恐怖の大富豪
学園が再開してから三日程経った。
この三日間は授業で魔法の勉強と訓練で魔法の練習をしていた。
森でBランク以上のモンスターが出て以来、実践訓練は一回も行ってない。
そして四日目の今日。
いつも通り授業と訓練を終えた。
そして。
「俺の勝ちだ!
食らえ、革命じゃあ!」
「なんだと!」
「俺の勝ちだ!」
ドヤ顔を決め、勝ち誇っているカイト。
「別に革命をしたからって勝てるわけではないぞ。」
カイトはきょとんとした顔をする。
「え、革命したら勝ちじゃないの?」
「そんなクソみたいなルールなわけないだろ。
てことで革命返し。」
ジンは9のカードを四枚出して革命返しをした。
そしてジンの手札は0になった。
「俺の勝ちだ。」
「ちくしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
カイトのクソデカすぎる声がアークの部屋の中だけでなく、男子寮全体に響き渡った。
どうして、こうなった。
なんで俺ら、大富豪をしてるんだ?
遡ること二時間前。
◇◇◇
「今日の訓練も疲れたな。」
「モンスターと戦ってる時の方が楽だったな。」
「カイトもロイドも息が荒々しいけど大丈夫か?」
「アーク、お前はよくそんな平然としてられるな。」
訓練をした後と思えない程アークは涼しい顔をしていた。
「そう見えるか? あ、はは...」
「あっ違うわこいつ。 完全に目が死んでいる。」
「アークお前、生きているのか?」
「にしても、訓練ばっかの毎日は疲れるよな。」
「そうだな。」
ロイドの喋り方的に何か言いたそうにしている。
俺の感だが嫌の予感がする。
「てことで、大富豪をしよう!」
「いいなそれ! で、ロイドよ。大富豪って何だ?」
カイトは間の抜けた顔でロイドに訊いた。
「トランプゲームだよ。
めっちゃ面白いんだぜ。」
どうやら、カイトとロイドは大富豪をするらしい。
何だ、大富豪か。
嫌な予感は外れたようだ。
アークは心の中で安心した。
「よし、アークの部屋でやろう!」
「そうだな、アークの部屋でいいな!」
「おい、ちょっと待って。」
前言撤回。
嫌な予感は見事に的中した。
「何だよアーク。」
「どうしたよアーク。」
「いや、おかしいだろ!
今の流れ的にどうして俺の部屋で大富豪することになったんだよ!」
「それの理由は簡単さ。」
「お前が近くに居たからお前の部屋にした。
それだけの話だ。」
「身勝手すぎるだろお前ら!
というか息ピッタリだなお前ら。」
相変わらずこの二人は連携が上手い。
悪い意味で...
「よし、決まりだな。」
「ローズベルトとジンは俺に任せておけ。」
そして今に至る。
「まずカイト。
お前はルールから覚えろ。」
「だって、難しいもん。
大富豪のルール。
2が一番強いことは分かるけど。」
「カイト、今度俺が教えてやるよ。」
「頼む、ロイド!」
「上がり。」
アークは最後の一枚を出して上がった。
「やっぱジンとアークのタイマンになってるな。」
「ジンとアークの一位と二位の取り合いになってるね。」
「俺とローズベルトは三位と四位の取り合いになってるけどな。
そしてカイトはビリ。」
「五位だよ!」
「いや、ビリだろ。」
「というかよ。」
カイトは疑問を持った顔で俺らに聞いてきた。
「大富豪って何だ?」
「大富豪は大富豪だろ。」
「違う違う、そうじゃなくてどういう意味何だ。」
「確かに大富豪の意味は知らないね。」
ローズベルトとカイトとロイドは大富豪の意味を知らないようだ。
「アーク、ジン知ってるか?」
「大富豪は二百年前の人達が考えた遊びらしい。
二百年前にはお金という物があったらしい。」
「ほほぉ。」
アークの説明を聞いて大富豪の意味を知らない三人は興味津々な顔をする。
「それで金を大量に持っていた人を大富豪と呼んだらしい。」
最後はジンが説明してくれた。
「ちなみにお金は物を交換するために必要な物だったらしい。
だから、金を持たない貧しい者は物を盗んで生計を立てたらしい。」
「そうなんだ。」
「なんで今はお金が無いんだ?」
「お金を作ってる余裕が無くなったんだよ。」
「それと必要じゃなくなったからだ。」
「ジン、最後の『必要じゃなくなった』それはどういうこと?」
カイトは不思議そうにした。
なんでお金がいらなくなったのか分からないからだろう。
