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僕たちの英雄伝説  作者: 鬼龍院 天音
1年生編 第一章
10/40

君の英雄

SSランクモンスターが現れた同時刻、森の中ではBランク以上のモンスターが大量に現れていた。


「ちょっとアーク君、一人で突っ込みすぎ!」


アークは森の中を全力で駆け抜けていた。

とんでもない速さだ。

ローズベルト達は追いつけない。


「アークあまり先行するな!

どこからモンスターが来るか分からないのだから、慎重に進め!」


ジンがアークに警告した瞬間、アーク達の前に大量のモンスター達が立ち塞がった。


「なんだこいつら!」


あまりの数の多さにロイドは驚きを隠せなかった。


「こいつら明らかに他のモンスターとは違うぞ!」


カイトは目の前に立っているモンスター達が放つオーラは他のモンスターとは違うことに気がついた。


「こいつらBランク以上のモンスターつまり、Aランクのモンスターだな!」


ジンはこのモンスター達が全員Aランクモンスターだと推測した。


「Aランクモンスターか、ちょっと厄介だね。」


さすがのローズベルトでもAランクモンスターとなれば簡単には倒せないだろう。

それにこの数、見た限り五十体以上は居る。


「邪魔だ。」


アークは地面を強く蹴り、モンスターの群れに飛び込んだ。


「アーク君!」


ローズベルトはアークを呼び止めるため叫んだ。


「あのバカ、一人で飛び込みやがって。」


ジンもアークに続きモンスターの群れに飛び込もうとした。


その瞬間


「なっ!」


「まじかよ。」


「すげぇ...」


「アーク君どうやって。」


四人は驚いた。

それもそうだ。たった今、モンスターの群れに飛び込んだアークは目の前に居たモンスター達を殴り殺した。


「魔力を込めた拳で殴ったのか!」


「やるね!アーク君!」


ジンとローズベルトはアークの実力の一部を目の当たりにして、少し驚いた。


「今は、時間がないんだ...どけ!」


アークは覇気のこもった声で吼えた!


それと同時に再び地面を強く蹴り、飛び込む。


「アークそのまま、森の奥に突っ込め!

こいつらは俺達が何とかする。」


カイトはアークに先に行くよう命じた。


「ありがとう。そいつらは任せたよ!」


らしくないことを言ってしまった。

任せたよ...か。

俺が人に任せるなんて、俺は心のどこかでこいつらを信頼していたのだ。

昔の俺なら絶対に無理だっただろうな。


あの時、ローズベルトが話しかけてくれなかったら、みんなとこんな関係を持つことは出来なかっただろう。

ローズベルトを少しめんどくさいやつだが、何だかんだ良い奴だ。


友達か、


親父の言っていたことはこういうことなのかもな。


(信頼できる友を作ること)


あいつらが俺のことを信頼してるかは分からないけど

俺はあいつらのことを信用する。


まあ、今は急ぐか。


アークは地面を強く蹴り、モンスターの頭上を飛び、モンスターの頭を強く踏みつけ、それをバネにして加速した。


モンスターの群れの奥に行くことに成功した。


よし、モンスターの群れを突っきることが出来た。

禍々しいオーラはこの先にある。

急ぐとしよう。


モンスター達はアーク追いかけようとしたその刹那。


「ライトニング!」


「バーニングファイヤー!」


光の速さの稲妻がモンスターを丸焦げにし、炎のボールがモンスターに当たった瞬間爆発した。

Aランクモンスターは跡形もなく消し炭になった。


「アーク君の邪魔はさせない!」


「ダチが俺達に任せたんだ!その先は行かせねぇぜ!」


◇◇◇


「さて、五十体以上居るこいつらをどうやって倒そうか。」


ジンが五十体以上居るAランクモンスターをどうやって倒そうか真剣に考えている中...


カイトとロイドは


「はっ?そんなの決まってるじゃん!」


カイトは作戦が決まっているようだ。

どうするつもりだ?


