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僕たちの英雄伝説  作者: 鬼龍院 天音
1年生編 第二章
31/40

奥の手

見えなかった。

アークの剣を振るった瞬間が。

気づいたらアークは鞘から剣を抜いていた。

気づいたらラースは真っ二つになっていた。


「貴様、何をした! 」


「うるせぇな...黙ってろ、今すぐ斬り殺してやるからよ。」


アークは覇気のこもった声で禍々しくも恐ろしいほどに静かな殺意をラースに向けた。

その殺意は仲間であるレミでさえ戦慄させられた。


アークの今のオーラはドラゴンの時と違って禍々しいけど、どこか静かだ。

でも、明確な殺意を持ったオーラだ。

ラースを本気で殺すつもりだ。


「捕らえるのやめだ...ラース、お前みたいなクソ野郎は殺してるやるよ。」


そう言うと同時にアークは剣の柄を握った。


「まさか、これが私の全てだと勘違いしているのではあるまいな。私はまだ完全にモンスターと融合してはいないぞ。

完全に融合すれば貴様など一瞬で跡形もなく...」


ラースが言い切る前にアークは剣を振るった。

斬撃がラースの顔を掠った。


「お前の話は聞き飽きたと言ったはずだ。」


「そうか、ならば今すぐ殺してくれるわ!」


ラースは様々な属性のエネルギー弾を周りに出した。

さらに光属性と雷属性のエネルギーを纏った。


「貴様はスピードに自信があるようだがこちらも光と雷の力を利用して加速すれば貴様のスピードなど容易く越えられるわ!」


ラースは雷と光の力を使って本来のスピードをさらに加速させアークに突っ込んだ。


「粉々に粉砕してくれるわ!」


アークの体よりも一回り巨大な拳がアークに襲いかかる。


その刹那、ラースの右腕はまたも斬り落とされた。


「バカな、私の最大スピードだぞ。」


また、アークが剣を振るう瞬間が見えなかった。

あの瞬間アークの腕から剣までが消えたように見えた。

ラースのスピードは確かに速い。

私が今できるフルパワーの身体強化と同じ、いやそれ以上の速さだわ。

でも、それ以上にアークのスピードの方が上だわ。


「おのれぇぇぇ!」


ラースはアークを捕まえようと飛びかかる。

だが、その刹那アークは飛んだ。


「空中では避けきれないぞ。」


ラースは斬られた右腕を再生させ両腕に魔力を凝縮させた。


「君のお得意の魔力のエネルギー砲だよ。喰らうがいい!」


まずい、さすがのアークもあれを食らえば致命傷だ。

私が何とかしないと!


アークを助けようと氷の大魔法を放とおうとするレミ。


だが、その瞬間、アークは剣を鞘に収めた。

そして、右手で剣の柄を握り、左手で鞘を掴み、構えた。


「今更、斬撃を放とうが私の魔力に勝てる訳がなかろうが!」


ラースは怒りに任せて大量の魔力を使ったエネルギー砲を放った。それと同時にアークは剣を鞘から勢いよく抜き、剣を振るった。

そして、刀に纏わせていた自分の魔力を斬撃として放った。


ラースの魔力とアークの魔力が衝突した。

巨大な爆発と轟音が響いた。


「私の魔力と互角だと。」


アークは地面に着地した。


「次はこっちから攻めるぞ。」


アークは片足立ちで二三回軽く飛び三回目の着地の瞬間強く地面を蹴りラースの方に向かって飛び込んだ。

そして、一瞬でラースの懐に入った。


「バカな!」


アークは剣を振るいラースの胸部を斬りつけた。


「グハッ!」


ラースはアークから距離を取った。


(なんという速さだ...見えなかったぞ。

あれがアークのスピードだと言うのか。

身体強化のオーラが感じない。

まさか、身体強化無しであのスピードなのか。

いや、有り得ない!そんなことは有り得ない!)


