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クール・エール  作者: 砂押 司
第5部 世界を変えるもの
138/177

アナザー・エール 賢者 後編

針、あるいは棘のような葉を持つ常緑樹。

が、太陽の出ている間であれば重たい緑色に見えるはずのそれらは、白い雪に覆われたまま夜の闇と同じ色に染まっている。

それを支える枝も、石のような幹も、やはり同じ寂しい色。

ネクタならば鮮やかな花々をつけた下草が茂っているはずの地面にそれを求めても、俺の視界に入るのは森の木々以上にモノトーンな世界。


「違う……、違う……、違う…………」


雪景色と表現するにしても悲しすぎるその中で動いているものは、【散闇思遠バッティング】を解いてその木の下に座り込むミゼットだけだった。


建物どころか地面の石畳まで全てが黒、おそらくはその炭のような色と質感のサリガシア大陸の土から【創構グラクト】で築かれたからであろう町の色。

ウォルの自由な、ネクタの静かな鮮やかさと比べれば、それは確かに単調ではある。

さらには、年の大半、ここまで北になればほぼ毎日降り続く雪の白が、それを覆い隠す。

カラルに限らず、サリガシア北部の都市もやはり白と黒に支配された場所だ。


が、それでも今の俺の前に広がる光景よりはあたたかさがあった。


土台から床までが漆黒で構成され、塊となった雪の圧力に潰されない厚みを備えた石の壁。

鎧戸というよりは城壁とでも呼ぶべき重量と機密性を持つ石の窓に、金庫のそれかと見紛うほどの重厚な扉。

日本の合掌造りと同じく、雪が積もらないように鋭角にかれた屋根の上からは、昼夜を問わずかれるまきストーブの煙が、細い灰色となって立ち昇る……。

……確かにカラルにも色味はなかったが、しかしそこには笑顔があった。


薪が燃える赤い光と熱を受けて、ヤオが。

氷火酒インドラの強すぎる酒気に若干当てられながら、隊員たちが。

ようやく求婚を受け入れてもらえたことに喜ぶ、エリクスが。

その中心で赤い瞳をやわらかくする、ミゼットが。


「違う……」


人間たちとミゼットが頬に浮かべていたそんな人間味の色と、それを照らしていたあたたかい炎の色が、しかし今のミゼットの周りには一切なかった。


あまりに過酷な環境に動物すらも見当たらない、ただ白黒の森の中。

ネクタであれほどの力を感じた森の木々たちも、ここでは冷たい影でしかない。

ただ白く、ただ黒く、ただ寂しく、ただ悲しい。

人間を、完全に拒絶した冷たい場所。


その中で唯一、血の色の瞳を虚ろにしているミゼットの慟哭どうこくは、彼女が人間ではないことをただ残酷に証明していた。


「どうして? ……どうして?」


どうして、自分が赤字レッドだったのか?


身を切られるどころか斬殺されそうな夜の森の風、凍傷どころか文字通りに凍てつくだろう冷たい雪の温度。

幸か不幸か……、……いや確実に不幸なことにそれを一切苦痛に感じないミゼットの赤い瞳は、今となっては皮肉でしかないその色の名前のことを必死に考える。


私は、何かを傷つけたか?

私は、何かを穢したか?

私は、何かを奪ったか?

私は、誰かを殺したか?


殺人、強姦、強盗、窃盗、傷害、誘拐、放火、詐欺、誹謗、損壊……。

気を抜けば今にも崩壊してしまいそうな、反射的に自殺してしまいそうな絶望の中で……必死にエリクスたちの瞳の色を忘れながら、自分のこれまでの人生を……そう、人生を振り返る。

魔人ダークスではあれど、人間として恥じることなどないはずの自分の一生を掘り起こす。


カラルの北で、魔人(自分)としての記憶が始まった。

本来の自分の姿すら捨てて、難民の列に潜り込んだ。

食事のいらない自分は、分けられた食事をさらに小さい子供に譲った。

痛みを感じない自分は、傭兵崩れの男から言いがかりで殴りつけられても、黙って頭を下げられた。


進んで傷の手当てや死体の処理を買って出ることで、ギリギリ死なないだけの血を手に入れた。

カラルに入ってからも、素直で勤勉な子供であり続けた。

7年の間には戦時中相応の荒っぽいトラブルもいくつかあったけれど、全て無血かつ笑顔で解決した。


誰も傷つけず、穢さず、奪わず、殺さず、静かに平和に、人間として生きてきた……!


