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高校での日常

 さて、俺は無事に教室に到着した。


「おはよう、ジュン。昨日の激リメイク最新話見た?」


 俺に対して、友人のアニメオタクの武司が話しかけてきた。

 背丈が高く、スタイルがよく、優しい目つきに透き通るような茶髪が特徴的な美男子だ。

 あまりオタクっぽくない外見のオタクである。

 ちなみにジュンとは俺のあだ名だ。

 だが、俺の名前はジュンどころか、じの字もつかず、掠ってすらいない。

 なんでも、武司に言わせれば、とあるアニメのジュンというキャラと俺の姿が似ているらしい。それが広まって、今ではアニメを全く知らない奴らにもジュンと呼ばれるようになった。もはや、先生に本名で呼ばれても一瞬反応できないレベルで呼ばれている。


「いや見てないな。昨日はベランダでコーヒー飲んでゆっくりしてた。」

「あのくそ広い家のベランダかよ…っていうか昨日は寒くなかったか?」

「いや、丁度いいくらいだ。で、そのアニメがどうしたんだ。」

「あぁ、それなんだけど。リメイクだと思ってたら、実は続編だって事が明らかになってさ」


 そう隆が言いかけたときに教室の扉が開き、先生が入ってきた。


「ういー、HRはじめんぞー。」

「えー、先生まだ7分あるじゃん!」

「つぅか、いつも寝坊すんのになんでこんなに今日はえーんだよ。」

「「「カーエーレ、カーエーレ」」」

「うるせぇ!お前らそれが先生に対する態度かよ!」


 入ってきた瞬間帰れコール。さすがはうちの担任斉藤演矢である。

 超嫌われ者であり、授業はただ教科書を読むだけという適当さに定評のある人物である。

 まぁ、その分テストは教科書からそのまま出るので、異常なまで簡単なのだが、

 たまに思い出したかのように、難しい問題を出してくる。

 しかし、その問題も大抵はそこらへんの参考書の丸パクリである。

 何故この男が教師になれたかはもはや学校の七不思議の一つである。


「うちの担任は相変わらずだな、ジュン。」

「ん?そういえば、桜花おうか来てなくないか。

 いつもあいつ俺より早いだろ。」

「あー、桜花ちゃんか。確かに、何かあったのかな。」

「おはようございまーす。」

「あっ、来た。」


 野崎桜花、俺が東京の小学校にいた時の同級生で、中学は別だったが何度か、会いに行ったり、メールのやり取りをする腐れ縁だ。

 なぜか高校になってこっちに引っ越してきた。

 容姿端麗、頭脳明晰+明るくボーイッシュで人当たりもよいというチートっぷりだが、

 小学校の時一緒だった俺からすれば、昔ほどではないが世間知らずでアホな所がある。

 それこそ、下手したら紗希以上に。

 そもそも、今はそうは見えないし、溶け込んでいるから分からないが、こいつは生粋のお嬢様だ。小学生の時は執事まで学校に来てたと記憶している。

 それゆえにちょっとたまに頭のねじが飛んだ発言をする。

 いや、悪い奴ではないのだが。


「おっ、野崎珍しく遅いな。どうした。」

「昨日、親戚が家に来てしばらく泊まることになったので、色々と忙しかったんですよ。」

「へー、女か?」


 その先生の軽い質問にクラスメイト達は素早く反応する。


「せんせー、サイテー」

「早速気にするのがそこかよ!」

「早く死ねばいいのに…」

「桜花かわいそう…」


 非難集中、クラスが一致団結する瞬間である。

 なんて素晴らしいんだ(棒読み)


「女か聞いただけでなんだこの反応!?」

「女の子です、それと明日ここに転校してくるみたいですよ。」

「なにっ! 野崎の親戚なら期待できる!」


 ガッツポーズを決める斉藤先生。

 いくらなんでも正直すぎる。


「それ先生が言う言葉かよ!」

「普通男子生徒の反応だろうが!」

「この色欲魔ー!」


 そういうのは本来その台詞を言うはずのポジションである男子生徒達だ。

 というか、こいつらも多かれ少なかれ先生と同じ気持ちを抱いているだろうに、

 同じ男にまで言われてしまっては世話ないと言うものだ。


「うるせぇ! 俺はまだ若いんだよ!」


 やはりうちの担任は色々とおかしい。

 教師としてというより人間としておかしい。


「ジュンおはよー」

「おう、桜花おはよう。」


 軽く、俺と挨拶を交わすと桜花は自分の席に着いた。


「ひゅー、仲のいい女友達とはいいもんだねぇ。」

「それなりにモテるお前には言われたくないな。

 なんで、そんなモブみたいな名前で無駄にイケメンなんだよ。」

「武司はモブの名前じゃねぇよ!