「そんなの強行突破以外無いだろう!」


ロイドは自信満々にジンに言い放った。


「そんなことだと思ってたよ。でも、今回はお前らの作戦で行く。」


ジンはカイトとロイドの作戦を採用した。


「おージンが俺達の作戦に賛成した?!」


「明日は空から大量に女の子が落ちてくるな。」


カイトとロイドはジンが採用したことに驚いたようだ。

まさか、採用されるとは思っていなかったのだからな。


「いや、カイト君、空から女の子が落ちてきたらやばいよ。落ちてくる女の子、絶対に死んじゃうからね!」


「ローズベルト最後のやつは無視しろ。

こいつらはバカだから。」


ジンはカイトとロイドをいつも通り罵倒した。


「相変わらず酷い言い方だな!」


カイトは笑いながら受け流した。

もう慣れているのだろう。


「お前らの作戦採用した理由は二つある。

一つは初めてのチームだからだ。」


「ほほぉ...」


ロイドは興味津々にしている。


ローズベルトはジンに問いかけた。


「つまり、ジン君の言いたいことは初めてのチームだと連携を上手く取れないから下手に連携を取らないということかい?」


「そういうことだ。下手に連携を取らないことだ。失敗して、お互いの足を引っ張るかもしれないからな。

そんなことをするぐらいなら、好きに暴れた方がいい。」


ジンが自分の考えを言い終わった。


「なんだ、俺らの得意分野じゃん!好きに暴れようぜ。」


「だが、助け合いはすることだ。誰かがピンチになった時は助ける。余裕が出来たら加勢してくれ。」


「わかったぜ、ジン!」


ロイドとカイトは気合い充分だ。


「じゃあ二つ目の理由は?」


ローズベルトが次の理由を訊いた。

ローズベルトは一つ目の理由で充分な理由だと思っているようだ。これ以上の理由があるのか?


「二つ目の理由は俺、個人の理由だ。」


「何かね?」


カイトが年寄りのおじいちゃんみたいな声と口調でジンに聞いた。


「言っただろ個人の理由だと。」


「うん?」


ローズベルトは不思議そうな顔をして、首を傾げた。


「個人の理由?どんな理由だい?」


ローズベルトは再び問いかけた。


「俺の固有スキルを使う!」


ローズベルトは驚いた。

それもそうだ。

ジンもレミと同じ固有スキル持ちだったのだからな。


「俺のスキルはホーミングだ。

物を自由自在にいろんな方向から相手に当てることが出来る。ちなみに空中で止めることも出来る。」


ジンのスキルの詳細を聞いたローズベルトはきょとんとした顔をした。


「カイト君から聞いたけど、ジン君は指から魔力のエネルギー弾、魔力弾を使って戦うって聞いたんだけど魔力弾や魔法にもスキルが発動するの?」


「する。魔力も物という扱いになるらしい。」


それを聞いたローズベルトは再びきょとんとした顔をした。


「そのスキルって連携にすごく便利なスキルじゃないの?

ジン君が連携をしない理由が分からないよ。」


「俺はカイトとロイドはある程度の動きが分かるけど、

ローズベルトの動きは全く分からない。

どんな攻撃をするのか、どんな戦闘スタイルかも分からない。そして三人が一緒に行動したら尚更分からなくなる。」


カイトとロイドは今まで一緒に行動していたから戦闘スタイルが分かるが、ローズベルトの本格的な戦闘を見るのは今回が初めてだ。

さらにカイトとロイドの動きに合わせるのは難しい。

あいつら無茶苦茶な動きをするからな。


「それに俺だってスキルを完全に扱いきれない。

不完全なスキルだとお前らに迷惑をかけるかもしれないからな。」


ローズベルトは納得した顔をして頷いた。


「分かったよ。じゃあ連携は無しで!」


「俺は別にいいんだけどな。ジンの腕前を信じてるからな。」


「じゃあ、これで決まりだな。」


「あぁ、お前ら暴れるぞ!」


◇◇◇


ジン達が作戦を考えていた同時刻


「森がさっきからうるせねぇな!」


ガラードは一人でずっとモンスター狩りをしていた。


Bランクモンスターも飽きたな。

Aランクモンスターとか出ねぇのか?


そう思った刹那。

ガラードの背後から狼のモンスターが襲いかかった。


「バレてんだよ、雑魚!」


狼のモンスターの頭蓋を掴むと同時に握り潰した。


こいつ気配が他のモンスターと違うなぁ。Bよりも強い。

てことは!


「Aランクモンスター!なんだ居るじゃねぇか!」


喜びの声と同時に百体近くのモンスターが出てきた。


「こんなにも居んのか!いいじゃねぇか!

丁度Bランクモンスターには飽きていたところだ、頑張って俺を楽しませろよ!雑魚共!」


吼えるガラード。

それと同時にAランクモンスター達が一斉にガラードに襲いかかった。それをガラードは一撃でしずめていった。


蹴り、殴り、掴み殺す、地面に叩きつける等をしてモンスター達を一瞬で一掃していった。


「おいおい、その程度か?もっと俺を楽しませろ!」


Aランクモンスター達は容赦なくガラードに襲いかかる。

だが、それでもガラードに触れることすら出来ない。


「俺にもっと攻撃してみやがれぇ!」


ガラードは襲いかかってくるモンスターを蹴ったり殴ったりして勢いよく倒していく。


瞬殺されていくモンスター達

百体近く居たモンスター達がもう半分になっている。


「どうしたAランクモンスター共?この程度か?あぁ!

