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【スキル使用可】リアル脱出ゲーム  作者: すぱとーどすぱどぅ
3/4

第3話 会場を出て歩く

 話を戻して、現在に至る。


 ルール説明を聞き、阿鼻叫喚になっている会場を後にして、博人は自分の持ち物の確認をした。


「(持ち物は……手首から外れないリストバンドと……金属製のカード……だけか。)」

 

 銀色のリストバンドに触れてみるが何も起こらない。重さも特に感じない。

 金属製のようなカードはなめらかな肌触りだが、それだけだ。

 ICカードのようにも見える。


――よく見てみると裏面に『HIROTO SAEKI』 と書かれている。個人に割り当てられるカードのようだ。


 そこまで確認を終えると博人は船内を探索することにした。


「手始めにこの階から見て回ろう」


 誰に伝えるでもなくつぶやくと、あたりを見回しながら進んでいく。

 そして、ようやく吹き抜けになっている場所についた。


 手すりから眺めるに、今いるのは3階部分。

 そして、1階の吹き抜け中央は商業区画のようだ。中央に大きな店があり、そこに続く道沿いには露店のようなものが立ち並んでいる。


「あとで見に行くか」


 まずは予定通り3階の探索を続けることに決め、また狭い通路を進んでいく。


 すると、番号と名前の書かれた扉があった。

『001 KOUTARO TACHIBANA』 『002 HIKARI SENNJU』


「これは、部屋の番号と名前……?」


 次のドアには見慣れた文字があった。『003 HIROTO SAEKI』。

 扉のノブに手をかけるが、ピクリともしない。もう一度扉を見てみると、カードをタッチする機械が取り付けられていた。


「本当に何も教えてくれないんだな」


 小さくつぶやき、ポケットに入れたICカードを扉にかざす。

 

 カチッ。

 

かすかな音を合図に、博人は扉を押して中に入った。



 そこには、生活に必要最低限のものが置かれていた。


 まずはベッドだ。

 学校の病室に置かれているような形のベッドだが、クッション等はなく固い。

 寝られはするが、これから30日間はとても耐えられそうになかった。


 次に机だ。なぜ机があるのか分からないが、子供の勉強机くらいしっかりしている。

 ベッドと品質逆だろ。

 心の中でツッコミを入れて、机の上を確認する。




『部屋に入ったら必ず読もう☆上』と書かれた紙1枚と消しゴム付き鉛筆1本のみがぽつんと置かれていた。


「まずは読んでみよう」

 紙に目を落とすと、こう書かれていた。



『部屋に入ったら必ず読もう(上)


 ベッドのクッションは部屋☆の中にありません。

 洗面台の水は飲んで、☆いいよ

 机の上にある鉛☆筆は、部屋からそーっと持ち出して使うのは

 ぜったいにやめよう

 ☆夜は外に出ても出なくてもよい☆』



 博人はその紙だけを机に置き、自分の部屋から出た。



 まだ見ていないところはあるが、とりあえず次は2階だ。

 降りる手段を探していると、数人のプレイヤーにすれ違った。暗い顔のものはおらず、目を輝かせている。


「こんにちは」

 声をかけられた方を見ると、金髪の男が立っていた。

 顔の整った青年だ。アイドルか何かだろうか。


「ぼくは おかべ りょう と言います。今さっき、会場を出たところで何もわからなくて・・。

 もしよければ、今わかっていることを教えていただけませんか?」


 さて、どうしたものか。ここでとれる選択肢は2つ。対価を求めるか、求めないかだ。

 教えない選択肢は最初からない。

 現状は情報をもつプレイヤーがかなりのアドバンテージをもつだろう。ただ、1人でできることには限界がある。探索にしろ、【スキル】の発見にしろ、情報共有できる仲間がいることに越したことはない。あとは信用できるかどうか・・。


 そこはこれから見定めていくしかないな。

 そう思い、伝える情報を精査しながら、話し始めた。


「僕は、佐伯博人と言います。私もまだこの狭い通路を見てきただけなのですが・・・。岡部さん、今何を持っていますか?」


 岡部さんは、唐突な質問に少し驚いた様子を見せるが、すぐにポケットを探り始めた。

「今持っているのは、カードと紙だけです」

 そう言って、博人の持っているのと同じ金属製のカードと薄い小さな紙を取り出して見せた。


「これは、会場でもらいました。チュートリアル特典?だそうです。」

 聞いていないのにそんな情報まで教えてくれた。いい奴なのかもしれない。


 こちらの情報を渡しておこう。

「ありがとうございます。後で取りに行ってこようと思います。

 そのカードですが、この狭い通路の両脇にある自分の客室のルームキーのようです。タッチして中に入ることができました。正直、快適とまではいきませんが、寝ることはできそうでしたよ」


