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無能勇者の復讐譚 ~異世界で捨てられた少年は反逆を誓う~  作者: 葵 咲九
第四章 ハイデュテッド侵攻編

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132 ルタの魂装武器


魂装カルマアグニ


 静かに、だが厳かに、ルタが呟く。

 カズキは魂装カルマの義眼である左眼を開放するまでもなく、確かに、ルタから放出される魂力チャクラが大気を揺らしているのがわかった。


 身体中が、ヒリヒリと総毛立つ。


「……っ!」


 ルタの金色の髪が舞い上がり、四方へと血管のように伸びる。

 扇のような形状でざわざわと波立つ金髪は、まるでルタが羽を広げたかのように見えた。


 そして――手元に、黄金の塊が形成されていく。

 ルタの魂装武器カルマ・ウェポンが、その姿を現した。


 カズキはその形状に、思わず息を飲む。


 白い細腕に握られた武器は、言うなれば“双刃刀そうじんとう”とでも呼ぶべる、柄の両端に刃のある特殊な刀剣だった。


 互いに対称な形の鋭い刃が、対を成すように伸びている。両刃の長さを合わせると、ルタの身長ほどにもなる。薙刀を改良した長巻を、さらに両刃仕様にしたような形だ。


 さらにルタは、その双刃刀を――両手に現出させていた。


「カズキ、わしもここまでコケにされて黙ってはおれぬのでな」


 両手に装備した双刃刀を器用に振り回しながら、ルタは腰を低くする。

 高められた魂力の脈動が、威圧するかのようにカズキの肌を粟立たせた。


「わしもこうなったら、自己鍛錬のため、限界を超えることに挑戦する。わしはカズキ、貴様に魂力を使わせるために攻撃を仕掛けていくぞ。魂力との対話なぞ、していられぬほどの激しい攻撃をな」


「な、なんでだよ。それじゃ俺が、魂装真名カルマ・ヴェーダを習得することが――」


「うぬが真名を習得するより、わしが強くなる方が万事上手くいくかもしれんじゃろ?」


「……はは」


 ルタの挑発的な台詞に、カズキは思わず笑みをこぼす。


 生身で、あんな物騒な魂装を相手にしなきゃいけないのかよ――カズキは半ば自嘲的な苦笑いを浮かべる。こめかみの辺りを静かに、冷や汗が流れ落ちた。


「互いに命を懸けて、強くなろうぞ、カズキ!!」


「っ!」


 叫び、金色の弾丸となって突進してくるルタ。

 カズキは自己防衛としての反応から、思わず魂力が溢れ出しそうになる。


 全身全霊で、あの攻撃から生き残る。

 カズキは自らの全細胞に言い聞かせるように、再び集中を研ぎ澄ませた。


「リャアアァァァァ!!」


 シン、シィンとルタの双刃刀が空気を裂いて鳴く。

 初撃は、なんとか躱せた。

 いや、躱したというよりは……逃げた。


 カズキは数歩、後退っていた。


「さすがに恐怖しておるな、カズキ」


「当たり前だろ。そんな得物出されちゃ……生身はたまんねーよ」


 足を止めて呟かれたルタの言葉に、カズキは他意なく応えたつもりだった……の、だが。


「ぬふふ、そんな軽口を叩けるのなら、まだいけるのう!」


「そ、そんなつもりじゃ――」


 弾き出されるように、再度突進してくるルタ。目にも止まらぬ速さで繰り出される四重の刃に、カズキは胸の奥が底冷えする。

 今、魂力を使うわけにはいかないカズキが攻撃を躱すには、究極的に集中を研ぎ澄ませ、相手の攻撃時の身体反応に対し、自らも超速の反射・反応で紙一重で回避する、という方法しかなかった。


 しかし、今のルタの攻撃は先程までと違い、魂装によって出現した魂装武器を扱っている。それにより攻撃範囲や回数、リズムまでもがさらに複雑で不規則になっている。今までの攻撃で紙一重だったのだから、リーチや範囲が増大すれば、躱し切ることは限りなく不可能に近づいていく。


 追い込まれたカズキは、武器を操る大本であるルタの身体が表す反応を見切り、なんとか刃の攻撃範囲外に身体を逃がしていくことしかできなかった。


「はぁ……はぁ……」


 先に肩で息をし始めたのは、カズキの方だった。

 ルタは魂装による魂力充溢で、むしろ身体機能も充実している様子だった。


「カズキ、すまんのう。お前が真名に目覚めるより先に――わしがこの手で、ハイレザー・ハイディーンを打倒する!」


 強い決意を滲ませ、ルタは地を割らんばかりに踏み込んだ。カズキへ必殺の斬撃を浴びせようと、両腕を華麗に可動させる。


 が、しかし……ルタの双刃刀が、カズキに届くことはなかった。

 代わりに――



「私を呼んだか?」



 ――今し方、最上級の憎悪を向けた相手、ハイレザー・ハイディーンの長いサーベルが、ルタの腹部を貫いていた。


「う……ぐっ」


「う、うわあああああああああああああああ!!!!」


 カズキの悲鳴が、辺り一面を震わせた。

 時が凍り付いたような寒気が、その全身にまとわりついていた。




貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。

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