「言ったはずだラース...斬り殺してやると。」


アークの殺意に戦慄するラース。


「舐めるなよ、クソガキがぁ...」


ラースはアークに攻撃を仕掛けようとしたが、既にアークはラースの懐に入っていた。

そして、アークはラースの両腕を斬り落とした。


「逃がさんぞ!」


ラースは一瞬で両腕を再生させ、アークを捕まえようとする。

だが、アークは地面を強く蹴り、後ろに下がって回避した。

ラースにはアークが消えたように見えた。


「なるほど、そういう事か。」


ラースは何かに気づいたかのように呟いた。


「貴様、足のつま先だけに身体強化をしているな。」


「それがどうかしたか?」


「やはりか、だから身体強化のオーラが感じにくかったのか。つま先だけで地面を蹴り移動する。

これは無駄な魔力の消費を防ぐためにやる応用だ。」


身体強化は体のどこでも自由に強化することができる。

腕、足、または全体強化。

基本的はこの三つだ。

だが、上手く使いこなせる者は指だけを強化することや首や頭だけを強化するなど無駄な魔力の消費を防ぐための器用な使い方もできる。


「だが、貴様にはそんなことは必要ない。

あれだけの莫大な魔力があればつま先だけなどのふざけた真似はしない。」


(そして、もう一つ不可解なことがある。

それは奴が腕を強化してないことだ。

身体強化無しでのあのスピードは異常だ。

一体どうやったと言うのだ?)


「つま先だけの強化には意味がある。

お前には俺が消えたように見えただろ。

それは俺がお前にある程度、距離を縮めてから地面に着地する瞬間につま先を強化し地面を蹴った。

こうすることで爆発的な超スピードを出していたのさ。」


「そして、貴様は私の懐に入っていたと。」


「この技は普通に足の身体強化でも出来ることだ。

俺がつま先だけ強化した理由は俺が身体強化無しであのスピードを出していたと錯覚させるためだ。」


「剣を振る瞬間も同じことをしていたのか。」


「そうだ、お前には俺が剣を振るう瞬間が見えてなかっただろ。 全てはお前を混乱させるためだ。

無駄に頭を働かせていたからまともに動けなかっただろ?」


ラースは唇を強く噛みイラついた顔をした。


「小賢しい真似を...この私を舐めるなよ!」


ラースは怒鳴り声で吼えた。ラースは再び攻撃の態勢に入った。


「安心しろ...」


ラースはアークの発言を聞いて目つきを鋭くした。


「今から身体強化レベル4を全身にする...覚悟しろ。」


アークがそう言うと同時にラースとレミは強烈なオーラを感じ取った。


「これがアークの身体強化レベル4。」


「恐ろしいオーラだ。感じるぞ貴様の強さを。

だが、その程度で意気がるなよ。私はもう少しで完全融合する。 そうなれば、私は...」


ラースが言い終わる前にアークはさっきよりも何倍もの速さでラースの懐に入り、胴体を斬った。


「そうなれば、なんだ?」


ラースは不敵な笑みを浮かべた。


「クックック、ありがとうアーク君。

どうやら私は攻撃を受ける度に強くなるらしい。

君が戦ったドラゴンのように。

そして、攻撃を受ける度に私の体は取り込んだ2匹と早く融合しようとする。」


「それで、何が言いたいんだ?」


「私は今の君の攻撃が見えた。私はもう少しで君に追いつけるのだ。 そして、追い越すのだ。」


「...」


アークは黙り込んだ。ラースの話に聞き飽きたのだ。

そして、静かに剣の柄を握った。


「死ね、アーク君。」


ラースは今までとは比べ物にならないスピードでアークに襲いかかろうとする。

そして、拳にとてつもない魔力を纏い殴りかかろうとする。


アークの体にとてつもない魔力を纏った拳が襲いかかる。

その刹那。


「破閃激」


アークは目にも留まらぬ速さ、まさに紫電一閃の如く一瞬でラースを斬り刻んだ。


「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


叫ぶと同時にラースはバラバラとなった。


「早く、再生しろ。 分かっている。

お前はこの程度なら、再生出来ることなど。」


バラバラとなったラースの体は合体を始めた。

足りないところは自動的に再生された。

そして、完全に復活した。


「驚いたよ...あの、一瞬であれだけ斬り刻まれるとは。

でも、ありがとう。

これで私は完全に融合した!」


なんていうことだ、今の攻撃でラースは取り込んだ2匹のモンスターと完全融合したではないか。


「終わりだ...私は完全な不死身となった。

私を殺すことはもう出来ない!」


「ッチ」


舌打ちするレミ。


「アークこうなったら私が奴を完全に凍らせる。

だから、アークは魔力のエネルギーで跡形もなく消し飛ばして。」


氷の大魔法を放とおうとするレミ。


「レミ、その必要はない。 もっと確実に殺せる方法がある。」


「えっ?」


アークの発言を不思議に思うレミ。


「まあ、見ていてくれ。」


正直、龍閃激で殺すつもりだった。

でも、斬った時、途中で手応えが変わった。

おそらく、四撃目で完全に融合した。

ミスをしてしまったな。

まあ、仕方ない...この技を使うか。


「確実に殺せる方法だと?