「……私は…………」


隊の皆や、ヤオや、そしてエリクスに触れないように努力しながら記憶を辿るミゼットの瞳からは、徐々に絶望と混乱の色が消えていく。

代わりに、そこには疑問と平静の光が宿り始めた。


「……やっぱり、違うわよ」


魔人ダークスとして、というよりも人間として、ミゼットの人生はそれほどに純白だった。


……そして、それは俺としても同じ意見だ。

この記憶現実を外側から覗く、過去を未来から観察する完全な第三者として。

ミゼットが落ち着くまでに、彼女の主観的な記憶とそれを周囲も含めて俯瞰した客観的な記録を、ある意味でミゼット本人以上に彼女の人生を見つめた俺としても、「ミゼットは善人である」と断言せざるを得なかった。

というよりも、もはや聖人や英雄と称してもそれは過言ではない。


比較対象になる人物として、アリスくらいしか思いつけない。

俺の判断基準においても、それくらいにミゼットは「善」だった。


「……帰らなきゃ」


だからこそ、ミゼット本人もそう考えた。


そう、赤字あれは何かの間違いだったのよ。

ヤオたちとも7年のつき合いで、エリクスとは結婚まで約束した仲なんだ。

私は間違ったことはしてないし、絶対に悪人なんかじゃない。

思わず逃げ出しちゃったけど……、……そういえば魔人ダークスだってバレちゃったけど…………。


……ううん、説明すれば、皆ならわかってくれるはず。

エリクスは……戸惑うかもしれないけど……、……でも、きっとわかってくれる。

一緒に生きて、一緒に年を重ねて……。

……一緒に死ねれば、それでいい。


だからこそ、ミゼットはそう信じた。





そう、信じていた。





「おい……」


やめておけ。

そう言おうとして、俺は自分の声がミゼットには届かないことを思い出した。

そんな俺に呆れたのか、何も思わないのか、あるいは何かを思っていても言う気がないのか、マキナは苦い顔をする俺に視線すら向けず、町の方向へと歩き出したミゼットを追ってきびすを返す。

