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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第三章 魔族交流編

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089 会議室にて


「お前が“異界の勇者”ってわけか……そりゃ、ジプロニカとしちゃおもしろくないわな。こんなちんちくりんじゃよ」


 円卓を挟んだ反対側、カズキの正面に座るエルドラークは、肩を揺らして笑った。


 カズキの隣に座るルフィアは、カズキが笑われておもしろくないのか、ムスっとした表情を隠すつもりもない様子だった。


「まぁ、召喚されたばっかりの頃は、俺自身全然強くなかったけど……だからって、勝手に呼び寄せておいてあんな仕打ちをされちゃ、俺だって腹が立つ」


 カズキは素直に、当時の自分の感情を吐露した。

 自分の右手――すでに魂装カルマの右手を出していることが当たり前となっている――を、無意識に眺める。


「おーおー、その言い方だと、今は強いって言ってるように聞こえるが?」


「カズキさんは強いです! カズキさん以上に、魂力チャクラに愛されている人間はいません!!」


 挑発的なエルドラークの言葉に応えたのは、カズキではなくルフィアだった。

 食い気味にフォローされ、カズキは妙に気恥ずかしくなる。


「まぁ、ルタや『星の声を聞く民』の長にも鍛えてもらったし……そこそこだとは思いたい」


 頬をポリポリと掻きながら、カズキは照れ臭さを感じたまま言った。


「星の声を聞く民の長って、あのフシン・アヌザァイか?」


 カズキの言葉に反応を示したのは、エルドラークの隣に座るシャックだ。

 長い牙が覗く口元が驚きに歪んでいる。


魂力操作チャクラ・コントロールの精度なら世界一とされている、あのフシン・アヌザァイの薫陶くんとうを受けていたとは……キミも、つくづく侮れないな」


 シャックの言葉によって、魔族にまでフシンの名がとどろいていることがわかった。


 ルタにしてもフシンにしても、自らの師匠筋と言える人物たちが一角の者であると知り、カズキは妙に鼻が高くなるような感覚になった。


「あーそうそう。俺たち、そのフシンに言われてこっちの大陸に来たんだ。今のところの目的は、ルタの仲間を探そうってことなんだけど……」


 フシンの話が出たので、カズキは何気なく自分たちの目的を話したのだが――カズキの言葉で、エルドラークらの顔色が、一気に怪訝なものに変わる。


「……ドラゴン族は、絶滅した。こっちの大陸にだって、いやしねーよ」


 そっぽを向くかのように、エルドラークは突っぱねた。

 両側に座るシャックとアルアも、どこか沈痛な表情を浮かべて、唇を噛んでいる。


「でも、フシンさんがこっちの大陸に行くようにって、わたしたちを導いてくれたんです」


 ルフィアも必死に訴えかける。

 が、魔族の三人は目を逸らすように、沈黙を貫くだけだった。


 対面の三人の様子を見たカズキは、確信する。


 ――魔族とドラゴン族の間には、なにかあったのかもしれない。


「……わかった。なんにせよ、俺たちはこっちの大陸でやっていかなくちゃならない。ルタと旧知ってことだし、色々と助けてもらえるとありがたい」


 カズキは、核心を避けつつ、自分たちの願いを言った。


「ま、ルタの連れってわかった時点で、こっちもそのつもりさ。なにより、魔族は人間を毛嫌いしてるもんでな。お前をデーモニアの街中に放っちまうと、色々といらん問題が起こりそうでめんどくせーし」


「ありがとう。助かるよ」


 エルドラークの反応に、カズキは素直に礼を言う。


「んじゃ、一応……アレ、やっとくか。魔族の通過儀礼だしな」


 エルドラークはカズキの礼を受け取り、両側のシャックとアルアに目配せをした。

 目配せに合わせ、二人も頷きを返している。


「アレって?」


 先が読めないカズキが、何気なく質問する。


 と。


「ん、オレと決闘」


「……はぁ!?」


 告げられたのは、あまりに物騒な言葉だった。


 こうして、カズキとエルドラークの決闘が、急遽行われることとなった。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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