 こうして情報交換を終えると、岡部さんは客室フロアに入っていった。


 さて、彼はあの紙の謎が解けるのだろうか。次会うときが楽しみだ。


 2階に降りる階段はあっさり見つかった。

 吹き抜けのちょうど真ん中に階段があったからだ。


 人が5,6人並んでも通れるほどの広い階段で、今まで通ってきた道と同じように厚いカーペットが敷かれている。


 ただ、途中からカーペットの色がわずかに濃くなった。


 2階だ。


 2階は商業施設になっているようで、たくさんの店が立ち並んでいた。

 閉店時間を過ぎているのか、開いている店はなかった。

 仕方なく、さっきの階段に戻り、1階を目指す。またカーペットの色が変わる。


 1階だ。


 1階に来て真っ先に目に入るのは3階から見たあの大きな店だ。

 4本の大理石の柱で屋根を支え、その下には様々な品物が置いてある。


 まずは情報を集めておこう。


 店に近づくと中にはくまのぬいぐるみがいた。

 大きさは、40㎝くらい。抱えて歩きまわるギリギリのサイズとでもいえるだろうか。

 そして、かなりボロボロだ。綿が出てしまっている。

 目のボタンも1つない。で、ぷかぷか浮いている。


 ただ、不思議と怖くなかった。


「いらっしゃい。プレイヤーくん。スキルショップ《ベアーズ》にようこそ。ボクは、チャッピー。ヨロしくね」


 チャッピーはふにゃふにゃな首を上下に動かして、くたっとお辞儀をした。


「ここでは、スキルの売り買いができるヨ。売る金額ヤ買えるスキルは日によって違うヨ。ぜひたくさん買って、たくさん売ってね」


 ここまで言い終えると、チャッピーは店前で動かなくなった。どうやら、システムで動いているようだ。


「チャッピー、店の品物を買わせてほしいんだけど、品物を見せてくれない?」


 チャッピーが いいよ。とうなずいた瞬間、博人の目の前に薄く青色がかった、ウィンドウが出てきた。


品物一覧ベアーズ0日目  所持金 0S

 ・スキルE【ステータスウィンドウ】10S

 ・ランダムステータス小上昇 2S

 ・称号【探索者】残り1(5個中)


 ―――――――――――――――――――――――――――――――――



「チャッピー、この【ステータスウィンドウ】はどんなスキルなの?」


 チャッピーは博人のほうにふわふわ寄ってきて、現物を見せてくれた。


 なるほど、薄く緑色がかったウィンドウで、ステータスが書かれている。スキルもタッチすると詳細が見られるようだ。必ず必要になるスキルといっても過言ではない。


 とりあえず、ほかの品物の説明も聞いてみる。




 ランダムステータス小上昇 …STR、VIT、INT、DEX、AGI、LUK、HPを

              ランダムで1つ少しだけ上昇させる。


 称号【探索者】…すべてを犠牲にして探索をする冒険者に送る称号。

         スキルE【視力小上昇】を得る。



 ここまで聞き終わったところで、チャッピーが話し出す。


「今はお金がなくて何も買えないから、称号だけもらっておくといいヨ。最後の一個だヨ。」


 そのアドバイスを聞き入れ、称号だけもらっておくことにした。

 全部で5個あったということは、最低でも4人はもうこの場所にたどり着いていることになる。

 ―――怪しいのは、最初に出ていった人たちだな。


 そんなことを考えながら、チャッピーにお礼を言い、店を後にした。


 そのほかの露店には、まだ何も品物は並んでおらず、人もいなかった。





 佐伯博人さえきひろと

 STR:不明VIT:不明

 INT:不明   DEX:不明 

 AGI:不明LUK:不明+3

 HP :不明

【冷静】【視力小上昇】



 


 ※ご覧いただきありがとうございます。

 ちょっとでもいいなと思ったら、評価をいただけると、励みになります!

 ぜひ、書き方のアドバイスもください。待ってます!


続きが気になったら、カクヨムで出してますので、ぜひ。


【スキル使用可】リアル脱出ゲーム

本編

https://kakuyomu.jp/works/16817330667075076884

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