全力でかかってこいやぁ!」


怒声に近い叫びが上がると同時にガラードの背後を狙っていた猫のモンスターがガラードの背後に襲いかかる。


「シャァァ!」


猫のモンスターがガラードの首を切り裂こうとした。

だが、その刹那。


「気づいてんだよ!それと遅ぇー!」


爆発のような音、四方八方に飛び散る肉片と赤黒い血。

ガラードはモンスターの頭蓋を掴み地面に叩きつけ、砕き割った。

その光景を見たモンスター達は本能的に後ろに下がった。

勝ち目が無いと確信したのだろう。


圧倒的な武力と体捌き。

一切隙のない動き。

そしてAランクモンスターが束になってかかって来ても圧倒する実力

天才レベルの戦闘力だ。


「チッもう終わりかよ。」


そう思った瞬間


(パチパチパチパチパチパチ)


モンスターの群れからスーツを来た男が現れた。


「ブラボー!実に素晴らしい。君の戦い見せてもらったよ。

なんと素晴らしい戦いだ!」


如何にも紳士そうな、スーツを来た男はガラードの戦闘を褒め称えた。


「誰だてめぇ?」


ガラードは目を鋭くし、男を睨みつけ、威圧した。


「おっとこれは失礼、つい君の戦闘が素晴らしすぎて挨拶を忘れていたよ。

はじめましてー私の名はバラム。よろしくお願いいた...」


「ちげぇよ!」


男は首を傾げた。


「違うとは?」


「俺が聞いたのは名前じゃねぇ、お前は何者だと聞いたんだよ!お前からは人間の匂いじゃなくてモンスターの匂いがする。てめぇは人間かそれともモンスターか?」


ガラードは鼻が利く。

そして気配で相手の強さがある程度分かる。

気配で相手がどんな生物か判別することだって出来る。


「ほう、面白いことを言うね。でもモンスターは喋ったりはしないぞ。」


モンスターは基本的、動物の形をしている。

犬、猫、うさぎ、猿、ライオン、狼、虫等

様々な種類がある。


だが、人間の姿をしたモンスターは存在しない。

人間がモンスターになることはない。


「モンスターは突然変異する。

どんな変異をするかは分からない。つまり、人間に変身することも出来るかもしれない。」


モンスターは突然変異をすることによって姿、形を変えることが出来る。

何らかの影響で人間に似たモンスターだって出来るだろう。


「それは勘かね?」


「いーや、1つの可能性だ。」


「ほほぉ。」


バラムは興味津々な顔でガラードを見つめた。


「お前はいくらなんでも知能が高すぎる。

突然変異でそこまで人間に近くなれるとは思えねぇ...」


「ほほぉ、じゃあ私は何故人間と同じ言葉を喋るのかね?」


「簡単な話だぁ。てめぇ誰かに作られたモンスターだろ。」


ガラードはさらに目を鋭くする。


「ハッハッハ!」


バラムは声を高く上げた。


「ご名答。素晴らしい!どうして分かったのかね。」


問いかける、何者かに作られたモンスター。


「勘だ!」


「ハッハッハ!」


再び笑い出すモンスター。


「やはり、君は素晴らしい。実に興味深い!」


モンスターのバラムはさらにガラードに興味を持った。


「君のことを知りたい。名を教えてくれないか?」


「へっ、モンスターに名乗る名前なんてねぇよ!」


ガラードは名乗ることを拒んだ。


「そうか、なら手合わせを願おう。私が勝てば名を聞かせてもらう。安心したまえ、今回は殺さないさ。」


バラムはガラードに手合わせを申請した。

そして今回は殺さないと宣言した。

今回は...


今回は殺さないが次に出会ったら殺すとでも言いたげだな。


「面白ぇ、相手してやるよ!それと殺さないだ?そんな甘い事言える余裕がお前にはあるのか?

それと、」


「うん?」


ガラードは何かを言う前に一瞬でバラムの背後をとったと同時に腰の回転を効かせ、唸りを上げるほどのスナップのある飛び回し蹴りした。

その僅かの刹那にバラムはガラードの飛び回し蹴りに反応し、手をクロスしガードした。


「おっと、」


ガードをしたが、それをも打ち砕かれ、バラムは吹っ飛ばされた。バラムは防御をしていたため、威力を最小限に抑えることができ、何とか倒れず地面に着地した。


ガラードはバラムを蹴り飛ばし、地面に着地した。


「てめぇはもう二度と俺様に会うことは無い!