ハッハッハ! 面白いことを言うな!

完全に不死身になった私をどう殺すと言うのだ?

やってみせろ、アーク!」


ラースが俺のことを呼び捨てし始めた。

こいつ、不死身になったことで気分が高揚しているのか。

まあ、今から絶望の底に叩きつけてやるがな。


「なぁ、不死身でも大量の魔力の渦に飲み込まれたらどうなるんだ?」


「うん...どういうことかね?」


ラースは目つきを鋭くし不思議そうに思った。


「まあ、わかりやすく言うと。

モンスターに丸呑みされたらどうなるんだ?」


俺は笑みを浮かべながらラースに訊いた。


「ッツ!」


ラースは不満そうな顔をした。


「見せてやるよ...これが俺の奥の手だ。」


アークの周りに大量の魔力が溢れ出した。

透明な色の魔力がアークを取り囲んでいる。

まるで、変身するかのようだ。


「なんだこれは?!」


驚くラース。


「アークの後ろに大量の魔力が凝縮されていってだんだん形となっている。

この形は...龍?」


アークを囲んでいた魔力が消えた。

そして、アークの姿があらわになった。


「ナッ!」


「なんだ、それは!」


レミとラースは驚いた。

ラースはアークの後ろにいる者に恐怖に近い何かを感じた。


「これが俺の奥の手の魔法...破龍だ!」


アークの後ろには巨大な龍がいた。

その大きさはモンスターと融合したラースよりも圧倒的に大きい。


「なんという大きさだ。」


あまりの大きさに驚きが隠せないラース。


「いったい、何十メートルあるの。

見た感じ40...いや、50メートル以上はあるわ。」


「50メートルが何だ!

所詮は魔力を凝縮させ、龍の形に具現化させただけの塊にすぎん! 私の魔力で押し潰してくれるわ!」


ラースは焦っている。

魔力の具現化はSランク以上の魔法だ。

それも龍となればSSランクの魔法になる。

レミみたいに固有スキルの持ち主なら簡単に具現化魔法が使える。 だが、アークの場合は固有スキル無しでそれを可能にしている。


「なら、試してみるか?」


「舐めるなよ、小僧がぁぁぁぁ!」


ラースは全力の魔力のエネルギー砲を放った!


「呑め、破龍。」


破龍は雄叫びと同時に口を開け食べ物を食らうように魔力のエネルギー砲を呑み込んだ。


ラースの放った魔力は消滅した。


「バカな!! 私の全力の魔力だぞ! 完全融合した私だぞ!」


ラースは怒声で叫んだ。

自分の想像していたこととは違うことが起きて苛立っているのだろう。


「次はお前だ。」


「ッツ!」


ラースは咄嗟に後ろに下がった。

そして。


「シールド!」


破龍の攻撃を防ぐためのバリアを張った。

だが、無意味だ。


「喰い殺せ、破龍!」


破龍は雄叫びを上げながら、ラースの方に向かってとてつもないスピードで一直線に進んだ。

そして、シールドを噛み砕いた。


「ック!」


破龍は再び口を開けラースを喰らおうとする。

そして、ラースを喰らおうとした刹那。


「うぉぉぉぉぉぉ!」


ラースは両腕で上顎の牙を掴み抑え、足で下顎を抑えてた。

ラースの両足には破龍の牙が刺さっている。


「言ったはずだ...斬り殺すと。」


アークは地面を蹴りラースの方向へ真っ直ぐに飛び込んだ。


「双破閃!」


アークはラースの両足、両腕を斬り落とした。


「喰い殺せ、破龍。」


アークの声を聞き破龍はラースを喰った。

ラースは魔力の渦に呑みこまれた。

こんにちは天音です。

いや、今日は久しぶりに激しい戦闘シーンを書いた気がしますわぁw

さて、次回も戦闘が続く予定です(多分)

それではまた。

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