形布だ。
グレートラビィたち10人が死地に踏み込むタイミングに合わせて、おもり代わりに手の上で生成した氷を陣形布で包み、魔力を流して投擲。
同時に、一帯を遮る幅100メートル以上の水の壁を構築し、熱や衝撃が抜けないように、壁の一部に手を触れる。
現世でいえばマッチやライター代わりの、ただ小さな火種を作るだけの日用初級霊術。
そんな小さな火が、異常な量と濃度の爆鳴気に引火した瞬間、そこに地獄を顕現させる。
大量の水素が一気に燃焼したことによって、通常は甲高い破裂音が、空間を歪ませる炸裂音に変わる。
高濃度の酸素はその燃焼を巨大化させ、炎の温度は摂氏2千度をあっさりと突破した。
これは、地球で通常目にする可能性のある、一般的な金属の大半が融解してしまう温度である。
爆燃が終了後、水素が酸化することで再度水が生まれ、周囲にいまだ残る高熱によって、その水は瞬時に蒸発する。
その後に残るのは、瞬時に炭化し吹き飛ばされた、命があふれていた世界の、残滓だけだ。
【煉解】。
それは俺だけが顕現可能な、掟破りの「火属性」超高位「霊術」なのだ。
この狩りで力試しをしたかったのは、アリスだけではなく俺もだ。
エルベーナでは霊術の存在を知らなかったため、【煉解】を実戦投入したのは今回が初めてである。
そして、もう1つ。
背後の爆発に目を丸くしていたアリスに、試したいことがあるから、と選手交代をうながす。
後で【煉解】の説明をしないといけないのだろうが、この世界に化学や分子の概念はあるんだろうか?
そんなことを考えながら、【白響剣】で【百牢之召喚】の一部を切断し、両手に剣を持っていた一番大きいグレートラビィを解放する。
こいつを選んだ理由は、二刀流で手数が多そうだから、それだけだ。
激しく痙攣して泡を吹いているので、急いで【完全解癒】の魔法陣を描く。
とある機会に何十回も描いたことがあったので、ずいぶん手慣れてきたな。
全身に刺さったままのタケっぽい植物を力ずくで引き抜き、すぐに【完全解癒】を発動する。
得物の剣2本はその近くに捨てておき、俺も自分の準備に入った。
右腕の二の腕から先を、【精霊化】する。
袖をまくると右腕は、アイザンやシムカのように水に変わっていた。
当然ながら、筋肉や血管、神経や骨もない。
水の入ったグラスを横から見たように、奥の景色が屈折することで、そこに自分の腕があると視認できる。
こうして【精霊化】した部位は、水を操作する力、つまり【氷弾】や【氷撃砲】を加速させるのと同じイメージで動いている。
そもそも筋肉も神経もないのだから、筋力で動くわけがないのだ。
5本の指を精妙に動かすのは、なかなか頭の痛くなる作業なのだが……。
逆に言えば、【白響剣】並みの超音速で操作することも原理的には可能、ということである。
【精霊化】した右手の中に握った氷の大剣は、重量約10キロ。
仕掛けのないただの氷の塊に過ぎないが、いずれにせよ、生身の俺では振り回すことは不可能だ。
これを【精霊化】した腕と共に、まずは亜音速で操作し、俺が得意ではない近接戦闘の一助とできるか。
わざわざグレートラビィに【完全解癒】までかけたのは、その練習相手になってもらうためだ。
……が。
「あれ、【完全解癒】でも起きないな……」
体力だけが取り柄の筋肉ウサギの分際で……。
だいたい、これだけの数が襲いかかってくるならガブラか、1クラス下のドーダルの方が素材的にも美味しかった。
グレートラビィの大群など、はっきり言って迷惑なだけだ。
「はぁ……、手間がかかるなぁ」
俺は練習台の顔の上に水を生成し、そのまま落とす。
ようやく起き上がったグレートラビィは、しばらくして両手に剣を握りこむ。
いちいち待たせるなよ。
本当に面倒くせぇな、こいつら……。
使えないうえに、逃げだしやがった練習台を射殺した俺は、氷の大剣もその場に捨てる。
解放された【精霊化】した腕の拳を開け閉めしながら、アリスの方へ歩いていった。
途中、緑色の牢獄の中で死んでいるウサギたちを横目で見ながら、しみじみと思う。
俺の、美しいパートナーの魔導は、……エグい。
グレートラビィの討伐報酬は耳を切り取って持っていけばいいのだが、見た目がきれいな状態の死骸は【青毒之召喚】で死んだ中央の4匹だけだ。
他の死骸については、素手でさわるのが躊躇われるほど汚染されている。
それ以前に、さわるとダメージを受けそうだ。
そして冷静に考えれば、中央の4匹の死骸にも青酸ガスは残っているわけで……。
……もういっそ、【煉解】で全部燃やしちまうかな……。
テーブルで待っているアリスはアリスで、俺が使った2つの新魔導に興味津々のようだ。
まぁ、厳密にはどちらも魔導ではないのだが。
【煉解】は火属性の霊術で、【精霊化】での剣術は、強いて言えばただの特異体質だしな。
アリスの隣の切り株に座って中断していた食事 (水の大精霊様御用達の、猫足亭のメリンダ特製サンドイッチだ)をしながら【煉解】の説明をしたが、やはり半分程度しか伝わらなかったようだ。
ただ、それ以前に。
「というか、アリス。
仮にも森人の木属性魔導士として、俺がイスにするためだけに木を切り倒したり、敵を森ごと吹っ飛ばすことについて、お前は何も思わないのか?」
「……んぐ、……思わなくもないけど、【生長】で復活させることはできるから」
「……あー……」
「古い樹は死んで、新しい種の糧となることで、森の生命は廻っていく。
あまりに広範囲にやるのは問題だけど、少しくらいならむしろ推奨されること。
人の社会も同じ」
「……まぁな」
日本の少子高齢化社会の実情を知ったら、俺のパートナーは何を言うだろうか?
