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デイドリーム

 黒い霧、ただ無慈悲に降り注ぐ黒い雨。

 もちろん、本当に黒かったわけではないだろう。

 黒い霧なんて無かっただろう、あるとすればそれは心の靄。

 そして、雨は心にざわつくノイズのよう。

 あの瞬間、俺の心は濁りきった。そして、そのきっかけはあまりにも単純で…

 例えるなら、水道から垂れた一滴の水。

 言うなれば、かの有名なバタフライエフェクト。

 ただそれだけで、1人の人生なんて簡単に変わってしまうという真実をあの日俺は初めて知った。すまなかった、と言えばいいのだろうか。

 それとも、ありがとう、とでも言えばいいのか。

 いや、そのどちらも違うような気がする。

 ただ、彼女がいなくなって、俺だけが名誉を掴んで…それは正しいのだろうか。

 ならば、俺も消えよう。歴史の闇に。

 俺も沈もう、唯一つの…変哲も無い個に…

 これで何もかもおしまい、日常も、非日常も無常に、今、この瞬間終りを告げた…


「はっ!」


 俺は目を覚ます、いや目を覚ますと言う表現は正しくない。

 これはいわゆる白昼夢と言うやつだな。

 聞いたことがある、何でも満たされることの無い欲望、願望を満たすために、

 夢に似た非現実的な空想を起きている時に夢のように見ると言う現象らしい。


 …あれが?あれが俺の満たされることの無い欲望?

 いやいや、そんなのは絶対におかしい。

 なにせ、あれは悪夢だ。

 最悪の絶望感を味わった、それにあれは一体どんなシチュエーションなんだ。

 彼女とは誰だ?そもそもその僅かな出来事って何だ?

 無性に気になってきたぞ。

 …まぁでも所詮は俺の頭の中が生み出した空想。

 武司が教えてくれるアニメを見る機会が多かったから、きっとそれを夢に見たんだろうな。

 あんな感じのアニメとかありそうだし。

 とりあえず、忘れることとしよう。


 さ、てと、リイナとか言う人の案内にでも行くか。

 でも、今家にいるのか?とりあえず桜花の家に行ってみるか。


「マスター、会計をお願いします。」

「了解した。」


 そういえば、桜花金払わないで行ったな。

 まぁいい、お互いに金は有り余ってるからな。

 今度何かさり気なく奢って貰えばそれで。


「ありがとうございました。」


 礼をして、店から立ち去ろうとすると。


「待て」


 マスターから呼び止められた。


「どうかしましたか?」

「疲れた顔をしているな。これを持って行くと良い。」


 そう言ってマスターは俺に紙袋に入った何かを差し出した。


「良いんですか?」

「かまうな、いい物が入っている。

 時間があるときにでも見てみろ。」

「分かりました、マスターがそう言うのならありがたく貰っておきます。」


 人の行為は無碍にするものではない。こういう時は変に遠慮するのは逆に良くない。

 俺は素直に受け取ることにした。何が入ってるかは分からないがこのマスターの事だ。

 悪いものは入っていないだろう。


「では、失礼します。」

「あぁ、またいつでも来るがいい。」


 店を立ち去る、やはりここの店のマスターはとてもいい人物だ。

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