なぜなら...」


立っているバラムに狂気の笑みを浮かべながら宣告した。


「てめぇはここで俺にぶっ殺されるんだからなぁ!」


力強い、覇気のこもった声がバラムを昂らせた。


「私を倒しますか、面白い。それなら私も全力で行きます!」


構えるバラム。ガラードと全力で戦うつもりだ。


「かかってこい!そこら辺のモンスターと一緒に地べたに這いつくばらせてやるぜ!」


◇◇◇


作戦会議を終わらせ、戦闘態勢に入っているジン達。

今から、Aランクモンスターとジン達の戦いが始まる。


「よし、お前ら行く...」


「突撃じゃあぁぁぁぁ!」


「行くぜえぇぇぇぇ!」


ジンが最後の一言を言う前にカイトとロイドはAランクモンスターの群れに突っ込んだ。


「ちょっと2人だけで突っ込むのは、」


カイトとロイドはローズベルトの警告を無視し、思うがままに突撃した。


「ローズベルトあいつらはあれでいい。

それに心配する必要もない。」


「うん?」


ジンの発言に首を傾げる、ローズベルト。


「あいつらはバカだが、強い。」


カイトの足が風を纏いながら、モンスターの頭上に向かっていく。


「オラァ!食らいやがれぇ! トルネードキック!」


モンスターはカイトの風を纏ったかかと落としにより地面に叩きつけられた。


「ファイヤーアッパー!」


カイトと全く同じタイミングでロイドは別のモンスターに攻撃した。


腕を腰より下の位置に持っていき、そこからモンスターの顎に目掛けて燃え盛る炎の拳でアッパーをした。

モンスターは上空にぶっ飛ばした。


「カイト君とロイド君、すごいよ!」


ローズベルトは目を輝かせ、カイトとロイドの攻撃を褒めた。


「おい、カイト!トルネードキックって何だよ?

名前のセンス皆無かよ!」


「それを言うならお前のファイヤーアッパーも同じだろ!」


二人はくだらない話をしながらもモンスター達を次々と倒していった。


「あいつらはバカだが、めっちゃくちゃ強い。

普通の人より優れた戦闘力、魔法はどれもBランク以上の強さがある。

あいつらの強さだけを言えばAランク戦士レベルだ。」


小さい頃からカイトとロイドはジンと一緒にジンのお父さんに鍛えられていた。

単純な殴り合いの戦闘だけで言えば、カイトもロイドもジンより上だ。

この二人の強さは優れた魔法と武術だ。

カイトとロイドは武術と魔法を組み合わせることで強力な攻撃をすることが可能だ。


「じゃあロイド君とカイト君はAランク戦士なのかい?」


ローズベルトには今のジンの話を聞く限りカイトとロイドはAランク戦士と言っているようなもんだ。


「いや、あいつらはCランク戦士だ。

言っただろ、あいつらは強さだけがAランク戦士だと。」


「Cランク戦士なの?!」


ローズベルトは驚いた。

こんだけの強さを持っているのに何故Cランク戦士なのかローズベルトには理解出来なかった。


「ローズベルト、あいつらは本当にとにかくバカなんだ!」


ジンは断言した。


「ジン君、いくらなんでもそれは言い過ぎだよ。」


ジンの発言に対して、ローズベルトは苦笑いをした。


「あいつらはランクを決める、大事なテストでとんでもないバカをした。」


「それはどんな事なの?」


ローズベルトはジンが言う、カイトとロイドのバカな事が何か気になり、聞いてみた。


「それは...」


「いやぁ〜あの時は隣の子が可愛い子ちゃんでな、その子をカイトと一緒に眺めながらテストをしたら、魔法の生成をミスってしまったんだよ。

そしたら、なんということでしょう、テストの判定はCランクでした。」


ジンが入学テストの時の出来事を話そうとした瞬間、ロイドが笑いながら自分から言った。


「いやぁ〜あの子可愛いかったよな。Bクラスの子だっけ?」


「いや、あの子、学園を昨日の訓練が原因でやめて救護部隊になるために医療の勉強を始めたらしいよ。」


「いや、お前ら何でそこまで知ってんだよ。

そこまで行くとさすがにキモイぞ。」


ジンは呆れを通り越して、こいつらが犯罪に手を出さないかの心配をし始めた。


いや、こいつら一回女湯を覗いてるからもう既に犯罪者か!

とうとうあのバカ達も犯罪者か...


