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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第三章 魔族交流編

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097 決闘、ガルカザン・カザスタヌフ②


「デカ……すぎ、だろ……」


 カズキの口から、意図せず言葉が漏れ出る。


 視界を覆うようだったガルカザン・カザスタヌフの巨体に加え、彼の魂装カルマによって出現した魂装武具カルマ・アームズが――巨大すぎた。


「デケェだろ? 俺はこれよりデケェのを見たことがねぇ」


 カザスタヌフの魂装武具は――巨大な盾だ。


 もはやそれは防具というより、壁だ。


「お前のはちんちくりんもいいとこだな。そんなんじゃ、俺は痛くも痒くもないぜ?」


 対するカズキの右手は、短刀。


 カズキは巨体の相手を自分が上回るには、機動性で攻めるべきだと考え、小回りの利くショートソードを右手に形作っていた。


 しかしカザスタヌフの強大な魂力チャクラと、大きな筋肉をまとった身体を見せられると、確かに自分の魂装武器カルマ・ウェポンでは、ダメージを与えられないかもしれないと感じた。


 相手が、大きすぎる。


 格闘技で言うなら、別階級の相手と対峙しているようなものだ。


「さぁ、はじめようぜ!」


 言葉と同時に、カズキ目がけてタワーシールドに倒れてくる。


 素早い動きでカズキは右に動き、盾による圧殺攻撃を回避する。

 気を取り直し、大きな相手を打倒する方法を導き出すため、頭を回転させはじめる。


 が。


「っ!!」


「油断すんなぁ!!」


 開けた視界に飛んできたのは、カザスタヌフの巨大な右拳。


「つぅッ!!」


 豪速に、剛腕がカズキの身体へと襲い掛かる。


 全身に魂力を巡らせているため、致命傷には至らないが、膂力りょりょくによって吹っ飛ばされる。


「おい、油断すんなって? おらぁ!!」


 高速で飛んでいくカズキに、カザスタヌフは追撃を怠らない。


「あぶねッ!」


 カザスタヌフは、あの巨大は盾をブーメランのように横投げしてきた。


 壁のようなあの盾をぶん投げる膂力にまず驚くが、それで思考を停止するわけにもいかない。


 ここは――死地だ。


 高速回転する分厚い盾は、風を切り裂いて飛んでくる。


 魂力を纏って飛んでくるカザスタヌフの盾は、魂力を全身にたぎらせているカズキでも、クリーンヒットすれば致命傷となるのは目に見えていた。


「ぐぅぅ!」


 空中で無理矢理身体を捻り、盾をギリギリで回避する。

 巨大な盾は回転を緩めることなく、空気を抉ってどこかへ飛んでいった。


「これぐらいはかわしてもらわねぇとな!」


 盾の次は、カザスタヌフ本人が接近してくる。


 大地を揺らすかのような力強い足取りで、大質量の巨体がカズキ目がけて飛んでくる。


 着地し、体勢を整えたカズキは、迅速に迎撃態勢を作る。


「おら、食らいやがれ!!」


 またも右拳を振りかぶるカザスタヌフ。

 カズキは、巨大な右ストレートへの対処を迫られる。


「ぶっ飛んでばっかいられるか!」


 カズキは咄嗟に、エルドラーク戦で見せた、両足を硬質化させてその場に踏ん張る技術を繰り出す。

 瞬時に両足を硬質化し、地面に突き刺し、カザスタヌフの拳を受け止めようと試みる。


 が。


「甘いな」


 ニヤリと笑う、ガルカザン・カザスタヌフ。


 右の拳を瞬時に引っ込め、そのまま盛り上がった肩を突き出し、カズキへと突進してきたのだった。


「まず――」


 カザスタヌフの体当たりは、言わずもがな大質量である。

 しかも、かなり速度もついている。


 さらに、カズキが自らをその場に固定したせいで、一切その勢いと威力を“いなす”ことができないのだ。


「がっ……」



 ズゴオオォォォォ――



 カズキの短い悲鳴は、カザスタヌフの突進で起きた地鳴りにかき消される。


「カズキさんっ!」


「ルフィア、耐えて。決闘での他者の介入は、介入者に近しい者の敗北となるわ」


 潰されてしまったのではないか、という恐怖に駆られて叫んだルフィアを、アルアが制止する。


 固唾を飲み、見守ることしかできないルフィア。

 噛んだ唇の端に、血が滲んでいた。


「がはッ」


 高く舞った土埃が引くと、口から血反吐を零すカズキがいた。

 かなりのダメージを受けている。


「久しぶりだな……魂装手術カルマ・オペをしながら、戦うのは」


 自分の身体を丁寧に、しかし素早く検分し、魂力によって回復を試みていく。

 今のカズキにとっては、戦闘を継続しつつ魂装手術をすることも、容易になっていた。


「俺の体当たりを喰らって立ち上がるとは。カズキ、お前人間じゃねぇな」


 ふらりと立ち上がったカズキを見て、カザスタヌフは口角を上げた。

 その表情は小馬鹿にしているわけではなく、カズキのタフさを認めたようだった。


「さぁて、どんどんいこうぜ」


「……ああ、望むところだ」


 カズキは口元の血を手の甲で拭い、カザスタヌフへ突っ込んでいく。


 二人の目はギラギラと輝き、生気に満ち満ちていた。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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