 ニートの名前でも、青鬼のタンスでガタガタしてるあいつでもないからな!?」

「うっし、じゃあ全員揃ったし始めんぞ。

 まずは配布物だ、後ろに回せー」


 まぁそんなこんなでHRが始まり、午前中授業が始まったわけだ。

 俺は自分で言うのもなんだが、成績はいい方だ。

 ただそれは自分の才能ではなく、日ごろの努力の結果だと思っている。

 中学から人の2~3倍は勉強し続けているものとしては当然である。

 体育も昔から体を動かすのが好きだったから大得意だ。

 正直学校の授業で困ったことは一度もない。

 まぁ、そうはいっても上には上がいるわけで…


 たとえば、英語の授業。


「はい、じゃあここの文を訳して、回答を述べよ。」

「はい、少なくとも時々はぐずぐずと先送りにしてしまう人は95%に上る。

 答えは2番です。」

「よし、じゃあ次は。」


 とまぁ俺は何の不自由もなく回答することが出来、授業で間違えたことはほとんどないし、

 できるほうだと言える。因みに今の問題は高1にしてはかなり難しい部類だ…しかし。


「じゃあ、武司。お前この英文の訳を要約して英語で答えろ。」


 正直、こんなのは東大レベルに近く、こんな田舎の高校で聞くべき内容ではない。

 日本語で要約するならまだしも、英語で長文を要約など高校1年で扱うような内容ではない。


「はい、spiders used to build their webs・・・」

「うむ、さすがだな。武司。みんなも見習えよ。」


 武司は、海外留学の経験もある優等生だ。ただのアニメオタクではない。

 武司専用の問題を先ほどのように教師がわざわざ用意するほどに優秀であり、噂では、中学校入学の時点で東大英語合格点を取っていたという話もある。

 その上、中国語、オランダ語、ロシア語、イタリア語などを話せるバイリンガルらしい。

 本当になんでこんな田舎の高校にいるのか意味不明である。

 ……が、こいつは典型的な特化型だ。

 その証拠に国語や日本史は学年最低クラス。

 それなのに英語が得意とはお前は本当に日本人かと言ってやりたいが、もしかしたら日本より、海外にいた期間の方が長いのかもしれない。

 そういう意味では、一番やばいのは俺の腐れ縁こと友人の桜花だろう。

 なにせ、ほとんどの教科が学年1位。

 その上、習い事やら本業やらでクソ忙しい上に睡眠時間が10時間近いらしい。

 寝すぎだ、逆に疲れないか心配になるレベルだ。

 となると一体いつ勉強してるんだよ。いや、もしかして学校以外はしてないとか?

 それだけ勉強時間が少ないのに何でこんな成績になるんだ…

 そういえば、桜花の本業と言えば今日桜花の主演作だったな、一応見ておこう。

 あれ? というか、俺の周りいろんな意味でおかしいやつしかいなくね?