白と黒の森の中を歩いて行く、白と黒のマント。


「ミゼットの自陣片カードは、どうして赤字レッドなんだ?」


「……」


マキナに無視された俺の問いかけ以外は、カラルへと必死に走るミゼットの息の音だけが響いていた。


「「……~!!」」


「……!」


やがて、そこに白と黒以外の音が混じり出す。


「いいか、分隊を崩すなよ! 何があってもだ!」


人間ヒューマンじゃねぇぞ! 魔物だと思え!」


「相手は風の魔導士なんだ! 油断するな!」


「躊躇うなよ! 相手がミゼットでもだ!」


「……!?」


それは、ミゼットが再度冷静に考え直すには近すぎる距離にヤオたちが。


「み、んな……」


危険すぎる赤字レッドを狩り出そうとカラルから出てきた100人近い人間たちが、ミゼットを見つけるのに充分な場所まで近づいていた証拠でもあった。


「私は……っ!!」


「「いたぞぉっ!!!!」」


叫ぼうとしたミゼットの顔面を吹き飛ばしたのは、数人……つい先程ミゼットの手当を受けていた隊員たちを含む4人の怒号と、土属性低位の【石礫弾ストーンスロー】。


「……!」


拳大の石の直撃を食らって鼻と口を失ったため声が出せなくなった、そしてそんな状態で倒れるどころか血すら出ないミゼットの全身を、次々に拳大の石弾が砕く。


「……」


呼び止めるどころか捕縛ですらなく、明らかに最初から自分を殺すつもりの攻撃。

白い雪と灰が舞う中で、ミゼットがそれを悟った瞬間。


「……ゃ」


彼らの後ろに、【石結弓ストローン】を詠唱するヤオを見つけた瞬間。


「……ぇ……くス……」


その隣で、泣きながら自分を睨みつけるエリクスの瞳をみた瞬間。


「ぁぁあああ゛あ゛!!!!」


ミゼットは、自分が信じていたものが、ただ自分の信じたかったものにすぎなかったのだと冷静に理解した。

ほぼ反射的に足下に叩きつけた【起突風フートス】と同時に、自身は【散闇思遠バッティング】を発動。

破裂したように吹き上がる雪に混じって、それと同じ色の灰はただ森の奥深くへとはしっていく。

白い爆煙の中ではエリクスたちが何かを叫ぶが、ミゼットはもう彼らを振り返らない。


カラルにいた間、ミゼットも赤字レッドを見たことはある。

難民の女を狙って何人も強姦し、それを殺しては埋めていた男。

ワインを使った詐欺を行い、3人の商人とその家族を破産させた男。

5人もの子供を誘拐し、全員を拷問した上に殺していた女……。


その誰もが、嫌悪され軽蔑され、正義のままに石を投げられるべき罪人だった。

共感できる点など1つとしてない、むしろ人としてしてはならない鬼畜だった。

共存を目指す可能性も、更生を期待する可能性も考えるに値しない悪人だった。

生かしておくだけの理由が存在せず、むしろ殺さなければならない存在だった。


それは、世界にとっての害悪だった。


「あああああ゛あ゛!!」


赤字レッドのことを自分もそういう目で見ていたから、そう思っていたからこそ、わかる。

自分の言葉と信用以外に反証する術がない中で、もはやそれに一切の価値がないことをエリクスたちの瞳は叫んでいた。


彼らは。

世界は、ミゼットを完全に拒絶していた。


「あ゛あ゛ア゛ア゛!!」


それに「信じてください」とただ頭を下げられるほど、ミゼットは賢くも、そして愚かでもなかった。


「あ゛ぁア゛ア゛!!!!」


というよりも、もはやそんなものはどうでもよかった。

















「ぁ……」


移動し続けたミゼットがようやく人の形を取り戻したのは、もはや森の中と言うよりは山の中と言うべき場所だった。

数十キロ近く続いていた針葉樹の群れも若干まばらとなり、地面も彼方にそびえる連峰へと向かって傾斜し始めている。

色だけでなく比重も鉛そのもののような重たい雲の下、月や星の光は一切見えない。

人家などあるわけもない闇の中では、足下の雪さえも黒く染まっていた。


「……」


そこに膝を突いた少女の姿も、俺にはぼんやりとしか判別できない。

人間にしては純粋すぎる肌の白さと何も映していない瞳の赤色さえ、この暗黒の中では溶けて消えてしまいそうだ。

氷とそれほど変わらない温度の樹皮にも、この景色を救えるあたたかさはない。

墓標のようにも見えるその中心には、ただただ寂しさと悲しさだけがあった。


……ただ、俺はエリクスやヤオたちを責める気持ちにはなれない。

赤字レッド