「それよりも、その腕とあの剣術は?」
「あぁ、これなぁ……」
俺の中では、【精霊化】しての剣術は、実戦投入にはまだ早いとの結論に達していた。
理論的に可能なことはわかったし、全身を【精霊化】しての超音速移動もできるにはできるのだろう。
ただ、今は無理だ。
相手の動きを【水覚】で感知し、それに合わせて右腕ごと大剣を亜音速で操作する。
これを実際にやるとなると、そのイメージが大変すぎて、他のことがほとんどできなくなる。
目の前以外の【水覚】での感知も疎かになっていたし、【氷鎧凍装】の発動まで手が回らない時点で、実戦投入はリスキーすぎる。
【白響剣】の併用など論外だ。
慣れている【氷撃砲】や【氷霰弾】でさえ不安定になるくらいなら、しばらくは封印して、今まで通り遠距離攻撃メインだけで立ちまわるべきだろう。
「まぁ、しばらくは練習かな……」
右手だけ常に【精霊化】しておいて、細かい動きに慣らしていく、とか?
「そう、……頑張って。
それはそうと、ソーマ?」
「ん?」
アリスが、こちらを見て目を細めてきた。
その声音は、若干不満そうだ。
どうしたんだろう?
「あなたが焼き払った死体からは、討伐の証拠を取ることができない。
それについては、反省すべき」
…………はぁ!?
あれだけグチャグチャの死骸作っといて何を言ってるんだ、こいつ!?
「……」
「反省しているならいい。
以後、気をつけて」
俺が絶句していると、アリスはそれを俺の謝罪と受け取ったらしく、慰めるような笑顔まで向けてきた。
…………カチリ、と、俺の中で何かのスイッチが入ってしまった音がした。
……そうですか。
あぁ、そうですか、アリスさん。
反省が必要なのは、俺の方なんですね、アリスさん。
……非常に残念ですが。
ちょっとばかり「おしおき」が必要ですかね、アリスさん?
「……わかった、以後気を付けるよ」
「そうして」
「ところでさぁ、アリス?」
「……なに?」
あれ、俺は満面の笑顔を浮かべているはずなのに……。
どうして、ちょっと怯えた顔をしてるんですか、アリスさん?
「いや、今後こういう過剰で、無駄な、破壊をやらないためにも、この手をコントロールする練習は積んでいきたいんだよな」
「……そう、頑張って。
手伝えることがあれば、協力する」
少し手を伸ばせば助けられる人がいるなら、少し手を伸ばして助ける、のがあなたのモットーでしたものね、アリスさん。
「ありがとう、アリス!
じゃあ、さっそくいいか?」
満面の笑顔でそう言って、俺は【精霊化】した右手を、怯えるアリスの左耳にのばす。
アリスの体温よりややあたたかめに水温を設定し、不安そうにしているアリスの耳をそっと包みこんだ。
俺がアイザンの首を絞めたことがあるように、【精霊化】した体は精霊側の意思によって完全な液体ではなく、表面を固体のようにして相手にふれさせることもできる。
ダイラタンシー流体に近い原理なのだと思うが、そんなことは、今はどうでもいい。
大切なのは、その感触が硬めのクラゲ。
そして、軟らかめのコンニャクに近いということだ。
「ソーマ……?」
左耳を、人肌よりややあたたかい、軟らかめのコンニャクの、指で、優しく包む。
困惑するアリスをよそに、俺は残る制御力の全てを【水覚】に回す。
周囲半径400メートル、人間も魔物もなし、オールグリーン。
……というか、全力出せばこんなに行けたのかよ。
まぁ、でもそれも、今はどうでもいい。
「アリス?」
優しい声で俺が問いかけると、なぜかアリスの顔が絶望に染まる。
なんだろう、この顔?