「おい、ジン!今、さりげなく俺らのことをバカにしただろ。」


こいつ勘がいいな。


「お前らのことはいつも見下しているよ。」


「いや、それは酷くないか?!」


ロイドとカイトはまさか自分達がそこまでバカにされているとは思っていなかったようだ。

彼らは自分達がやっていることがどれだけ、やばい事か自覚がないようだ。

もう本当に救いようが無いのかもしれない...


「とりあえず二人とも、その調子で暴れてくれ。」


「了解!」


カイトとロイドは気合と活気が溢れている声で返事をし、ジンの指示に従った。


再び暴れ出す、カイトとロイド。2人だけで全部倒しそうな勢いだ。


そう思っていた瞬間


「ローズベルト後ろ!」


ローズベルトはジンの言葉に反応し、魔力のエネルギー弾を左側に体を反らし、回避した。


「まだ、こんなに居たのか。」


五十体のAランクモンスターが追加された。

おまけに大型のAランクモンスターも三体もいる。合計五十三体の追加だ。


追加されたAランクモンスター達がカイトに襲いかかった。


「チッ、こいつら離れろ!」


小型のモンスターがカイトの体に引っ付いた。


「ライトニングショット!」


雷魔法と光魔法の合体魔法の光線により、引っ付いたモンスター達は焼き尽くされた。


「おー、ローズベルトありがとう。

助かったぜ!」


カイトは助けてもらった感謝の気持ちを伝えた。


「どういたしまして。

後ろの五十体は僕に任せて!」


ローズベルトは追加された五十体のモンスター全部を一人で受け持った。


「一人で大丈夫か?」


ローズベルトは自信満々に言った。


「問題ないよ!ここは僕に任せて!」


「分かった。なら、俺は残りのデカ物三体をやる!」


ジンは人差し指《銃口》を向けて大型モンスター三体に魔力弾三発を打った。


三体の大型モンスターは一発ずつジンの魔力弾を受けた。

だが、全く効いていない。


モンスター達はその程度かと言いたげな顔をする。

余裕そうに構える大型モンスター。


「なに、これからさ。」


楽しそうに笑みを浮かべるジン。

ジンは強いモンスターと戦うことに少しワクワクしているのだ。


「さぁ、かかって来やがれ。」


◇◇◇


ジン達やレミ達が激しい戦闘をしている時

ガラードとバラムの戦闘も激しさをどんどん増していった。


「やはり、思った通りあなたは武術の天才ですね。」


バラムはガラードの猛攻撃を防御したり、いなしたりして、最小限に抑え込んでいた。

だが、


「ハハハハ、どうした?

防御するだけか?攻撃もしてこいや!」


殴りのラッシュ。

止まることを知らないガラードはどんどん殴るスピードを上げる。パワーとスピードの両方が優れている。

バラムはガラードの攻撃を防ぐの手一杯だ。


「攻撃をしたいのですが、私が攻撃をした瞬間あなたにカウンターされるのが見えてますからね。

下手に攻撃しても、あなたに一瞬で殺られるだけです。」


自分の状況を普通に喋るバラム。


こいつは余裕なのか?

それともこいつは端から勝つ気が無いのか?


「仕方ありません。私も魔力を使いますか。」


「やっと戦う気になったか?」


ガラードは殴りながらバラムに問いかける。


「はい、とりあえずその厄介な連打をやめてもらいましょうか?」


バラムはパチンッと指を鳴らした。

その瞬間バラムの目の前に大きな壁が出来た。


「なるほど、シールドか。」


シールドは魔力の壁、言わばバリアみたいな物だ。魔力の壁を作り相手の魔法や物理攻撃を防ぐことが出来る。魔法の基本の基本だ。

このシールドに属性を加えることで

炎の盾や水の盾や氷の盾等を作ることが出来る。

相手の魔法によって使い分けるのが普通だ。

炎魔法には水の盾、氷魔法には炎の盾等

相性を考えて使い分けることが出来る。

シールドは魔力が多いほど壊れにくいシールドが出来る。


「チッ俺の攻撃を完全に防ぐか。」


ガラードは殴ることをやめ、大きく後ろに下がり相手から距離を取った。


「次は私の番です。」


バラムの両方の手のひらに魔力が集まり、凝縮されていく。


うん?これは魔力のエネルギー砲か!


