表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第四章 ハイデュテッド侵攻編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

142/177

141 何が起こった?


 未だ燃え滾る炎がそこかしこに見られる荒野に、カズキ――今はそう呼んでいいのかもわからないが――は一人立っていた。

 ハイディーンを沈黙させるほどの変容を見せたカズキだったが、誰にもその変化の理由はわからなかった。


「さて、次は彼女か」


 いつもとは少し違う声音で、カズキは言う。

 おもむろに歩き出し、手近な炎の一つに手をかざすと、一瞬で炎を粒子状にして消し去ってしまう。


 ひとしきり消火し、最後に残った一塊の炎へと歩むと、カズキは両手を伸ばして慈しむように、燃え盛る炎をじわりと解かしていった。


「ルタ、戻っておいで」


 言葉が呟かれたのと同時、炎が全て消え去る。そして現れたのは――《世界火葬ホーマ・プラマーナ》によって炎そのものと化していたルタだった。目を閉じ、生まれたままの姿で蹲るように横たわっていた。


 カズキは一体、どうやってルタを元の姿に戻したのか。それもまた誰も知るよしのないことだった。


「風邪を引くよ」


 惜しげもなく晒されているルタの白い肌に、カズキは自分の上着をかける。ルタは目を閉じたまま、寝返りを打つように身じろぎした。


「僕も、そろそろかな」


 言葉を漏らしたあと、カズキは目を閉じ、一息大きく吐いた。それに合わせて世界が穏やかに呼吸するように、静寂が周囲を包んでいく。


 …………………。


 …………。


 ……。


「……今の、なんだったんだ」


 ふと呟かれた台詞は、カズキのものだ。

 目には戸惑いの色が浮かび、つい今し方まで放っていた泰然としたオーラはない。普段通りのカズキに戻ったようだった。


 カズキは頭を回し、周囲を確認する。

 世界火葬ホーマ・プラマーナによって炎のごくと化していた荒野は、今は乾いた風に晒されているだけだ。世界を焼き尽くすまで消えないと言われていた世界火葬の炎が、どうして消え去ったのか。カズキの頭の中には、そんな疑問が浮かんでいた。


「……ルタ」


 目線を足元に向けると、ルタがすーすーと寝息を立てていた。先程まで自分が着ていたはずの上着が、彼女の身体にはかけられている。なぜこんな状況になったのかは判然としないが、ひとまずルタが戻ってきてくれたことは一安心だった。


「……っ!」


 しかしここでカズキは、もう一つの重大な事実を思い出す。

 ハイレザー・ハイディーンはどうなった?


 視線を回すと、なんとハイディーンが意識を失い、無残にも倒れ伏していた。

 プライドの権化のような存在であるハイディーンを、あんな状態にまで追い込まれるはずが――カズキはそう考えてから、ふとこめかみの辺りが痛むのを感じた。


 朧気にだが、カズキ自身が見ていたイメージがあった。

 その中で、微かにハイディーンを凌駕する瞬間があったような……カズキは根拠不明の自らの思考を意外に感じながら、頭痛を打ち消すようにかぶりを振った。


「ハイレザー様っ!!」


 と。

 こめかみの痛みが和らいだタイミングで聞こえてきたのは、忘れることのできない大会議室で聞いた声――ハイデュテッド王の近衛兵長にして軍事元帥代行、ダンストップ・オールドマンのものだった。


「神王様が、地に伏せておられる……貴様かあぁぁっ!?」


 続けて聞こえてきたのは、ハイディーンの秘書官、宰相さいしょう代行であるアビゲイル・ツィーゲルの、ヒステリックな金切り声だった。

 二人の様子を見るに、ハイディーンはどうやら今回も、単独で先行してきたらしかった。


 オールドマンとツィーゲルの魂力が揺れ動いたのを皮切りに――カズキも全身に魂力を充溢させた。


「「「魂装カルマ――アグニ!」」」


 三者三様の魂装の詠唱が、重なった。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