111 王の視点② 王位へ向けて
なにをすべきかはわかっていた。
自分たちが争いにより生活を蹂躙された経験から、人を支配するためには『権力』と『恐怖』が必要であるということも。
私は手始めに、村から最寄りの国家へと出向き、権力へと繋がる糸口を探した。
時を止める力を駆使すれば、関所の通過は容易く、身なりを整えるのにもほとんど苦労はしなかった。関所で賭け事に興じている無能な兵士どもから、衣服や武具を奪えばいいだけの話だ。まだ幼かった私の身体には、少し大きさが合わなかったが。
その国は、大した規模を持たない小国家だった。
だが領主が賢王として知られ、人望を一心に集めていると街人は誇らしげに語っていた。
賢王? 人間が、賢い?
人々の話を聞けば聞くほど、私は笑いを堪えるのが段々と辛くなっていった。
人間の上に立つ人間が、賢いわけがない。
人は人でしかなく、そこに上も下も、優劣も存在していない。
にもかかわらず賢しらに自らの出自なのか能力なのか持ちうる富なのか、それらの低能な者ほど高価と見紛うくだらない事物を並べ立て、『賢いのだ』と主張する。
それは賢いのではなく、自らの愚劣を誇示するだけの極めて程度の低い行為だ。
だが、だからこそ私の踏み台とするには打ってつけと言えた。
神が高みへと昇り詰めるための、足がかりだ。
まずは、この国の王位を我が物とする。
私は、小国家の王となるべく、行動を開始した。
国家の名は――ハイデュテッドという、無名に等しい国だった。
† † † †
王位を簒奪するための行動と並行し、私は自らの能力の強化を行った。
私の能力は端的に言えば『時を操る』能力だ。ただまだ、完全に思い通りに操れるほど熟達しておらず、時を停止させるのに手間取ることが多かった。
このときに確認できていたのは主に、時を止める、時を動かすという至極シンプルな二つの能力だった。同時に、視野の中の時間のみを操れるという事実だ。
ゆえに私がこの力を駆使し、世界を掌握するためには、高所からの視野を確保する必要があると感じていた。これも、高層建築である城を持てる、王になろうと考えた所以だった。
私のこの力は、世間では『魂装真名』と呼称されていることも、このときに知った。
この力を突き詰めていくと、剣や盾などの武具として顕現し、その武具に宿る力として扱えるようになるということも学んだ。
だが、私は武具の形に至るまでもなく、自らの身体に異能が宿っていた。
しかし、能力の強化を試みていく過程で、実際に武具として顕現するという体験を得た。
その能力自体は『魂装』と呼ばれ、それによって顕現した武具は『魂装武具』と形容されていた。
私のそれは『剣』と『盾』であった。
当時、周囲に侍らせていた者どもは、この対となった魂装を見て「神童だ」と騒ぎ立てた。
神童――確かに、当時の幼き私を表現するには、これ以上適切な言葉はないだろう。
武具が顕現したことにより、私の真名の扱いは容易になった。
剣で切りつけることにより、時が止まり、盾で空間を撫ぜるようにすると、時が動き出すのだ。
私はその力をさらに高めるため、日夜修練を重ねた。
時には、自分以外の時を止め、長大な一日を過ごすことすらもあった。
そうする中で、不可逆の時の中を漫然と生きる人々を置き去りにし、自分だけが上位の存在として、研ぎ澄まされ、成熟していく感覚があった。
人類よ、しばし待て。
無知蒙昧な人類を導くという大義のため、私は日々力を蓄えていった。
貴重なお時間をこの作品に使ってくださり、ありがとうございます。




