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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第四章 ハイデュテッド侵攻編

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142 対ダンストップ・オールドマン&アビゲイル・ツィーゲル①


 乾いた荒野に、三人分の魂力チャクラが迸る。

 カズキは先ほどまでの戸惑いを胸の奥に仕舞い込み、目の前にある戦闘状況へと意識を集中させた。


「アビゲイルッ! 貴様は神王様をお連れして離脱しろッ! ここは私が引き受けるッ!!」


 長い黒髪の男、ダンストップ・オールドマンが苛烈に叫ぶ。彼の手にはショテルと呼ばれる、大きく湾曲した刀剣が握られていた。

 あれがヤツの魂装武器カルマ・ウェポンか――カズキは体内の魂力を練り上げながら、敵を分析する。


「御意! わたくしは神王様の御身を最優先に動く!!」


 オールドマンの指示に頷き、魔女のようなとんがり帽を頭から取りながら、横たわるハイディーンの方へとツィーゲルが疾駆する。

 狙いは言うまでもなく、ハイデュテッドの神王を保護することだ。


「そうはさせるかっ」


 しかしカズキはすかさず、両手から魂力を地面へ向けて放出し、ツィーゲルの行く手を阻むように、岩壁を出現させる。フシンから教わった魂力による地形操作術だ。

 期せずして回ってきた、ハイディーンを討つための最大のチャンス。それを逃してなるものか。カズキはそんな想いを抱きながら魂力を操っていた。


「邪魔ァァァ!!」


「な!?」


 しかし、その必死さを上回るような裂帛の気合いと共に、ツィーゲルは岩壁へ向けて突進する。無謀とも思えるその行動に、カズキは一瞬呆気に取られてしまう。


 次の瞬間。


 ツィーゲルが手にしていた独特なとんがり帽子が、流し込まれた魂力によって瞬時に変容する。


「突き破れぇぇ、我が雨傘よぉぉ!!」


 そう、ツィーゲルの魂装武具カルマ・アームズは、頭にかぶっていたとんがり帽子それ自体だった。

 尖った形状の帽子が、まるで騎槍ランスのような――いや、正確には長大な、閉じた雨傘のような形状へと変わったのだった。


 ツィーゲルの傘が、カズキが出現させた岩壁を悠々と突き破る。突進力に特化したタイプか――カズキは次の行動へと移りながら、ツィーゲルの戦闘スタイルを予測する。


「だったら……ぅおっ!?」


「この私を忘れてくれるなよ、神に盾突く不届き者めがっ!」


 一歩踏み込みツィーゲルを迎撃しようとしたカズキの胸元へ、オールドマンのショテルの先端が襲い掛かる。カズキは瞬時に身体を捻り、寸でのところで切っ先を躱す。


「甘い!」


 初撃を凌げたと思ったカズキだったが、オールドマンのショテルは蠢く蛇のようにその刃を煌かせ、肉を切り裂かんと追従してくる。三日月のような歪曲部分が、カズキの胸元を抉らんと襲い掛かる。


「う、おッ」


 カズキは腰を捻ったような体勢からさらに、仰向けに寝転がるように身体を地へ放る。その体勢から素早くバク転し、次の動きへと繋げる。


「まだ終わらないぞ!」


 だが、オールドマンはさらなら追撃を仕掛けてくる。着地したカズキの腹を狙い、ショテルでの連続刺突攻撃を繰り出す。

 カズキは魂装カルマ義眼ぎがんである左眼を駆使し、尋常ならざる反射神経で刺突を躱す。


 無傷でオールドマンの猛攻を凌ぐカズキだが、凌ぎ続けるその“時間”が致命的となる。


「アビゲイル! 飛べ!!」


 目にも止まらぬ速度でショテルでの突きを繰り返しているオールドマンが叫ぶ。


「わかっている!」


 オールドマンの叫びに、ツィーゲルも感情的に応じる。

 ツィーゲルは極彩色ごくさいしきのローブの懐から、結晶型の魂装道具カルマ・サーダンを取り出した。


 退避する気か――カズキは相手の意図を悟り、叫ぶ。


「待てッ!!」


 カズキは喉がはち切れんばかりの大声を張り上げる。

 が。


「お前はここに釘付けになっていろッ!!」


「く……!」


 オールドマンの絶叫が、カズキの声を上書きする。怒りをそのまま刃にしたようなショテルの連撃が、カズキに一切の暇を与えず襲い掛かる。

 全身に漲らせた魂力を躍動させ、カズキは自らの身体能力、反射神経を極限まで高める。そうすることで、全ての攻撃をかわし切る。


 だが、攻撃は終わらない。


「まだまだッ! 喰らえ、《ポイズンズフェンス》!!」


「ッ!?」


 ショテルを正面に構え直したオールドマンが、空気を切り裂くように叫ぶ。

 声の残響が引かぬ間に、刃から帯状の気体が溢れ出た。


 カズキは腰を低くし、迎撃態勢を整えた。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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