「二百年前は働くことでお金を貰い、お金を使って自分の好きなことをしていた。
お金で食べ物も買っていた。」
「じゃあ、二百年前はお金を集めるために働いていたのか。」
「そうだ。俺らが生きているこの世界でわかりやすく説明するとモンスターを倒してお金を貰い、そのお金で食べ物を作ってもらう。
そんな感じだ。」
「なるほど。
結局何で必要じゃなくなったんだ。」
「さっきも言った通りお金を作る時間がないのと今はみんなで協力をしていかないとやっていけないからだ。」
「どういうことだ?」
カイトはこの時点で頭がこんがらがっていた。
ロイドとロースベルトはついていけてる。
「今はみんなで戦わないといけない。
戦えない者は戦える者を支えろ。
こんな感じだ。」
「あーなるほど。」
三人の声が重なった。
どうやら、三人とも理解したようだ。
「金を作る余裕がない。
今はみんなで協力する必要がある。」
「盗みをする人がいなくなったのか。」
「さらに二百年前の戦争で人口が減ったからある程度の食糧で全ての町の人に分け与えられるようになったからだ。」
「そういうことだったのか。」
三人は完全に理解したようだ。
「そう考えると俺達ってすげぇな。
ちゃんと協力し合ってる。」
「俺達って案外すごいのかもな!」
「すごいのは昔の大人達であってお前らじゃない。」
「こうやって人は成長していくんだな。」
「基準値に戻っただけだと思うけどな。」
アークはボソッと呟いた。
「アーク今、なんて?」
「いや、何でもない。」
俺の考えはこの場の雰囲気を悪くするだろう。
だから、言わない方がいい。
「さて、お金の話はここら辺にして俺はアークに聞きたいことがある。」
「どうしたロイド?」
ロイドのやつ俺に何を聞きたいのだ?
まともな物だと祈る。
「お前、なんで女の匂いがするんだ?」
ロイドは覇気のこもった声で圧をかけるように言った。
「ロイドお前も気づいていたか。
アーク、貴様覚悟は出来ているか?」
ロイドに続いてカイトも覇気のこもった声で俺に圧をかけた。
「いや、待て。
なんでお前らは拳に魔力を纏わせてるんだ!」
明らかに殺意のこもった拳だ。
「というか俺はこの部屋に女を連れて来たことはないぞ!」
「違う、この部屋から女の匂いはしてない。
アーク、お前から女の匂いがするんだよ。
ジンやローズベルトと違ってお前だけが女の匂いが強い!」
こいつらどんな嗅覚してんだよ。
俺はジンの近くに行った。
「おいおい、ジンさんよ。
どういうことだよ。
俺がレミさんの部屋に行った日のことはあいつらの記憶から消えているんだろ。」
カイトとロイドは俺がレミさんの部屋に行った日、ジンの魔力弾によって気絶して朝の記憶が消えた。
その時の俺は運がよかったと思って安心していた。
「アーク、あいつらは何故か女のことになると勘がよくなる。
というか全体的に性能が良くなる。」
「なんだよ、その固有スキル!」
「いや、スキルではないぞ。」
「さて、覚悟はいいか?」
「おい、もう俺が殺されること確定になってんじゃねぇかよ!」
絶対絶命だ。
「まあ、二人とも落ち着きな。」
その時、俺に一筋の光がさした。
「ローズベルト、これが落ち着いてられるか!」
「アークはレミさんと一緒にドラゴンと戦ってたんだよ。
レミさんと長く接触してるから女の人の匂いが人より強くするのは当たり前だよ。」
「ローズベルトぉぉぉぉぉぉぉ!」
ローズベルトお前は最高だよ。
俺ら、これからもずっと友達だよ!
「それなら、ジンも匂いがするはずだぞ。」
ロイドはすかさず追い討ちをかけた。
「いや、俺の場合は途中でマキ先生に渡していたからレミさんと接触した時間はアークの方が長い。」
「ジンーーーーーーー!」
ジンお前は最高だよ。
俺ら、これからもずっと友達だよ!
「そうか、ならアーク俺はお前を...」
カイトはアークに向かって手を差し伸べた。
「カイト、分かってくれたか。」
俺はカイトの手を掴み握手をしようとした。
だがその瞬間、カイトは手を引っ込めて拳を作った。
「殺す!」
「その流れは完璧にお前を...許す!って流れだろぉぉぉぉぉぉ!」
この後、めちゃくちゃボコられた。
こんにちは最近、暑いので冷やし茶漬けを食べたいと思っている鬼龍院天音です。
第二章始まりました。
夏休みを利用して第二章をいいところまで進めるよう頑張りたいです。