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先輩達のリベンジ(中編)

「……黒澤、アンタが私にボールを出しなさい」

 唐突に、武田が俺に声をかける。

「え?」

「いいから出しなさい。出したらすぐに走りなさい」

 五十嵐先輩は葵のマークから離れる気配はなく、小鳥遊先輩のネタが見えていない今、言う通りにした方が良さそうだ。

 俺はコートの外から武田にスローインを出す。

 そして言われた通りに走る。

 やはり武田を待ち構える小鳥遊先輩。

 武田は小鳥遊先輩をどう攻略するのか…

 見ると、武田は小鳥遊先輩を横切る寸前でドリブルするてを変えることで、あっさりと小鳥遊先輩を抜いた。

 今度はゴール前で構える月詠先輩だが、武田はどう攻略するのか…

 武田は月詠先輩の目の前でシュートモーションに入る。

 月詠先輩の防御力は半端じゃない。

 正面からのシュートは絶望的だ。

 このシュートは決まらない…と思った時、ボールが俺の方に飛んできた。

 月詠先輩がブロックしたときにたまたま飛んできたのではなく、武田が意図的に飛ばしたものだった。

 あまりに予想外の展開に対応が遅れ、月詠先輩がこちらに向かってくる。

 武田にパスを出すが止められ、月詠先輩がこちらのゴールに走る。

 五十嵐先輩が葵をしつこくマークして、葵のディフェンスが間に合わない。

 がら空きのゴールに、月詠先輩のダンクが炸裂する。

 0対8

「何ボサッとしてんのよ……」

 武田が俺を白い目で見る。

 普段の武田の、常に周囲を威嚇するような学園生活を見慣れてるせいか、それだけのことが恐ろしく見えた。

「そのことについては謝る。悪かった。

 だがな、俺は走れとしか聞いてない。リバウンドを頼んだのかと思ったぞ」

 どうせ止められる……と思ってたなんて、とても言えなかった。

 試合ではこんなの、ただの言い訳でしかない。

 それを理解した上で、本心を隠すために言い訳をした。

「……そうね。説明不足なのは私のせいね。ゴメン。次からは気をつけて」

 ……こんなの、勝てるのか?

 そう思うと同時、いくつかのことが引っかかった。

 なぜ、葵を執拗に潰しに来るのか?

 なぜ、小鳥遊先輩は正面から当たりに来ないのか?

 小鳥遊先輩のシュート力は桁違いなのになぜ、月詠先輩が自らシュートを決めに行ったのか?

 葵を止めたい理由は分かってる。

 相手がシューターの場合、シューターをマークしてなければ抑えるのは難しいからだ。

 しかし、葵がスリーポイントをいくつ決めても、それを取り返せるだけの得点力が小鳥遊先輩にはあるはずだ。それに、たとえノーマークで葵がシュートを打てても、月詠先輩は止めるのが難しいだけで不可能ではない。

 五十嵐先輩は葵を抑えるよりも攻めた方がいいと思うのだが、それでも葵を抑えたい理由が分からない。

 相手を抜かせてボールが取れるなら、それは試合においてもの凄い威力を発揮するため、それに自信があるから小鳥遊先輩は正面からぶつからないのかもしれない。

 一番分からないのは、月詠先輩が自ら攻めに行った理由……

 葵は動けず、武田は離れた場所にいたのだから、俺を抜いた後は小鳥遊先輩にパスが通ったはずだ。

 小鳥遊先輩がシュートすれば3点だったのに、それでも月詠先輩が攻めに回ったのかが分からない。

 とにかく、葵と相手の五十嵐先輩が動けない状態で小鳥遊先輩は抜けた。

 後は二人掛かりで月詠先輩を超えるだけ。

 さっきと同じように、武田が小鳥遊先輩を抜いて、月詠先輩の前でシュートモーションに入る。

 月詠先輩がブロックを仕掛けるが、武田は月詠先輩のブロックをかわしてシュートを放つ。

 入るかどうか際どいシュートだったが、何とか入って2対8

 ここで小鳥遊先輩を抑えなければ、間違いなく負ける。

 俺はフロントコートスレスレの位置で構えた。

 やはり、月詠先輩が小鳥遊先輩にボールを出していた。

 五十嵐先輩はあくまで葵を潰しに掛かるようだ。

 ボールを受けた小鳥遊先輩のフックシュート。

 シュートは綺麗に決まり、2対11

 現状と点数差を考えれば絶望的だが、今のシュートは大きなチャンスを与えてくれた。

 シュートの軌道が元帥のシュート(暴投)と殆ど同じだったのだ。

 元帥はコート端からのシュートの精度が極端に悪かった。

 スタイルこそ違えどやってることは同じだとすれば、五十嵐先輩が執拗に葵を潰したり、月詠先輩が自らシュートを決めに行くような効率の悪い行動に出たのも頷ける。

 小鳥遊先輩が打ってきたシュートは三回ともコートの端からは打っていない。

 端から打てないのはほぼ確定事項だろう。打てるのなら、月詠先輩はシュートを決めずにパスを出していればいいのだから。 小鳥遊先輩のフックシュートには元帥ほどの速さも威力もない。

 ならば、あの敵ゴール下からのシュートは止められる。

 小鳥遊先輩以外が攻めれば、相手のディフェンスは緩くなる。

 そうなれば俺達は今よりも点を稼ぎやすくなる。それは先輩達も分かってるはずだ。

 前半終了のブザーが鳴り響いた。

 後半で逆転して、先輩達を驚かせてやろう。

 そして大人気ない生徒会長、朱雀院彩花先輩に文句を言いに行くんだ。

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