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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第四章 ハイデュテッド侵攻編

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173 クータスタ島への道 ヴェルスヴェル大迷宮③

コミカライズ版が本日(2023 12/11)よりピッコマ様で配信開始です!!

https://piccoma.com/web/product/153625?etype=volume

コミカライズ版も何卒、よろしくお願いいたします!!


「みんな! 警戒をっ!!」

「言われなくてもわかっておる!!」「はいっ!」


 視界から女戦士の姿が消えた瞬間、全員が身体を強張らせる。


 全神経を尖らせて、カズキは周囲の状況に意識を凝らす。

 これまでは魂力チャクラを読むことで気配や心理を洞察してきたが、魂力を感じ取ることがほぼできなくなった現状では、五感を研ぎ澄ませる以外に対処する術はなかった。


「…………」


 各自の息遣いが空間に響く中、カズキは自分のこめかみ辺りを冷や汗が流れているのを知覚した。こんな緊張感は久しぶりだ――と、意識に一瞬の隙ができた瞬間。


「そこっ!」

「ッ!?」


 カズキの視覚による認知を遥かに凌駕した速度で、黒髪の女戦士は文様の女性へ一撃入れ、気絶させていた。

 そしてすぐ女性を肩に担ぐと、カズキらには一瞥もくれることなく駆けだす。


「に、逃がすか!」

「うむ!」「は、はい!」


 状況を見て取ったカズキ達は、弾かれるように身支度を整え、女戦士の背を追う。

 しかしその背中に近づくどころか、どんどん距離を離されてしまう。


「どうして、追い付けない……?」

「向こうは、人一人担いでおるというのに……っ!」

「なんて速度……!」


 それぞれ呟いた言葉が、女戦士の異常さを端的に表していた。

 圧倒的とも言えるその速度・脚力に、カズキは少なくない敗北感を抱いた。


 いよいよ、迷宮内の暗闇にその背が消えかかったタイミングで、女戦士がこちらを振り向いた。


 ここぞとばかりに足に力を込め、距離を縮めるために全速力で駆けるカズキ、ルタ、ルフィアの三人。


「……カタラナを担いでいるとは言え、ここまで私に食らい付いてくるとは、只者ではありませんね。実力を認めて、こちらも最善を尽くして対処いたしましょう」


 何やら言葉を紡ぎ、遺跡の壁に設えられていた宝玉――何らかの魂装道具だろう――に触れる女戦士。


 その途端。


 ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ


 もうすぐで追い付ける――そう思い駆けていたカズキ達の足元を、激しい振動が襲った。


「……っ!? じ、地震か?!」

「わ、わからぬっ!」

「まさか、あれがスイッチになって……!?」


 それぞれが振動によりその場に立ち止まる中、ルフィアが女戦士の行動に合わせて地震がはじまったことを見抜く。

 カズキはなんとか体勢を整えようと努めるが、足場が揺れてままならない。


「この遺跡の守護者ガーディアンです。私の知る限り、数百年ぶりの起動です。これを起動させたということは大変に名誉なことですので、どうぞ誇ってください――あの世で、ですが」


 不吉な言葉を残し、黒髪の女戦士は文様の女性と共に、遺跡の闇へと消えていった。大きな揺れの中でも、彼女の姿勢が崩れることはなく、その圧倒的な身体バランスを見せつけるようだった。


「ま、待て!」


 カズキは揺れから片膝を着いてしまうが、抵抗するように片手を伸ばした。

 しかし闇へと消えた女戦士たちの背中は、そのあとすぐに起こった現象によってかき消される。


「カズキ、くるぞ!!」

「もの凄い魂力の塊が、この空間に集まっています!!」

「な、なんだって!?」


 ルタとルフィアの鬼気迫る声を受け、カズキは周囲へ素早く視線を走らせる。

 見ると、遺跡の壁――巨石が折り重なるように積み上げられている――の隙間から、黒い泥濘でいねいのようなぬめりが、漏れるように這い出してきていた。


 漆黒の“ぬめり”は、意思を持つかのように一ヵ所へと集約していき、巨大な影のように“黒い一塊”へと相成った。


 その見た目は、以前『アングワダド地底湖遺跡』で遭遇した、魂力を喰らう化物――マウナ・クーパに似ていた。


「じゃが、あのときのとは大きさが段違いじゃぞ! 見ろ!!」


 カズキの思考が進む間も、絶えず黒いぬめりは集まり続け――巨大な魔人のようにそそり立っていた。


「これ全部が……あのマウナ・クーパの性質を持ってるとしたら……」

「わ、わたしたちの魂力じゃ、到底……」

「破裂なぞ、させられんの」


 三人の呟きが、この状況の絶望感を端的に表していた。


「グギュリュルルァァァァアアアア!!」


 化物の奇声が、遺跡内の静謐せいひつな空気を切り裂く。

 広大な遺跡の空間内に、おどろおどろしい殺気が満ち満ちていた。


 カズキは腰を落とし、臨戦態勢を取った。



貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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