先輩達のリベンジ(前編)
先輩達のリベンジ当日。
俺と葵は武田を加えた3人で挑む。
対する先輩達は……
「小鳥遊響、よろしくっ!!」
小鳥遊先輩は、どこか人間離れしているという噂でこの学園では有名人だ。
そんな人を連れ込むとは、なんて大人気ない……
「彩花も水臭ぇよな。こんな面白そうなこと、これで2回目なんだろ?どうせなら最初から呼んでくれりゃあいいのに」
またあの人かっ!!大人気ないのは生徒会長かっ!!
「小鳥遊……一応、遊びじゃないからな
……で、大和。前回はお前達の人数が多かったから全面使ったが、今回は少人数同士の試合だ。全面と半面、どちらがいい?」
「そう、ですね……お互い、全面の方がやりやすいでしょう。全面でお願いします」
「了解」
全バスケ部員が見守る中、審判に女バス顧問(氷室先生)、得点係に男バス顧問がついて、少人数の試合が始まろうとしていた。
前回もそうだが、全面を使っていると言ってもハーフコートを使っているのだから、試合中でも練習するスペースはあるはずだ。
それでも全員が見物するのは、よほど興味があるのか、それとも練習嫌いなのか……
「くどいかもしれないけど、頼むぜ、武田」
「どうだか。張り合える奴が相手じゃないと退屈するだけだし、途中から放棄するかも」
「安心しろ。その点については問題ない」
月詠先輩と五十嵐先輩の実力は折り紙付きだ。
前回、5対3でこちらが圧倒的に有利だったにも拘わらず苦戦を強いられたからな……
今回はその二人と、葵の代わりに人間離れしたような小鳥遊先輩が加わっている。
真面目にやれば、退屈なんてするはずがない。できるはずがない。
退屈するとすれば、それは最初から戦うのが馬鹿らしくなるような負け方をした時だけだ。
……今回は葵が味方だが、俺達3人の中で唯一のシューターも葵だ。
バスケでは、ショットしたボールは降下中、リングより高い位置で触ってはいけないことになっている。
つまり、この中では葵だけが月詠先輩に対して有利に攻めれるのである。
全てを葵に任せる訳にはいかないが、葵を主力にするだけでかなり楽になるはずだ。
逆を言えば、葵を封じられただけでかなり厳しくなる。
前回の試合で先輩達は葵の実力を把握しているだろうから……攻めさせてくれないだろうな、葵には。
相手のジャンパーは月詠先輩だった。 この中で一番高く跳べる葵をジャンパーに出すが、恐らく負ける。
この中で一番高く跳べる葵をジャンパーに出すが、恐らく負ける。
ならば、五十嵐先輩と小鳥遊先輩をマンツーマンでマークし、逆に貰いに行くのも一つの手だ。
俺が五十嵐先輩を、武田が小鳥遊先輩をマークした。
試合開始のブザーが、体育館に響いた。
ジャンプボール。やはり月詠先輩は高く、葵はボールを取れなかった。
月詠先輩の捉えたボールは、五十嵐先輩に向かって飛んでいく。
前の試合で分かったこと。
五十嵐先輩は踏み込まなければ、あの攻撃力はない。
前回、静止状態から動こうとする五十嵐先輩を抑えるのは容易だった。
隠し技のスリーポイントにしてもほぼ正面からでしか入らないし、葵ほどの飛距離もない。
それに、フットワークを生かして相手の動きを阻むことは出来ても、相手のボールを捕る技術までは持ち併せていなかった。
つまり、ボールを手にして踏み込むまでは五十嵐先輩の攻撃力はゼロで防御力も乏しい。
だから先制点はこちらのもの。小鳥遊先輩が葵を潰しに来るだろうから、あとは五十嵐先輩を抑えてしまえば、あとは月詠先輩との勝負……そう思っていた。
思った通り、簡単に五十嵐先輩からボールは捕れた。
そしてドリブルしようとした時、
「鉄也は盾、はやては剣……いや、矛なんだってね――」
手に取ったはずのボールの感触が、一瞬で消えた。
「――ならば私は、今をもって学園最強の銃になる!!」
ホイッスルが響き、先輩達に3点が入る。
気が付いたら、そこには武田がマークしていたはずの小鳥遊先輩が……
武田が手を抜いたのか。一瞬そう思ったが、武田も驚きの顔を隠せていない。
本気でマークから外れたことに気付かなかったようだ。
「……なるほど。確かに、強い。それでこそ、面白い」
あれ?聞き間違いか、武田の口から信じられない言葉が。
だが、今はそれどころではない。
まずは点を取り返さなければ。
俺は武田からスローインを受ける。
予想に反して葵は五十嵐先輩にマークされ、向かう先には小鳥遊先輩が。
葵に頼れないなら、俺が攻めるしかない。
小鳥遊先輩はあっさり抜けた。
なのに、小鳥遊先輩を抜くと同時にまた、ボールの感触が消える。
ピー。
ホイッスルが響き、また点数が加算される。
0対6
小鳥遊がボールを捉え、シュートを決めている。
理屈では分かってることだし、その通りのことが起こってるのだろう。
それでも、どうしても考えてしまう。
一体、どうなってるんだ?