俺は重犯罪者と盗賊たち相手でしかその色を見たことはなかったが、逆に言えばこれはそれだけのことをしなければならない色でもあるからだ。

そして、その全員が人道を踏み外すどころか進んで踏みにじるようなことを何度も繰り返し、さらにはそれを快楽とし誇れるような邪悪さを持っていた。


怒りのままにエルベーナで拷問解体と人体実験を繰り返し、戦争を大義名分に4万人を虐殺した俺であるが、それでも彼らには共感できない。

その行動には信念も覚悟も感じられない割に、あまりに危険で悪質だった。

だからこそ、赤字レッドは捕縛ではなく討伐の対象とまでされ、どれだけ残虐な扱いをしても許されるのだ。

人間個人から見ても社会の枠組みから見ても、赤字レッドの存在とその行動の結果はあまりに非合理的で、そして甚大すぎる。

日本人としての感覚を持つ中畑なかはた蒼馬そうまとしても、ウォルを取り仕切るソーマ=カンナルコとしても、カラルの住民たちの行動は同情できるものだった。


「どう……して?」


が、それはミゼットにとって何の救いにもならない無情でしかない。

本人の記憶と世界の記録を閲覧できる俺でさえミゼットが赤字レッドとされた理由がわからず理不尽だと感じる中で、それ以上に身に覚えのないまま友人や婚約者から廃絶されたミゼットの心中は、もはや覗き見るだけで発狂しかねない負の嵐だ。

長年親しくしてきた人間からの仕打ちという意味では、エルベーナでの俺のケースよりも始末が悪い。


そして、ここにはアイザンもいない。

当代の水の大精霊にできるのはただ顔を歪めることだけで、ここにはミゼットを救える者が誰もいなかった。


「「……」」


……この世界では何も変えられないし、何もできない。

事前にそう繰り返した時の大精霊も、ただ目の前で震える少女の姿を見つめ続けている。


「……!?」


それが、文字通り(・・・・)歪む。


「引き裂かれそう、挽き潰されそう、砕け散りそう、燃え尽きそう……。

私たち人間には比喩でしかないこの絶望が、実際に体をバラバラにできる魔人ダークスたちを満たすとどうなると思う?」


ようやく声を発したマキナの視線の先では、【散闇思遠バッティング】のようでそうではない現象が起きていた。

灰が舞い散るのではなく、ただ崩れていく。

表情の抜け落ちたミゼットの顔は斜めに引き裂かれ、続く右肩、右腕と順に形を失っていった。

そのまま右半身は完全に砕け散り、足下には雪と同じ色の灰がこぼれる。


「本当に……引き裂かれるのよ」


微動だにしないマキナの前では、およそ体の4割を失ったミゼットの全身が白くなり始めていた。

灰……としか表現するしかない、魔人ダークスの構成物質。

細胞なのかどうかさえ未だにわからないそれの集合体へと還ったミゼットは、徐々にその塊の形を変化させていく。


「そして、絶望を少しでも小さくしようとする。

あったことを、なかったことにしようとするの」


立体のサンドアートを、あるいは作り直される雪像を見ているかのように。


「そんなことは、できないのにね」


「ミレ……?」


輪郭にまた黒が混じり始め、完全に変化が終わった後に立っていたのは長身の女だった。

腰まで真っ直ぐと伸びる髪を見て、思わず俺の最もよく知る魔人ダークスの名前が口から零れるが、よく見るとその顔立ちが微妙に違うことにすぐ気がつく。


「……」


ピエッタ。

記憶として流れ込んできたその名前の魔人ダークスは、ぼんやりとそのまま立ち尽くしていた。

その傍らでは先に崩れていた4割の方の灰が蠢き、小さな姿のまま立ち上がる。


「……」


ザラ。

その記録を持つ白髪の魔人ダークスは、6か7歳くらいの少年の姿をとっていた。


「「……」」


それぞれ黒のワンピースとローブをまとったピエッタとザラは、その場で一瞬だけ赤い視線を交換し、すぐにその場から歩き出す。


ピエッタは南西へ。

ザラは北東へ。


正反対の方向に2つの足跡が伸び続けていく光景は、旅立ちというにはあまりに無色だった。


「また絶望ミゼットに戻るだけだから、すぐに離れようとするの。

人間が近親相姦を忌避するような……本能みたいなものと、言えなくもないのかな。

魔人ダークスは、こうやってえるのよ」


魔人ダークスの繁殖方法。

かつてウォルでミレイユにはぐらかされた疑問の答え、疑問のままにしておくべきだったのかもしれないその答えを、俺は小さくなっていくピエッタの背を見つめたまま聞き流す。