どこかで見た……。
……ああ、赤字のやつらか。
俺が追いつめたやつは、だいたいこういう顔になってたな……。
まぁ、例によって、今はどうでもいい。
「いってらっしゃい」
そう、アリスに最後の言葉を紡いで。
俺は右手の表面だけを高速で細かく振動させた。
「ふわぁぁあああっっっ!!??
ちょっっ、ちょっ、ソーマ!??」
反射的に両手で俺の右腕を掴んでますけど、【精霊化】した腕には神経がないので、痛覚もありませんからねー、アリスさん。
寝てしまったときとかに、携帯電話の振動が耳に当たるとビックリしますよねー、アリスさん。
アレの究極版なわけですし、そうでなくても耳が弱点ですものねー、アリスさん。
水の大精霊の全魔力、世界の半分を滅ぼせる魔力をつぎ込んで実現させましたんで、堪能してくださいねー、アリスさん。
「そ……!!??
やめっっ、やめやめ、ひゃめ……っっ!?」
親指以外の4本の指で、アリスの長い耳を包み込むように支え、不定期に耳の縁を優しくなぞる。
親指は耳の内側、耳の溝に沿ってゆっくりと、ゆっくりと愛撫する。
あくまでも優しく、優しく、焦れったくなるくらいの優しい強さと、速度で。
「あぁ……、あ……、あ、あ、あーーーっ!?
そ、しょーま、……ひゃめれぇ……っ!?
ふゃあぁあぁー……、あ、あーー……!?」
元々、人の耳は性かん……、多くのツボが密集している敏感な器官だ。
そして、森人の耳は人よりも、……長い。
実際、どんな感じなんですかねー、アリスさん。
……うーん、もうまともな意思疎通が難しそうですねー、アリスさん。
「ふ……あ……は……ふぅううぅぅっっ!!?
ら……め、らめぇっ、りゃぇええっっっ……!?
しょーま、ひ、ひょーやぁぁああ……!?」
いい感じで融解していってますねー、アリスさん。
耳の温度は、摂氏39度くらいまでいってますねー、アリスさん。
あなたは一体、摂氏何度までイけば完全にとけちゃうんですかねー、アリスさん。
耳、うなじ、顔、ノースリーブから伸びる二の腕、絶対領域からのぞく太もも、全部が綺麗な桜色ですねー、アリスさん。
そろそろ強めにさわってアクセントにしてみたり、親指を穴の深いところまで入れてみますかねー、アリスさん。
「……、……、……、ふぁあっ……、……あ……!?
……、……、……、……、……、……、ぅぁあああっっっ!!」
アリスの体が硬直!!!!
数秒後に弛緩してぐにゃりと崩れ落ちたところで、俺は慌てて右手を離し、アリスの背中に立って両肩を包み込むように支えた。
普段は人形のように整い、無表情なアリスの顔は今や……。
……いや、具体的な描写は避けよう。
この顔を見てもいいのは、俺だけだ。
正直、少し……少しだけ、やりすぎた。
自分はもっと、冷静だと思ってたんだけどなぁ……。
そのまま、アリスの呼吸が落ち着くまで10分ほど待つ。
涙を流しながら完全に濁りきっていた緑色の瞳が、涙を浮かべながら普段の透明さを取り戻す頃になっても、アリスの肌の色は元の月のような白には戻っていなかった。
「……あ、あなたは……、馬鹿!?」
「……お前、普通に大きい声も出せるんだな」
「馬鹿……!!」
「で、なんで『おしおき』されたかわかってんの、お前?」
俺はアリスの顔を両手でそっと挟みこみ、軽くにらみながら少し顔を近づける。
そう、問題は何も解決していないのだから。
俺もそうだが、アリスにも成長はしてほしい。
……あれ、なんか文脈がおかしいな?
そもそも、ちゃんと言葉で説明したっけか?
上下逆さになったアリスの顔は、その赤さと熱さを増した。
緑色の瞳は、若干かすみだしている。
……あれ、なんかおかしいな……。
「おしおき……?」
さらに、瞳の色が怪しく、いや妖しくなる。
アリスの中で、何かのスイッチが入ってしまった気配がした。
……成長っつっても、そっちじゃねぇええ!!!!
どっと疲れた俺は、アリスの顔を離して、天を仰いだ。
アリスが……帰ってきたら、さっさとラルクスに戻ろう。
なんだか、わけのわからない1日だったな……。
あー……、疲れた……。
まぁ……、俺もアリスも少しは成長できたみたいだから、良しとするか……。
……多分な。