「ハッ!」


バラムは魔力のエネルギーを放った。木に当たると同時に大爆発した。


「さて、少年は無事かな?かなり本気で放ったのだけど。」


少年の安否を心配する。

まだ、ガラードの全てを見ていない。

バラムはガラードの力を全て見るまでは殺さないつもりだ。


「おい、てめぇの力はその程度か?」


エネルギー砲を放った方から覇気のこもった声が聞こえ、バラムは興奮した。


「まさか、あれを食らって生きているとは!」


バラムは喜んでいる。かなり本気で放った一撃を耐えていることに。

ガラードが自分の想像を超えるほど強いことに。


「そんなの全く痛くもねぇな!」


ガラードは笑いながら立っていた。それを見たバラムはさらに笑みを浮かべた。


「ククッ、素晴らしい。まさか直撃して無傷とは。

そしてこの感じ身体強化だな。さっきよりレベルを上げてる。」


身体強化魔法にはレベルがある。

1〜10レベルまである。

身体強化は主に

パワー

スピード

防御

この3つを強化する。


ガラードはさっきまでレベル三だった。

それを今はレベル五までに上げ、防御力を高めた。


「さて、まだまだ楽しませてくれるよな?」


「もちろんです。私もまだまだ力を残してますよ。」


「精々俺を楽しませれるよう頑張れよ!」


ガラードとバラムは再び構えた。


ガラードは地面を蹴り、バラムに飛びかかる。それに対してバラムも身体強化をし、手のひらに炎を出した。


「行くぜ!」


「来なさい!」


互いに攻撃を繰り出す。


ガラードは殴る、蹴るなどの体術。


バラムは炎、氷、水、雷、光、風、木等の魔法で攻撃。


お互いに攻め合う。


どちらも引かない。互角の戦いだ。


「楽しいなぁ!お前は他のモンスターと違って俺を退屈させねぇな!」


「当たり前です。私を他のモンスターと一緒にしないでください。」


互いに笑みを浮かべ戦いを楽しんでいる。

止まらない攻撃。激しさが増していく。


ガラードはステップを刻み不規則な動きで攻撃をした。

それに対応が遅れ、バラムは顔面に拳を食らった。

顔面に衝撃が走り、よろけるバラム。


ガラードはその刹那の隙を狙うように追い討ちをかける。

だが、


「シールド!」


バラムはシールドでガラードの拳を防いだ。


(危機一髪だった。あれをもう一度食らっていたら、さすがにまずかった。)


シールドを開いたことによりガラードは後ろに下がった。


(チッ!あのシールド厄介だな。今のパワーでも壊せない程の硬さか。それほどやつの魔力が高いのだろう。)


(隙を見せた瞬間もう一回、魔力のエネルギー砲を食らわせてやる。)


(シールドは攻撃をしながら貼ることは出来ない。

奴が攻撃をする瞬間に合わせて仕掛ける。)


バラムは魔力のエネルギー砲を打つため、シールドを解除し、魔力を手のひらに集め始めた。


(今だ!)


ガラードはシールドが解除されると同時に地面を蹴り、バラムの方に一直線に走り出した。

そして、距離が三メートルぐらいになった刹那上空に高く飛び上がり、バラムの顔面目掛けて飛び蹴りをする。


その刹那。


「私はそれを待っていた。」


笑みを浮かべるバラム。


ガラードが飛び込んだ刹那、森の木に絡みついていたつるがガラードを縛り付けた。

ガラードはつるに縛られ、動けなくなった。


木属性魔法の応用、自然魔法だ。自然の力を操る魔法だ。

木に絡まっていたつるを操り、ガラードを縛ったのだ。


「今だ!」


バラムが吼えると同時に魔力のエネルギー砲をガラードの至近距離で放った。


◇◇◇


俺に特に出来ることは何にも無い。

コミュ力も無いし、やる気も無いし、友達も中々出来ない。

俺は一人で居ることが多かった。

そんな俺でも出来ることが一つだけある。


『困っている人を救うことだ!』


これはアークの過去の話である。


「お前、何をやっているのだ?」


話しかけて来たのは親父だ。


「読書。」


俺は特に好きなことも無く、誰かと遊ぶことも無かった。

だから、よく親父の部屋にある本を読んでいた。

その中でも一番読んでいたのは...


「ほう、英雄伝か!」


俺は英雄伝という本を何となく読んでいた。

この本は昔、神が現れて、英雄達が戦った

実在するお話だ。


「お前、字読めるのか?」


「ある程度は読める!」


俺は五歳の時から全ての言葉を覚え、どんなことを言われても言い返すことが出来る。

はずだった...

