お友達を屈服させよう
『ゴブリン向けパパ活ー、即金200万ゴールド!』
『ミノタウロスの死骸整理ー。3日、宿飯付きー。』
崩落しかけた家や小屋ばかりの集落。
地べたには、シートを敷いて寝ている冒険者崩れのようななりの人々。
手配師の怪しげな仕事に群がる冒険者とすっかり就労意欲を失われたのかブラブラしている冒険者たち。
『てめっ!何しやがる!』
『ああ!?死にてえのかっ!』
殴り合いが起きている。
こんな社会から爪弾きされたような連中ばかりの場所で、闇ギルドをこなせる冒険者などいるのだろうか。
『と、とりあえず探そう、、、』
ヨワに言われた通りウロウロすることにした。
『ひひっ、、』
私のなりを見てなのか、明らかに見る目が
性的なそれだ。
VR空間だというのに。
ただ私に襲いかかる輩はいない。
流石に格上の相手だとわかるのだろう。
『違ちゃん、たぶんあなたのことをじろじろ見てくる奴らばかりだよ。』
ああ、ヨワ、さすが闇ギルドとのツテがあるだけある。
『だからね、近づいてきた奴にチャンスがあるわ。』
『なあ、姉ちゃん。仕事受けてくれないか?そうだなあ。ボスゴブリンのレンタル愛人なんだけど、、、』
かれこれ、1時間くらいくっついて話かけてきている。まるでナンパだ。
『一つは仕事を振ってくるやつ。たぶん違ちゃんは、格好が女騎士だから、、、たぶんくっ殺案件かな。そういうのはね、』
『ああん?てめえ、奴隷にされてえのか!』
『ひっ、ご、ごめんなさい!』
ヨワちゃんの言うとおりだ。
奴隷というのは彼らにとってはとても重荷らしい。
ヨワちゃんも自分のことを奴隷と言ってたが、、
『違ちゃん。もう1パターンあってね。』
『そこのアンタ!私と闘いなさい!』
振り返る。
銀髪のショートヘア。
出立ちを見る。
見かけはヒーラーだ。
修道服に頭にはナースキャップ。
『えーと、あなた、ヒーラーよね?』
『ヒーラー?まあ、よくわからないけど、、とにかく今はアンタと闘いたい!』
武器は、、、なんだろうか。
ヒーラーだったら、杖か?
メイスあたりだったら納得感はあるのだが、、
『容赦なし!!』
ヒーラーの懐が光ったと思うと、何かが頬を掠めた。
『あ、、、が、、、』
後ろにいたボスゴブリンのレンタル愛人を薦めてきた口入れ屋の額に何か刺さっていた。
そのまま白眼を剥き倒れた。
『これは・・・。』
メスだ。
手術で使うあれだ。
『ヒーラーとかよくわからんけど、まあそれっぽいことはやってるかもねえ!』
そう言って、5本指に3本のメスを挟み、
こちらにチラつかせてくる。
『あなた、、私と闘いたいの?』
『ああ。冒険者、しかも強い奴を倒せば戦利品もそれなりだからな!!』
『なるほど。』
メスが3本飛んできた。
全て剣戟で弾く。
『ほぉ、、私の暗殺メス見切るとわねえ・・・。』
『あなたなかなかの手練れね。』
『そりゃ、どうも。』
間髪いれずにメスを投げてくる。
剣を一振りし、全て弾く。
『だけどね、あなたは私のスピードを超えられない。だから、負けるわよ?』
『んなの!やってみねえと!』
メスが10本飛ぶ。
放射線状に、飛ばす。
『回転切り!』
360度回転を繰り返しながら、剣を振るう。
全てメスを弾き返した。
さらに、メスが自分を中心に、360度四方八方から飛んでくる。
ヒーラーが高速で移動しながら、私を的にしているのだ。
なんてことない。
高速で移動しているのは見えているのだ。
だから、彼女がメスを投げる瞬間と私の間合いに何秒後に入るかは容易に判断できる。
カンカンカンカン!
『なかなかやるけどね、勝てないわよ!?』
『はは!まだまだ!』
それでも投げてくる。
剣戟で弾く。
投げる。
弾く。
そんな攻防が30分と続いた。
『はあ、はあ、アンタね。無茶苦茶よ、、、』
『もう諦めなよ。アンタじゃ、私に勝てない。』
ヒーラーは明らかに攻め疲れの色が見えた。
メスもだんだん弾かずとも、避けることができる。
『はあ!はあ!』
どこかで屈服させないと、永遠にやり続けそうだった。
『はあああああああああああ!!!』
剣を防ぎの構えから攻めに変える。
その構えだけで、衝撃波が発せられる。
だから、メスは弾ける。
『ぐはっ!!』
ついでに言うと半径100メートルの物体にも強い衝撃が走る。
ヒーラーは吹き飛ばされて、木に叩きつけられた。
『あ、、が、、、、』
動けないヒーラーに近づく。
ヒーラーの顔を覗きこむ。
『死ね!』
口からメスが飛んできた。
が、それを人差し指の動きで軌道を逸らす。
『わかったろ?キミは勝てない。消耗するだけ。』
『く・・・殺せ!』
『そのセリフはどちらかというと私が使うんだろうけどなあ、、、んしょ!』
『へ?ふわっ!!』
ヒーラーを抱き抱える。
『離せ!てめっ!!』
『ごめんね。VRとはいえ、やっぱりとことん虜にさせるにはこうするしかないみたい。』
物陰にヒーラーを連れていく。
そして、木の幹に放り投げる。
『痛い!』
ヒーラーの服が少しはだけた。
綺麗な鎖骨だ。
『な、、何を、、、』
『違ちゃん。たぶんあなたのレベルを考えると襲いかかるのはまず、このヒーラー。いや、北村ヨミちゃん。この子の弱点はね、、、、』
鎖骨に唇を近づける。
『な、何を、や、やめ、、』
『はあ。VRが初体験とか萎えるけど、、まあ仕方ないわよね。』
鎖骨に口づけをした。
正直、ヨミの反応はVRにしては生々しく、また官能的だった。