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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第四章 ハイデュテッド侵攻編

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176 突然の別れ

「スカしておれるのも――」「今だけですよ!」


 ルタとルフィアが叫ぶと同時に、地を蹴った。

 その阿吽の呼吸とも呼べる連携攻撃には、カズキすら目で追うことがやっとだった。


 一気に岩場を駆け上がり、ディウレリス・ディウメンジャーの喉元めがけて突き進む。


「ディウメンジャー様をお守りしろっ!」


 少し遅れて反応したウムプリが、危機を察知して強く言う。

 だが、すでに加速しきっているルタとルフィアを制することはできない。


 瞬く間に、ルタとルフィアがディウメンジャーの懐へ接敵した。


「いい、ウムプリ。これだけレベルの高い女の子には、オレ直々に触れてあげないとね」


 動こうと腰を低くしたウムプリを、ディウメンジャーが制止した。

 その隙に、ルタとルフィアが魂装武器を煌めかせる。


「調子に乗るでないぞ、小童!」

「わたしはわたしを物扱いする人は嫌いです!」


 二人の魂装の刃が、ディウメンジャーの喉元に届かんとした瞬間――


「「……っ!?」」


 ルタとルフィアが、止まった。


 なぜかルタとルフィアの身体が硬直し、ディウメンジャーの眼前で停止した。

 まさか、魂装真名カルマ・ヴェーダの能力か?――カズキは咄嗟に頭をフル回転させ、状況を把握しようと努めた。


「はい、もーらい」

「かはっ」「あ、うっ」


 カズキを意に介する様子もなく、ディウレリス・ディウメンジャーはなにやら手を舞いのように動かしはじめた。

 そしてその最後に、ルタとルフィアの視界を覆うように掌を拡げた。


 途端――二人の身体が、だらりと脱力した。


「ルタ! ルフィア!」


 異常事態を察知し、カズキは足に力を込め、ディウメンジャーを攻撃せんとした。

 だが。


「あなたの相手は、この私です」

「っ!?」


 既に動いていたウムプリにより瞬時に背後をとられ、後頭部に殴打をくらう。

 カズキの視界がぐわりと揺れ、膝を着いてしまう。


「く、くそ……!」


 魂力が読めてさえいれば、こんな打撃を直撃クリティカルされることなどなかったのに――カズキの頭の中が、ある種のもどかしさで一杯になる。


「こやつ、いかがしましょう?」


「んー、労働力も足りてるしな。魂装道具で捨てておいて」


「かしこまりました」


「ま、待て……!」


 カズキは朦朧とする意識の中、必死に抵抗しようとする。しかし、身体は思うように動かず、頭がずしりと重たいままだ。


「ルタ……ルフィア……今、助け……!」


「鏡に投げ入れろ!」


 ウムプリの掛け声でどこからともなく現れた女性たちによって、カズキは鏡の魂装道具へと放り投げられた。


 それはまさに、ジプロニカ王によってゴミ扱いされたときに酷似していた。


 カズキが伸ばした手は、誰に届くこともなかった。




    †    †    †    †




「……ズキ、カズキ!」


 呼びかける声がする。

 どこかで聞いたことのある、懐かしい声だ。


「ルタ! ルフィア!!」


 大切な人を思い出し、カズキは跳ね起きる。

 二人を、助けなければ――しかし。


 目の前にいたのは、ルタとルフィアではなかった。

 ――兎耳の亜人、ペネロペだった。


「ペ、ペネロペ!? どうしてここに!?」


「それはこっちの台詞だ、カズキ・トウワ。なぜこんなところにいる?」


 言われて、カズキはようやく自分に起こったことを思い出す。状況を把握するため、改めて周囲を見渡した。


 そこは以前、ペネロペと共に修業した『アン・グワダド地底湖遺跡』の入り口だった。


 どうやら、魂装道具によってここまで飛ばされてしまったようだった。


「くそ……! ルタ、ルフィア……っ!!」


 水音が響いていた遺跡の門に、カズキの嘆きが空しく響いた。



貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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