友達をつくろう!
『おはようございます、違さん。』
『ああ、ヨワ。おはよう。』
ヨワは髪の毛が入らないようにとの配慮か、頭にナフキンを巻いてくれている。
スレイブユアセルフでナフキンを頭に巻いて、調理しているNPCははじめてだ。
寝起きに銀髪の奴隷少女に、朝餉を作ってもらう。
『?違さん、鼻の下、伸びてますよ?』
『はっ、なんでもない!!』
そそくさとテーブルに座る。
『はい、召し上がれ♪』
クリームシチューだ。
朝からホクホクのじゃがいもに、熱々の白濁のホワイトソース。
それを奴隷少女、否っ!
私の新妻!
『違さん?ヨダレがすごいですよ?』
『ああ、ごめん、あまりに美味しそうだから、、
いただきます!!』
ヨワが尊すぎる。
かわいい。
抱き枕にしたい。
『ところでーーーこの世界でのミッションはもう受けられましたか?』
『ん?まだだけど、、、』
『早くした方がいいですよ。実はうち、滞在費がかかるんです。』
『え!そうなの!?』
『はい。私の取り分はないですが、、』
『いくらかかるのかしら?』
ヨワがそっと、価格表を差し出す。
『1泊5000円』
通常の宿屋の10倍。
10倍・・・・。
『今、、、何泊目だっけ?』
『5泊です・・・・。』
『おぉ・・・・。』
、
これはさっそく仕事を見つけないとならない。
『みっ、ミッションはどこで請負えるのかな・・・??』
『一応、、酒場はありますが、レートが低いので、、、』
『レート?』
『はい、ゴールドからの換金率です。プレイヤーが多いとレートは下がり、プレイヤーが少ないと上がります。酒場は比較的楽なミッションが多いので、5000ゴールド稼いでも、換金すると、1000円にしかなりません。』
『え・・・・それじゃあなんか損した気分です。』
『なので、誰かから直に依頼を受けて独占するか、、、もしくは闇ギルドですね。闇ギルドなら、換金率が2倍から5倍が相場です。』
『おお、、、闇ギルド。香ばしい。どうすれば、その闇ギルド案件は受けられるの?』
『・・・・ツテならあります。』
『ま、マジで!?』
『はい。ツテはあるのですが、、、試験がありまして、、、』
ヨワは紙を見せてくる。
・リリアの呪いという薬品を、隣町まで運ぶ。
・薬品の運送役と護衛役2名の3人パーティで実施すること。
『これって1人じゃ、ダメなの?』
『はい。絶対ミスできない案件なので。』
『むむ、、、』
つまりパーティを組め、ということか。
『単独で、できるのはないの?』
『これが試験ですので、、、』
参った。
パーティ組んだことないぞ、、
『闇ギルド案件というだけで嫌がる冒険者もいるので、、、、誘い方には気をつけてください・・・。』
『Oh、、、、、』
なんということだ。
パーティ組むのすらハードルが高いのに。
『10連敗か、、、』
とりあえず近くの街に出向き、酒場に繰り出した。
『あ、あの!わ、私とパーティ組め!』
『は?頭おかしいんじゃない?』
『あの、パーティ組め!』
『おとといきやがれ。』
『あの、パーティ、、、』
『ああ、、なんか頭おかしい奴が誘ってくるって・・・あっち行ってくんない?』
トップランカー様だぞ?
現実でも国立大学の医学部現役合格くらいはわけのない、地頭を持つんだぞ?
誰も私の価値をわかっていない。
ランカー連中といえども、頭が悪いということだ。
私の価値をわかる奴がいないのだ。
仕方ない。
『・・・パーティ組めなかったんですね。』
『いやあ、、、私に恐れをなしてしまったみたいで、参ったよ。』
『パーティ組めないと、、、試験受けられませんよ?』
『わ、、わかってるわよ。』
口笛を吹いて誤魔化す。
ヨワはジーッと見てくる。
そういう表情も、またたまらないわねえ。
『はあ・・・。違さんがここに来た理由はなんとなく知ってますから、、こうなるとは思ってました。』
『へ?それは、どういう・・・。』
『は!そんなことより!パーティ組めないと破産しちゃいますよ!?違さんはダメですよ!こっち側に来たら!うーん、あまり教えたくなかったんですが、、、明日はここに行ってください。』
一枚の紙が渡された。
『これは?』
『えっと、、なんで言えばいいですかね。ありていにえば、日雇い労働者と手配師が集まる場所といえばわかりますか?』
『・・・えっと、、意味はわからないけど、なんとなく。』
ネットニュースの知識くらいだが、、、
『そこには手配師でも飯場を紹介するのを躊躇う人もいます。そういう人なら、パーティ組みやすいかと、、、』
『わ、私がそんな人と?ヨワ。言っていいことと、悪いことが、、、私はランカーよ?しかもトップの。頭もそれなりにいいし、それに、、親だって、公務員で、、、』
『違ちゃん!』
ヨワの表情が鬼のようになる。
『ランカーだけど、チームワークがなくて、威張って、経験値とかゴールドも横取りに近い感じで配分して、挙げ句の果てに、どのパーティからもはじきだされて、それでも強いから一応ランカーになれたけど、、、頭もいいし、賢いけど、、学校でもそんな感じで、、何も変わってないじゃない!!!』
『ひっ!』
ヨワの背後で炎がメラメラいっているかのように、怒っている。
『違ちゃんは!そういうとこ直さないとダメ!めっ!!』
『は、はい・・・。』
ヨワに怒られた。
嫌われてないかな。
ああまだ眉間に皺がめちゃ寄っている。
でも、そんな人間終わっているような人たちとパーティ組むなんて、、、
私のプライドが、、、
『行くの?行かないの!?』
ヨワは調理で握っていた包丁を取り出す。
『わ、わかりました!行きます!行きます!』
『よし!それでいい。じゃあ、明日、朝イチで行ってらっしゃい。』
ヨワはそう告げると調理に戻った。
はあ。
怖かった。
ヨワはなんでもお見通しなのかな。
ランカーとしての私はまあ、データを参照したんだろうけど、、
『現実までにお見通しとか、、うむ、、恐ろしいNPCだ。』
何はともあれ、明日私は隣町のヨワが指定した場所へ行くことになった。