俺は家族以外の人と話すと緊張して、耳が真っ赤になり、頭が真っ白になる。

そのせいか、同い年の人とまともに話すことが出来ず距離を置かれていた。

そこから、人と話すことが苦手になった。


俺が十二歳になった時、親父はあることを聞いてきた。


「お前は英雄になりたいか?」


父親が俺が英雄になりたいかどうかを聞いてきた。


「分からない。」


俺は特にやりたいことが無い、しいて言うなら面倒臭いことは絶対にしたくない。


「もし、やることが無くて、何をして生きていけば良いか分からないなら、英雄になれ!」


俺は親父の発言が最初は理解出来なかった。何故、俺を英雄にしたいのだろう?分からなかった俺は聞いてみた。


「親父何で俺は英雄にならないといけないんだ?」


「嫌か?」


「いや、別に。」


そう言うと親父は理由を話し始めた。


「お前はな、賢くて強い。」


親父はいきなり訳の分からないことを言ってきた。


俺が強い?何を根拠にと思った。


「 お前のスキルは世界をひっくり返すことが出来る。」


「いきなりそんなこと言われても意味わからないよ親父。」


まじで理解出来ない。親父はとうとう頭がイカれたのか?


「そして、お前は世界を変えるほど強い。」


「そうなのか?」


「そうだとも!」


俺は強いらしい...多分


「確かに俺は戦闘向けのスキルを持っている。

でもだからと言って強いとは...」


「いや、お前は俺の息子だ。いつか俺みたいに強くなるさ!」


いや、適当だな!


「まあ、何が言いたいかというと...」


親父は何かを言おうとした。


「強い奴はな、弱い人や困っている人を助けるという使命があるんだよ。」


そんな使命あるのか?

まあ、親父理論だろうな。


「俺は強い、だからお母さんもお前も守り、助ける。」


そして親父は最後にこう言った。


「お前は強い!だから自分の守りたいものを見つけ、困っている人を助けろ!かっこよく生きろ!お前は英雄になれ!」


親父は俺にそう言った。

その時まだ、俺は親父の言うことを何にも知ろうとしなかった。


「まあ、別に英雄以外になりたいものがあるならそっちに行ってもいいけどな!」


親父は笑顔を向け、笑いながら喋る。


「おい、今までのくだりは何だったんだよ!」


俺は咄嗟に鋭いツッコミをしてしまった。結局今までの話しは何だったんだよ!


「まあ、お母さんもお父さんもお前が幸せになることを願っているよ。今のはちょっとしたお前の人生の道行の助言みたいなもんだ。」


「何だよそれ。」


そして、次の日


親父は朝から居なかった。いつも朝はゆっくり寝ているはずなのに。


「母さん、親父は?」


俺は母に親父の居場所を聞いてみた。

そうすると母は、


「お父さんは今日、大事な用事があるのよ。だから、今日は帰ってくるの遅くなるって。」


母はそう言った。俺はまだその時、親父が普通に用事があり、出かけたのだと思った。

でも違った...俺は何故気づかなかったのだろ?

あの時、母さんと話している時、母さんの手は震えていた。

俺は母さんの顔を見ていたのに何故、気づかなかったのだろう?

あの時、母さんは涙目になっていた。


親父は帰ってきた。


「ただいま!」


母さんは親父が帰ってきた瞬間親父に抱きついた。


何で抱きついたのかはその時は分からなかった。

だが、すぐ知ることになった。


俺はいつも通りの親父だと思ったその瞬間。


「あぁっ...」


親父は母さんが抱きついた数秒後に母さんの首を絞めた。


「貴方な...ん、で?」


俺も何故、親父が母さんの首を絞めているのか分からなかった。でもそんなことはすぐどうでも良くなった。


「親父やめろ!」


俺は咄嗟に叫んだ。


その瞬間、親父と母さんの周りに炎が出て、家が一瞬で燃えた。


「何だこれ!」


「アーク逃げて!」


母さんが俺に逃げろと叫んだ。

でも俺は母さんを見捨てることなんて出来なかった。


「でも...」


俺はその場に残ろうと考えたその瞬間。


「いいから早く逃げなさい!」


母さんは首を絞められながらも力を振り絞って叫んだ。


だが、母さんが叫んだ瞬間


「アークここに残りなさい!お父さんの言うことが聞けないのか?」


俺は親父の発言の違和感にすぐ気づいた。


「嫌だ!」


俺は親父のことを否定した。


「何だと!お父さんの言うことが聞けない...」


俺は最後の一言を言う前に言った。


「お前は親父じゃない!誰だ!」


それに対して親父は。


「何を言う、俺はアークのお父さんだ...」


最後の一言を言う前にアークは告げた。


「俺の親父は俺のことをアークとは言わない!

