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全てを金に変える王子

作者: しいたけ

これを投稿したら寝ます

 長きにわたる戦争が終わりを告げ、偉大なる王が生まれました。


 偉大なる王は世界を手に入れると、家臣に跡継ぎを伝え、自らは病魔に耐えきれず若くしてこの世を去りました。


 跡継ぎには、今年で二十歳になる先代の息子が選ばれました。



 新たなるは苦労無く、世界を引き継ぎましたが、それに満足しませんでした。何故ならば、生まれながらに平伏す民を見続けた息子は、それが当たり前だと思っていたからです。


 金を投げれば民は飛びつき、家臣は喜び、女は思いのまま。王は全てを金に頼るようになりました。金は全てを解決する。若き王はそう強く感じたのです。


 しかしそれも長くは続きません。


 加減を知らぬ王が金をばらまきすぎたので、金庫は次第に空になっていきました。


「もっと金が欲しい!」


 王子は金庫で金を握りしめ、そう叫びました。



「そうか、ならばやろうぞ」


 煙のように現れたのは、みすぼらしい老人でした。


「どこから現れた貴様」


 腰のサーベルを老人の喉元に突きつけますが、老人は眉一つ動かしません。


「金が欲しいのか?」


「いらないと言う奴がいるか?」


 王は老人をにらみ付けました。すると老人が「どうしても欲しいか?」と少し眉を上げました。


「全てだ」


 王がそう告げると、老人が喉元のサーベルを指で突きました。


 すると、サーベルが一瞬で銀貨二枚に変わってしまいました。


「この力をやろう」


 驚く王をよそ目に、老人は煙のように消えてしまいました。



 王は直ぐに家来を呼びました。


 袖の下を期待した家来達が、ぞろぞろと王の下へやってきます。


「ふむ」と、王が家来の一人の頭をさわりました。


 すると、その家来が銀貨四枚に早変わり。

 家来達は酷く驚きますが、王は笑い、そして次なる獲物を狙うように家来達を見ます。


 家来達が一目散に逃げ出すと、王は女を呼びました。

 王に気に入られたい女達は、我先にと王の傍へと集まります。


 王が次々と女達に触れ、皆が金貨へと変わり果てると、王の周りは静かになりました。


「これはいい」


 王は醜い笑いを浮かべました。



 王の不思議な力の話は直ぐに世界へと広まり、人々は恐怖におののきました。


「この力を恐れて皆が平伏す。金をばら撒く必要もない。そして力で金は貯まる。言うこと無しだ」


 王は先代を超えたと確信し、そして手に入れた金で巨大な王の像を作りました。


 そして、価値があり自分に懐かない人間を片っ端から金に変えた王の周りには、王にこびる安い人間しか居なくなりました。



 それを見た隣の国は、ここぞとばかりに王に戦を仕掛けました。


 王が兵を引き連れ迎え撃ちますが、兵は全て二束三文。後は金に変わり果ててますので、戦力の差はすぐに歴然となりました。


 兵が倒れると王は崖に追い詰められますが、全てを金に変えることが出来るので、中々捕まえる事ができません。


 しかし、王が足を滑らせると、真っ逆さまに崖の下へと落ちてゆきました。崖の下は湖です。


 兵達がゆっくり崖の下を覗き込むと、鈍い輝きが湖を埋め尽くしておりました。


 王は銅貨の湖の中で動けなくなり、重みで潰され死んでしまいました。

おやすみなさい

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― 新着の感想 ―
[一言] ミダス王と違って飲み食いするものまで貨幣に変わることは なかったようですね。
[良い点] 寓話仕立ての私小説とは中々。流石です♪
[一言] 王様が触ると水もお金になっちゃうのかー。 食事の時は誰かに食べさせてもらっていたのかな? じゃないと、パンも飲み物もお金になっちゃいますもんね。
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