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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第二章 大陸横断編

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073 クーパ地下大洞窟② 一旦退避


 ルフィアの消耗により、一度ベースキャンプに戻ったカズキたち。

 スライムに魂力チャクラを吸われてしまったルフィアは、ルタに看病されつつ、テント内で安静にしている。


「ふむん。やっぱりこうなったね」


「まだまだ甘いよな、俺たちも」


 カズキは自分たちの油断を反省し、下唇を噛んだ。

 特訓して強くなったとは言え、魂力を吸い取るような敵への対処法は一切考えていなかった。


 魔物の生態系は未知なるものが多く、まだまだカズキにとっては経験不足を思い知らされている気がした。

 魂力の扱いに熟達したからと言って、この世界で完全に安全とは限らない――そんな風に考え、自分を戒めた。


「あのスライムはね、確かに厄介だ。ではカズキ、ここで問題。キミならあのスライム、どう対処する?」


 フシンが試すような口ぶりで、カズキへの問いを発した。


「んー……さっきは、魂力を大量に流し込んで破裂させたけど」


「一匹への対処としては間違いじゃない。ただ、何匹もに囲まれたとき、それだとどうなる?」


「それは結構……やばいかもな」


 数十匹の黒いスライムに囲まれた状況を想像して、カズキは背筋を震わせた。


 カズキの魂力の総量は確かに規格外であるが、何十体ものスライムに張りつかれ、その全てに対して破裂するまで魂力を流し込むとなると……さすがに、無事でいられる気がしなかった。


「さぁ、考えるんだよカズキ。あの魂力を吸うスライムへの対処法を」


「んなこと言われてもな……」


 カズキは腕組みし、頭を悩ませた。


 素直に考えるならば、身体を接触させずに遠距離攻撃で仕留める方法だ。

 ただその場合、ルタとルフィアには遠距離での攻撃方法がないため、カズキだけで戦闘を遂行していく必要が出てくる。


 確かにカズキのみであれば、四方へ魂装武器カルマ・ウェポンを伸ばすことで背後までカバーすることができるが、それでは二人と同行している意味がなくなってしまうし、二人が怒るのも目に見えていた。


「入る前にも言ったけど、あくまでもキミたちは、三人全員でこの『クーパ地下大洞窟』を攻略しなければならないんだよ。そうしなければ、三人の特訓にならないんだから」


 悩めるカズキに、フシンは念を押すように言った。


「なにかヒントをくれ。頼む」


 カズキは顔の前で手を合わせ、頼み込んだ。


「ふむん。素直なのはいいことだ。ここで思い出してほしいのは、魔物を倒したときの恩恵さ」


「恩恵?」


「うん。キミたちは以前、ここではないダーナの十三迷宮に潜ったことがあると言っていたよね? そこで、魔物を狩ったことがある、と」


「ああ。アン・グワダド地底湖遺跡だ」


 フシンの言葉に、カズキは短く応える。


「そこの魔物を倒すと、どんな恩恵があるか聞いていたかい?」


「確か、魂力が増加するとかって……あ」


「わかったかな?」


 カズキの口から漏れた声に、フシンはにやりと口角を上げる。


「そうだ、魂装で倒せれば魂力が回復するわけだから、ヤツに吸われてしまったとしても、すぐに倒して魂力を取り返せれば――」


「そう、戦い続けられるということさ」


 なんとか正解を導き出したカズキに、フシンはパチパチと拍手をしてくれた。


「ただ、ルフィアが斧槍ハルバードで攻撃したとき、いなされちまってたんだよな……」


 一つの問題が解けると、すぐに次の問題にぶち当たった。

 そう、魂装による攻撃で魂力を回復させていくことができるとしても、魂装によってスライムが撃破できなければ、回復のループは実現不可能なのだ。


「そこで、だ。カズキ、キミにだけできる、ちょっとした必殺技を教えてあげるよ」


「必殺技?」


 悪戯いたずらっ子のような笑みを口元に浮かべ、フシンは思わせぶりに言う。

 カズキはその怪しさに思わず顔をしかめる。


「ちょっと、耳を貸して」


「お、おう」


 フシンが、カズキの耳元でささやく。

 少しこそばゆかったが、カズキは聞き漏らすまいと集中した。


「――ってこと。どう、できそう?」


「……まあ、やってみるしかないさ」


 フシンの言葉に、カズキは開き直ったような表情で応える。


「うん、いい返事だ。いよいよカズキの強さも、次の段階に入るというわけさ。頑張りな」


 目元を黒い布で隠したフシンが、口元だけを満面の笑みにして、励ましてくれた。

 カズキは身体の芯から、力が湧き上がってくるような感覚があった。

 

 次は見てろよ――カズキの顔にも、自然と笑みが浮かんでいた。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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