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やけど  作者: 佐藤そら
4/10

孤独

 瑠璃が目を覚ますと、何もない真っ白な空間。

 今日もジョーンが瑠璃のもとへやって来る。

 

「ジョーン!」

 

 ジョーンはいつもと変わらず、嬉しそうだった。

 

「わたしの職場の人が、ジョーンのこと良いピエロだねって褒めてたよ」

 

 ジョーンは首をかしげる。

 

「ジョーン、空って飛べる?」

 

 ジョーンは、瑠璃の手を握る。

 すると、ジョーンと瑠璃の体は宙に浮いた。

 

「わっ! すごい!」

 

 瑠璃とジョーンは、空を飛びながら街を見渡す。

 

「わー! 地図みたい!」

 

 ジョーンは何かを指差した。

 指差す方向には、宮内と暮らす家がある。

 

「あっ、わたしの家だ!」

 

 しばらく飛んでいると、とある施設が見えてくる。

 

「あれは、わたしが育った施設……」

 

 見晴らしのいい屋上に瑠璃とジョーンは降り立った。

 屋上からは、『希望の子守唄』という看板が見える。

 

「あそこが、わたしのふるさとなの」

 

 ジョーンは静かに瑠璃を見つめていた。

 

「いつか、お父さんとお母さんが、来てくれるって信じてたんだ……」

 

 ジョーンは首をかしげる。

 

「ねぇ、お父さんとお母さんには会える?」

 

 ジョーンは驚いた様子だった。

 

「これは夢の中なんだよね。だったら、会えるよね?」

 

 ジョーンは悲しい顔で瑠璃を見つめる。

 

「ねぇ、わたしのお父さんとお母さんに会わせて!」

 

 頭を抱え、ジョーンは困り果て、その場にしゃがみ込んでしまった。

 

「どうして? だってこれは夢なんだよ? わたしの見ている夢なんだよ?」

 

 ジョーンは両耳をふさいだ。

 

「ジョーン……」

 

 ×  ×  ×

 

 目を覚ますと、辺りはまだ真っ暗だった。

 そして、わたしは泣いている。

 夜はまだ、長いようだ。

 わたしの腕には、“やけど”の跡が残っている。

 今も、あの日の火事を忘れたくないというように。

 

 

 花屋『DESTINY』で瑠璃は花の手入れをしていた。

 明美が瑠璃に愚痴をこぼした。

 

「あーあ。絶対浮気されてるー」

 

「えっ?」

 

「幸せな瑠璃ちゃんにこんな話ごめんね」

 

「いや……」

 

「他の人にするならするで、付き合う前に別れろって話。わたしをキープしつつ他の女にもって、男ってずるいと思わない?」

 

「彼氏さんには、聞いたんですか?」

 

 明美は首を横に振る。

 

「怖くて聞けないよ。もうわたしも30だっていうのに……。結局、惚れた方の負けってことね」

 

「……」

 

「そうだ、瑠璃ちゃんは、空飛べたの?」

 

「えっ……あぁ、はい」

 

「そっか。わたしも明晰夢でも見て、カッコイイ彼氏と付き合いたいわ」

 

 あれが明晰夢なら、思い通りになるのではないだろうか。

 どうして……

 良いピエロなら叶えてくれたっていいのに。

 夢なら自由なはずなのに。

 

 ×  ×  ×

 

 瑠璃が目を覚ますと、何もない真っ白な空間。

 ジョーンが膝を抱えてしょんぼりしている。

 瑠璃はジョーンの姿を見つけた。

 

「ジョーン……」

 

 瑠璃はジョーンのもとへ駆け寄った。

 

「ごめんね、ジョーン。困らせちゃったよね?」

 

 ジョーンは、困り顔で瑠璃を見つめた。

 

「夢ってさ、現実世界じゃ、ないじゃない? だから、お父さんやお母さんに会えるのかなって思ったの」

 

 ジョーンは真下を『ここ』と言うように指差した。

 

「ジョーンにとっては、ここが生きている世界ってこと?」

 

 ジョーンは小刻みに頷く。

 

「そっか。……ジョーンは孤独? ひとりぼっちなの?」

 

 ジョーンは瑠璃を指差す。

 

「瑠璃がいる?」

 

 ジョーンは嬉しそうに瑠璃の周りをスキップした。

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