第1話
いつも嘘をつく来栖。
いつも信じる神に、いつも呆れている西園寺。
嘘をつくのに理由なんてない。嘘をつくと面白いから。
平凡なある日、いつものように嘘をついた。
そしてその3人は、嘘を確かめに行く。
結果は、いつもと変わらないはずだった。
放課後、夕焼けが顔を照らす教室。
俺はいつものように嘘をつく。
「なぁ、知ってるか?この学校、夜23:33分になるとピアノが勝手に動くらしいぜ」
「マジ!?すげー!」
「お前はもう少し人を疑え。嘘に決まっているだろ。」
「ホントだって!なんなら今日、確かめに行くか?」
「はぁ……来栖、そのセリフ、何回目だよ……」
といいつつ、着いてきてくれる幼馴染二人。
アホな神と、いつも真面目な西園寺。
この嘘も、いつもの冗談のつもりだった。
現在時刻、22:50分。
今、集合場所の校門に着いているのは来栖と神だけだった。
「アイツおせーな!」
今付いていない西園寺に文句を言う神。そんな神に俺は言う。
「怖がってんじゃね?」
いつもの軽い様子で、懐中電灯をつけたり消したりして自分の顔に当てている。
「ハッ、ビビり!」
神はハッハッハと笑う。すると後ろから
「誰がビビりだって?」
眉間に皺を寄せた西園寺が、神の後ろからお化けのように顔を出した。
「うわぁっ、!!」
神は情けない声を出して、前に転けた。
神の反応に俺は思わず大爆笑してしまった。
西園寺はムッとした顔を浮かべ、神の隣に並んだ
「お前な、人を馬鹿にするのも大概にしろよ。だからそんなバチが当たるんだ」
「ほら、バカなことやってないでいくぞ〜!夜の学校探検〜!」
「お前の嘘の検証だバカ」
神のことなんか気にも止めず、二人はどんどん進んでいく。
「ちょ、お前ら待てよー!慈悲の心〜!!」
慌てた神はすぐ立ち上がり、二人の後を追っていく。
現在、23:19分。
学校の入り口についた三人。
溜息をつきながら、西園寺は言った
「またいつものあれか?」
「たりめーよ!」
来栖が慣れた様子でポケットの中から針金を取り出し、入り口の鍵をガチャガチャし始めた。
「うお、何回見てもすげー!」
「お前、そういう仕事向いてんじゃねーの。」
それぞれ違った反応を見せる二人。
「それ一周回って悪口だろ」
「今気づいたのか?笑」
最近気づいたが、西園寺は意外と毒舌だ。
"ガチャ"とドアが開いた音がした。
「さ、はいるぞー!」
「おぉー!」
「おー。」
テンションの高低が酷い掛け声の後、三人は校舎に入った。
「つっても、もう慣れたなー」
頭の後ろで手を組みながら神は言う。
「当たり前だろ…何十回きてると思ってんだ。」
西園寺は、あくびを噛み殺しながら呆れた様子で言う。
「ぼっちゃまは眠いですね〜笑」
俺は揶揄うように言った。
「うるさい!」
西園寺はふたたびムッとした表情を浮かべ、腕を組んで言った
「だいたい僕らは高校2年生だぞ!それなのにこんな夜中に学校探索なんて…」
西園寺の説教が始まりそうだったので、俺は
「はいはい、わかりましたよーー!」
と割り込み気味に言い、話を終わらせた。
西園寺は『まったく』と言う顔をしながらも、話を再開する気はないらしい。俺と神は目を合わせ、そっと胸を撫で下ろした。西園寺の説教は長い。
「さあさあついたぞ音楽室〜!!」
神はテンション高げに、音楽室の扉の前で一回転した。
「そんなテンションあげたらまた転ぶぞ〜笑」
俺が言うと、神はパッと姿勢を正した
「いま23:31分。あと2分だ。早く検証して早く帰るぞ」
西園寺はそういうと、すんなりと音楽室の扉を開けた。
西園寺の手がいつも少し震えているのは、俺だけの秘密。笑
「うおお、テンション上がってきた!!」
音楽室のドラムを勝手に叩いたり、木琴を鳴らしたりしている
「ちょっと、うるさい。」
西園寺は片耳を押さえながら、腕時計で時間を確認している。
「おい、あと1分だ。」
「一分ってことは60秒!」
そう言って無邪気に笑う神を見て、西園寺はため息をついた
「当たり前だ。時間覚えたての小学生かお前は。」
「ほら、そうこう言ってるうちにあと10秒くらいじゃなーい?」
俺はそう言って、カウントダウンを始めた
「じゅーう!」
続いて、神もノってきた。
「きゅーう!」
少し迷ったあと、西園寺は小さな声で
「…8」
7、6、5、4、3、2、
そして最後に俺が
「いーち!」
と言った。ちょうど23:33分。全員の心臓が鳴った気がした。
「……」
「……」
「……」
最初に口を開いたのは、西園寺だった。
「ほらな。やっぱり鳴らねーじゃん。」
続いて、2人ともガッカリした表情を浮かべた
「ちぇ、つまんねー」
「鳴ってくれてもいいのによー」
「だから言ったんだ。お前の言うことは嘘だとな」
西園寺は素早く歩き、音楽室のドアを開ける
「ほら、早く帰るぞ」
ふたりは揃って
「うーす」
と返事をした。その直後───
ピアノから、音が鳴った。
全員が振り返る。
そこから、ゆっくり音が紡がれていった。
ピアノソナタ第14番。「月光のソナタ」とも呼ばれる曲。その不気味さが、今は一層際立っている。
「……は?」
俺の口から思わず声が漏れた。
他の奴らも、目を見開いて俺の方を見ていた。
「来栖、今回は随分手の込んだ悪戯だな。」
「え、これどーなってんの!?遠隔ソーサってやつ!?」
「いや、俺マジで知らないんだけど…」
「「は?」」
西園寺と神の声が重なった。
「じゃあ、あれは……」




