第4話 チュートリアル特典
時間は19時になった。
おなかもすいてきたところだが、とりあえず3階の会場に向かう。
岡部さんから聞いたチュートリアル特典をもらうためだ。
――会場に着くと、もう人は数人しか残っていなかった。
明らかに戦意喪失して座り込んでいる女の人。
老人夫婦らしき人。
そして今まさに目の前にいるスーツの男の人に怒鳴り散らかしている男の人。
「どぉーなってんだ!なんで特典がもらえねえんだ!!おかしいだろ!!」
鼓膜が痛くなる大声でスーツの男に吠えている。
こいつは確か、説明を聞かずに出ていった一人か。
「こちらは、会場にてルールの説明をお聞きになったプレイヤーのみの特典となっております。おおむら様は、ゲーム説明開始と同時に会場を出られておりますため、特典をお渡しすることはできません」
淡々と答えたスーツの男は、博人に話しかける。
「お待たせいたしました。特典の方お渡しいたします。明日になりますと報酬確定となります」
そう言って、紙を博人に渡した。
その様子を見ていたおおむらは、またスーツの男に詰め寄り文句を言い始めた。
博人は二人から離れ、会場の端にあった椅子に座り、特典を確認した。
『
チュートリアル特典
・ランダムステータス中上昇
・LUK-1
・ 』
おおむらという人が詰め寄るのも分かる気がした。
破格の報酬すぎる。
どれくらい上昇するのか分からないが、ステータス中上昇は《ベアーズ》でも取り扱っていなかった。
今手に入るのは、この特典だけなのだろう。
博人は心の中で松本さんに感謝を伝えた。
「さてと」
まわりに人がいないことを確認して、博人はおもむろに特典の書かれた紙を光にかざした。
――やはり、透かしが入っていたか。
岡部さんの持っていた紙は後ろのライトが透けるほど薄かった。
あの時は、ただ薄い紙の可能性もあったため、言及はしなかったがよく見れば、誰でも見抜けるレベルだった。
しかし、このスキルはこれだけでは獲得できないはずだ。
博人は後ろのポケットを探り、隠してあった消しゴム付き鉛筆を取り出した。
そして、部屋から持ってきた鉛筆を使って、透かしをなぞってみた。
『チュートリアル特典
・ランダムステータス中上昇
・LUK-1
・スキルD【観察眼(小)】 』
「これで、1つ目はおしまいっと」
そうつぶやくと、鉛筆をひっくり返し、消しゴムに持ち替え、文字を消していく。
『チュートリアル特典
・ランダムステータス中上昇
・
・スキルD【観察眼(小)】 』
「これでよし」
博人はさらさらと紙に何か書き込むと、顔を上げ、自室に戻った。
自室に戻ると、博人は机の上にある紙にもう一度目をやった。
『部屋に入ったら必ず読もう☆上』
―――必ず読もう☆上 ね。
星の上だけ読んでみると『ぜん部うそ』。
要は、紙に書かれていたことは全部嘘ってことになる。
だから鉛筆は持ち出していいし、使っていい。
むしろ持ち出して使わないといけないってことになる。
正直今回は運がよかった。
岡部さんに会っていなかったらこの成果を上げるのは難しかっただろう。
LUK+3…これがどんな価値をもつのかは分からないが、今日はこのステータスに助けてもらった気がする。
改めて松本さんに感謝をして、博人は固いベッドで眠りについた。
佐伯博人
STR:不明VIT:不明
INT:不明 DEX:不明
AGI:不明LUK:不明+3-1
HP :不明
【冷静】【視力小上昇】
※ご覧いただきありがとうございます。
ちょっとでもいいなと思ったら、評価をいただけると、励みになります!
ぜひ、書き方のアドバイスもください。待ってます!
続きが気になったら、カクヨムで出してますので、ぜひ。
【スキル使用可】リアル脱出ゲーム
本編
↓
https://kakuyomu.jp/works/16817330667075076884