「分割したんだから、当然まともな記憶なんて残ってないわ。

あるのは魔人ダークスとしての生存本能と、絶望に直接関係のない経験の羅列だけ。

サリガシア料理は覚えていても、それを誰のために練習したのかまでは覚えていない。

傷の手当ての仕方は覚えていても、それで誰の傷を癒やしたのかまでは覚えていない……」


それを説明するマキナの声にも、感情はない。

強いて言うなら、面白くない割に長すぎる映画を見終わった後のような、ただ眉間が重たくなるような疲労感だけがそこにはあった。


「ザラは、この後カイラン大陸に行くことになるわね。

一方で、ピエッタはヴァルニラに難民として入ることになるの。

酒場の給仕、娼婦、墓守、食堂の手伝い、占い師、掃除婦……。

色々な仕事をしながら数十年かけてサリガシアの都市を西へ西へと移動した後は、海を渡ったエルダロンで、サリガシアから逃げ出した獣人ビーストたちの子供を集めた孤児院を開くことになるわ」


「……」


シンプルな説明の言葉にも、それは濃厚にまとわりついていた。

が、受け取る側の俺の唇も、それは同じではある。


数十年をかけて、それだけの移動と転職を繰り返す……。

目の前でミゼットの顛末を見届けさせられた直後に、そこに何が省略されているかがわからないほど俺は楽天家ではないし、この世界に期待もしていない。


「その後も、エルダロンの国々を……その当時は、まだたくさんの国に別れていたから、南へ南へと移動していくことになる。

小さな村で医者代わりになったり、都市の片隅で私塾を開いたり、また孤児院を開いたり、踊り子をやりながらそのお金でスラムの炊き出しをやったり……。

子供に関わるような……献身的な部類の生き方が多くなったのは、それくらいからね」


世界というのは、残酷だからだ。


「ピエッタから数えて36世代、210年後に生まれる(・・・・)魔人ダークスがミレイユよ」


「……そうか」


36世代。

それは、この後ピエッタとその子孫たちが36回絶望したことを意味する。

身を引き裂かれ、心が挽き潰され、夢が砕け散り、魂が燃え尽きる……。

先程ミゼットが経験したことを何度も何度も、何度も何度も経験しながら、ミレイユという存在は生まれたのだ。


友達。

先生。

母親。


人間。


ウォルで共に過ごす中、あいつが異常とまで言っていいほどにそれらにこだわっていた理由、守ろうとしていた理由がようやくわかる。

きっと、それはミゼットやピエッタが、それ以上の何十人もの魔人ダークスたちが守ろうとし、望み、夢に見て、求めてきたものだったのだろう。

たとえ、それが戦略と打算の先に積み上がった果ての結果だったとしても、そこに灯った炎は初めてあいつを照らした光と熱だったのだろう。





魔人ミレイユは初めて、ただ、ただ幸せになれたのだろう。





「……馬鹿が」


どちらに向けてなのかわからない……いや、もちろんわかりきっている罵倒の溜息を吐きながら……。


「……」


……しかし、俺は重たい眉間に深いしわを寄せる。


『次にお会いできるときは、どうぞかたきとして』


……ならば、なぜその幸せを、ウォルを捨てて、お前はライズの側に回った?

なぜ、『浄火じょうか』として再び世界を滅ぼそうと思った?


同時に頭をよぎるのは、ミゼットの自陣片カードの赤い文字と。





ミレイユの、赤字レッドに対する考え。





「……おい、……まさか…………」


「じゃあ、私たちも移動しましょうか」


反射的にマキナを睨みつけた俺の視線は、白いフードで遮断される。


「次は、魔人ダークスの進化についてよ」


俺と一切目を合わせないまま、世界は再びその色を変えた。

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