予防接種の話
予防接種。
皆さんは予防接種がどういうものが説明できますか?
実はワクチンだけじゃないんです。
世の中にはいろんな予防接種があるんですよ。
社会心理学には、接種理論というものがあります。
1961年に社会心理学者のウィリアム J. マクガイアによって開発された理論だそうです。
名称の由来はもちろん医療の予防接種から来ています。
この理論はメディア、広告、対人コミュニケーション、仲間からの圧力などの情報源が与える影響に対して抵抗力を持つようにするための理論です。
プレゼンなんかでも先に練習でボロクソにけなされておくと、本番では抵抗力がついているために変なのに絡まれてもうまく対応できたりします。
これも接種理論です。
もちろん使い方によっては相手を自分の有利な方向へ誘導することも可能です。ビジネスやマーケティングの世界では当然のように利用されている手法です。
近年ではフェイクニュースや陰謀論、疑似科学情報への対抗手段として、学校で接種プログラムを使用することで、受講者の論理的誤りの発見力が高まったとの効果が報告されています。
さて、ここで問題です。
この接種プログラムを受講したすべての人がフェイクニュースを見破れる力を持つことができるでしょうか?
答えはNOです。
騙される人の割合は非受講者よりも低そうですが、全員とは言い切れないですよね。
簡単な問題です。
では続いて問題です。
避難訓練を受けた人が、実際に火事に巻き込まれました。避難訓練を受けた人は全員無事に避難できるでしょうか。
答えはNOです。
実際に遭遇したらパニックになる人もいるでしょうし、火元と自分の位置関係によっては無事では済まない可能性も出てきます。
さらに続いて問題です。
コロナの予防接種を受けました。予防接種を受けた方は全員コロナにならないのでしょうか。
答えはNOです。
当たり前だろって思ってくれるといいんですけど……現場にいると『ワクチン打ったのに感染した。ワクチンは効かないからもう打たない』っていう人がいるんですよね。
いつも疑問に思います。
勝手に脳内で都合よく変換してしまうのでしょうか。それともそもそもワクチンの作用機序については全く理解できていないのでしょうか。
『ワクチン接種をしたら絶対に感染しない』って誰か言ってる人がいるんでしょうか。
困ったちゃんですね。JAROに電話しちゃおうかしら。
なんとなく考えてました。
どうしたら予防接種の仕組みが理解してもらえるんだろうって。
悩んだ結果、自分としては面白い例えが浮かんだので、この場で披露したいと思います。
・・・・・
私の在籍した大学は薬学部だったので、教授はみんな自分の研究で忙しく、学生の試験に対してとても省エネな対応策を採用していました。
つまり、過去問の使い回しです。
薬学部の学生が優秀な成績を納めるために必要なのは授業内容の理解ではありません。
過去問をいかに収集できるか。
および、過去問を収集するための人脈をどれだけ構築できるか。
その2点でした。
5年分くらい集めておけば、まあまあ安心かなぁって感じだったと思います。
さすがにまるまる1年分フルコピーな試験ではなく、数年分の過去問からのツギハギで作成されていました。ウィルスで言うところの変異ってやつです。
ときどき教授の気まぐれで新問題が1〜2問出ることがありました。(授業中の雑談とかでしゃべってたやつ。誰が覚えてるかよ、ってやつ)
なんとなくイメージできそうですか?
過去問の入手をワクチン接種。
本試験をウィルスとの濃厚接触と例えます。
さて、ここで何度も出ている問題です。
薬学部の学生が協力し、全員が同じ過去問を同じ年数分入手しました。
全員が同じ点数になったでしょうか。
答えはNOです。
同じ過去問を入手しても、みんなが同じ点数を取れるわけではありません。
私の仲間なんか、せっかく過去問コピーさせてやったのに、ハナから再試狙いで落としてましたからね。やる気ゼロです。コピー代の無駄です。コピーすんなし。
入手したあとに、どんなアクションを起こすか。
これがワクチンを接種したのに発症する人としない人の違いなのかなって思います。
過去問を手に入れた結果……
・高得点が取れた。
・平均は越えた。
・赤点は免れた。
・全く利用せず再試になった。
・見たけど意味が分からなくて何も活用できなかった。
・過去問ゲットしただけで安心して遊び回ってた。(ノー勉)
……いろんな人がいます。
ワクチンも一緒です。
ワクチンが体内に入っても、自分の免疫がどこまで仕事をしてくれるのかは個人差がとても大きいです。
過去問を手に入れても、(免疫が)学習しなければ再試(感染)になるかもしれません。
こんな例えだと分かりやすいのかなあ、なんて思ったんですけど、どうなんでしょうね。
おしまい。