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死体と戯れる女

カサカサ。


『うーん。』


カサカサ!



『ゴギブリ!』



シャッ!




壁を這っていたゴギブリにメスが突き刺さる。


『むにゃむにゃ・・・。』



ヨミはメスだけ無表情に投げるとそのままベッドにまた倒れ込んだ。



こんな街のボロ宿に2人で泊まった。

泊まったというか持ち帰ってたというか。




『しかし、、、ヨワはなんでこんなこと知ってんかね。』



ヨミは私の腕にしがみついている。










『違ちゃん。いい?あの街に行くとね、あなたを襲ってくる冒険者がいるはず。その1人が北村ヨミ。銀髪で修道服を着てるわ。』


『修道服?ヒーラーか何かかしら。』


『ヒーラー?』


『うん?なんか回復役的なのじゃないの?』


『ああ。それをヒーラーって言うんだ。うーん、ヒーラーではないわ。』


『で、襲ってきたら倒せばいいの?』



『攻撃を防ぎ続けて。』


『そのあとは?』



『鎖骨をね。チューチューして。』


『は?』


『それでたぶん大丈夫。』


『なんで、、、そんなこと。』



『なんでって、、、そういう風に作られてるから。』


『はあ、、、』
















そんなやりとりを忠実に実行したところ、この北川ヨミ。私に付いて離れなくなったのだ。




『鎖骨にキスなんて、、現実でもしたことないわよ。』



しかしなんだか、妙に官能的な気分に襲われた。





『はあ、落ち着け。ただのVRゲームだ。』


ただのVR。

されどVR。




VRに擬似恋愛することもある。


『擬似恋愛ね、、、』




北川ヨミは実在の人物のアカウントだ。


だからオフラインで恋愛になってもなんらおかしくない。




ただ。




『なんだろうか。こうやってるのは、、、』


ヨミは寝る時は全裸派らしく、まさにこのVRでもそうだった。



よくできた、テクスチャーだ。

素材や塗りがいいのだろうか。




『違ちゃん。』




なんだか、あのヨワがよぎるのだ。

ヨワは私がこうやってヨミと同衾してるなんてことは知らない。

ただ鎖骨をチューチューしたのは知っている。



どう思うのだろうか。

好きでもない人の鎖骨をチューチューした私を。









ゴミを見るような目で




『不潔。』








なんて言われたらもう立ち直れない。

いや、そうだとしたらそういう仕様か。





ヨワはただのNPCだ。





何を気を使う必要があろうか。




ヨワだってNPCだから、鎖骨にチューチューなんて恥ずかしい指示を出せたのだろう。








『はあ、、、でもなあ。』


ヨミもかなりの美人だ。

しかし。









『おはよう。』


『違ちゃん、ご飯だよ。』












あの天使のような笑顔でそう言われたら

『お、俺の嫁だ!』

と言いたくなる。





『とりあえずもう1人。見つけないと、、ほら!ヨミ!起きて!』


『むにゃむにゃ、、もう腰動かせないよぉ。』


『そんなんやってねえだろうが!このサイコパスピンク脳!!』



尻をバチンと叩く。




『痛っ、ああ!違、、、お、おはよう。』


『うん。とりあえず服着て。今日はもう1人、仲間にしなきゃ、行けないの。』


『ええ、、いいじゃん、私だけで、、、』


『面倒なことになったわね、、、』



しがみついてくりヨミを引きずりながら宿を出る。














『ネクロマンサーの治験枠、今なら300万ゴールド!』


『ゾンビの相手、1000万ゴールドだよ!』




怪しげな日雇いの仕事の呼び込みを横目に、歩く。









『やべ、ヨミだ。』


『ヨミの連れ、あれ愛人で売れるのになあ。ヨミがボディガードかよ、、』







『アンタ、一体、何したのよ?』


『いやあ、とりあえずさ、近づいてきた男、全部メスで捌いただけだよ?大丈夫!違のことは捌かないから。でも、その私のことは捌いてもいいんだよ?』



なぜ顔が赤くなる。

体をくねらせながら、モジモジする。








『ネクロマンサーの治験枠いかがすかー?』


『ネクロマンサーの為の死体回収ー!1体10万ゴールド!!』







手配師の呼び込みが今日は活気がある。




『死体を使役するんでしょ?ネクロマンサーって。気持ち悪いよね。』




ヨミは苦々しい顔をする。



確かに死体を使役するというのはどういう気持ちなのだろうか。






『おい、アンタ。ゾンビ集めしないか?』


『え?』


『違。どいて。』




ヨミがメスを取り出し声をかけてきた男を切り刻む。



『あ、、が、、、』





倒れた。


『ヨミ!何やってんだ、、、』


『見てよ、違。』


『は?』





倒れた男を見る。

見る見る血の気がひくだけでなく、皮膚がぼろぼろになっていく。

土のような色へと変わっていった。



『これ、、、』


『うん。ゾンビよ。』


『ねえ、まさかとは思うけど。』


『やけに手配師が多いとは思ったけど、、、』


『ゾンビだわ。』






手配師、もといゾンビに囲まれた。

数が多い。

ヨミと私なら倒せるか?



剣を構える。

しかし誰も近づかない。






『な、なんなのよ、こいつら。』


『襲ってこないわね。』






『お2人様。こんにちは。』





ゾンビの群れから出てくる。

先端が尖ったハットに、白いローブ。


青いロングヘアに流し目。

ローブの上からもわかる、凹凸。










『あなた達、パーティ探してるのかしら?』


『あんたは、、、』



『ああかわいそうに。ゾンビさん。死んじゃったわね。でもその見た目なら殺されちゃうよね。守れなくて、、、ごめんなさい。』



ネクロマンサーだろう。

涙を流している。






『・・・・仕方ないけど、ひどい。』


女はこちらを睨むように見てくる。





『でも、、パーティ探してるなら。仕方ないわね。』



『あなたは、、、』











『私?私は、桑島ケイ。ネクロマンサーって呼ばれているわ。』


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