お前と言うんだよ!」


その言葉を聞いた瞬間、親父は母さんから手を離し、俺に襲いかかってきた。

だが、


「うん?」


親父は頭を抱え込み倒れた。


「ぐわぁぁぁ!」


そこには悶え苦しむ親父の姿があった。

どうなってやがる。


「アーク、俺は本物のお父さんだ。」


この感じはお父さんだ。

さっきとは明らかに雰囲気が違っていたからすぐに気づいた。


「アーク、お父さんから...の、お願いだ...俺を殺せ!」


「えっ?」


俺は親父の願いごとに驚きを隠せなかった。


「今、お父さんの中にはお父さんじゃない、何か別の者が入っている。今は、抑え込んでいるがまた、いつ出てくるかぁぁぁ!」


「親父!」


親父が苦しみ始めた。俺は殺すべきなのか躊躇ってしまった。

だが、母さんは違った。


「やぁぁぁぁ!」


母さんは自分の剣を持ちお父さんに襲いかかった。

だが、少し遅かった。


「死ね!ミユキ!」


剣を振り下ろそうとしたその刹那、尖った岩が母さんの腹を貫いた。


「グハッ!」


血反吐を吐き、腹からも赤い液体が流れた。

岩は母さんの血で赤く染まった。


母さんの心臓はまだ、貫かれてなかった。

まだ、助かる。

でも、


「いいのよ。アーク、」


母さんは今にも消えそうな声で話しかけてきた。


「あなたは逃げなさい。

お父さん、いえ、こいつは私が相手をするから、だから、逃げて...」


母さんは最後まで俺は守ろうとした。その傷ならまだ、助かるかもしれない。でも、俺が親父を...


俺は殺せないだろう。逃げるのが正解だ。

だが、それでは母さんが...

俺は母さんの顔を見た、母さんは涙を流していた。


その時だった。俺の頭の中である言葉が流れてきた。


『困っている人を助けろ!』


俺はその場に落ちていた剣を拾い、親父に襲いかかった。


「おりゃぁぁあ!」


親父の首を切り落とした。


俺はこの時やっと親父の言っていたことを理解した。


親父は死んだ。

親父の中に居た何かはどうなったかは知らない。

俺は母さんを病院に運ぼうとした。


「アーク、ありがとう。でももう私は助からない。」


母さんはそう俺に告げた。


「俺は諦めない。親父に言われたんだ!困っている人を助けろって!英雄になれって!」


「ふふっアークは英雄になりたいの?」


母さんは何故か笑っていた。


「良かったわ、なりたいものが見つかって。」


母さんは俺がやりたいことを見つけて安心した。


「今は、喋らないで。」


「いいのよ、私はもう助からない。

それと私達の家に私の剣とお父さんの剣があるからそれを持っていきないさい。」


母さんは俺に親父と母さんの剣を持ってどこかに行くように言った。


「そんなことは今は、どんでもいいだろ!」


このままだと母さんは、


「もういいの。だから、最後に私のお願いを聞いて!」


俺は歩くのをやめた。

母さんの最後の願いを聞こうとした。


「お父さんみたいにかっこいい英雄になってね!」


最後に母さんはそう言って目を閉じ、絶命した。


◇◇◇


俺は結界の近くまで来ていた。

レミの助けを呼ぶ微かで消えそうな声が聞こえた。

体が勝手に動いた。

まるで誰かに押された感じだ。


あぁ、分かってるよ。

母さん、親父!


俺は結界を破壊し、ドラゴンのモンスターに向かって落ちるように突っ込み、かかと落としの構えをした。

足に炎を纏い攻撃体勢に入った。


『困っている人を助けろ!』


親父の言葉が頭に過ぎった。


あー分かってるよ!


(ドーン!)


爆発のような音が響き渡った。


ドラゴンがよろけている。

ちゃんと効いているみたいだな。


「あなたは?」


今にも消えそうな微かな声だった。


俺は少女の顔見た。

涙を零している姿はまるであの時の母さんだ。


あの時と同じ状況。


あの時は救えなかったけど、今は違う。

今の俺なら救える。


さっきまでドラゴンに向けていた殺意を抑え、俺は笑みを浮かべた。


俺の夢はあの十二歳の時から変わらねぇ!


(大切なものを助けること!みんなの英雄になることだ!)


俺は少女の質問に答えようとした。


「俺か?俺は...」


少女の方を向いて、笑顔で答えた。


「君の英雄さ!」


皆さんこんにちは鬼龍院天音です。

はい、先に言います。

次回はSSランクモンスターのドラゴンVSアークです。

ここも私の表現力が試される場なので頑張ります。

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