「はい、じゃあ終わり。野崎さん号令。」

「気をつけ、礼、ありがとうございました。」


 授業終了、まぁいつもどおりの英語の授業だった。

 次が最後の授業だな。


「次は体育だな、ジュン。」

「おぉ、そうだったな。男子はD組と合同の剣道か。」

「いつも無双、期待してるぜ!」

「たまたまだよ、剣道なんて学校の授業でしかやったことないし。」


 俺はなぜか剣道は素人にしては強く、負けることはほとんどない。

 だがそれはもちろん素人の中での話しだ。

 ちゃんと剣道で実績を残しているような奴らには太刀打ちできない。


「でも、先生も驚いてたじゃねぇか、っていうか先生に勝ってただろ。」

「まぁな、でも先生の専門は陸上だろ。勝ててもおかしくない。

 それに今日戦うあの後藤には勝てないだろう。」


 D組の後藤は全国大会の最終予選まで行った実力者だからな……

 文字通り桁が違う。


「あのゴーストナイトか……」

「何だその中二チックな異名は。」

「あれ、知らないのか。あいつの存在感の薄さと並外れた腕前から

 剣道大会の時につけられた異名だぜ。」

「なんというか……かわいそうだな。」


 だが、この異名は言いえて妙かもしれない。

 なぜなら、あいつは全国大会の最終決戦まで行ったにも関わらず、

 誰にも注目されていないし、

 たまに先生からも名簿に名前があるのに点呼を飛ばされるレベルだ。

 ここまで来るとあいつはある意味すごい奴なのかもしれない。


「いや、本人も喜んでたぜ。これで少しは目立てる! ってな。」

「相変わらず、変わった奴だ。」


 そんな会話をしながら、更衣室に向かおうとした時、ふと桜花に呼び止められた。


「ちょっといいジュン?」

「ん?なんだ?」

「今日、昼話したいことがあるんだけど」


 ………なるほど、大体理解したぞ。そういうことか。


「分かった、じゃあ駅のほうにでも行こう。午前授業だからな。」

「わかった、じゃあいつものところでー」

「おう、じゃあな」

「待ってるよー」


 軽く手を振って桜花は女子の体育が行われるグラウンドへと向かっていった。


「えっ、なにデート?」

「違う、まぁ色々と込み入った事情があるんだ。」

「なんだそりゃ、まぁあんま聞かないほうがいいんだろ。」

「まぁな、さてそんなことより、どうやってゴーストナイトと戦うかを考え…」


 そんな話をしていると、目の前に銀髪の外国人らしき女性が通りかかった。

 …あんな教師はいないし、生徒もいない。

 ともすれば。


「今の通りかかった奴、ひょっとして桜花の言ってた転校生じゃないか?」

「えっ、あの美人さんがか?っていうか、桜花ちゃんって海外の親戚とかいるの?

 俺みたいなクォーターとかもしくはハーフじゃないよな?」

「あいつはどうみても日本人顔だろうが。まぁ、でも海外の親戚は…いたかもしれないな。」


 いたかもしれないが、小学生の頃からの付き合いとはいえ

 あいつの家庭事情はそこまで詳しくないし、よく分からない部分も多い。

 なにやら、色々やってる会社の令嬢だというもの凄いざっくりした認識しかない。

 …まぁどうでもいいことだ。

 授業までそこまで時間はないし、俺は早歩きで更衣室へと向かう。


「そっかー、しかしメッチャ美人だったな。

 あんな美人あんま見たことないぜ。」

「そこで、見たことないと言わないのがお前らしいな。」

「まぁ、こっちだって無駄に世界を渡り歩いてるからな。

 でもそんな俺が言うんだぜ、間違いない。」

「だろうな、これは月曜のクラスが騒がしくなりそうだ。

 うちのクラスじゃなければいいんだけどな。」

「なんでだよ!あんな美人が来たほうがいいに決まってんだろうが!

 はっ!さてはお前ほ」

「誰がホモだ。ノンケだ、ノンケ。」

「そのノンケっていう言い方が既にホモっぽいんだけど…

 実際お前今まで彼女できたこと無いんだっけ?」

「まぁな。俺の喪男っぷりはお前も知っての通りだ。」

「はっ、よく言うぜ。美人の幼馴染がいるくせによ。」

「あぁ、本当にただいるだけで、他には何もないけどな。」


 俺も若かりし頃は期待しなかった訳ではないが、今となってはそういう感情は全く無い。

 というか、別に彼女とか欲しいと思わない。面倒くさそうだし。


「今めんどくさそうだし彼女いらないと思っただろ。

 本当はモテたい奴の考えだぜ?」

「お、思ってないわ!」


 こいつ、心が読めるのか……? 

 相変わらず、油断できない奴だ。モブみたいな名前のくせに。


「お前からアピールすれば多分……ってもう着いたか。

 さっさと着替えようぜ。」

「だな、急がないと遅刻する。」


 手早く更衣室で着替える。そして着替え中にこっちを時々チラ見してくる武司。

 おい、俺にホモ疑惑をかけておきながら、今のこいつの行動の方がホモくさいぞ。

 まぁ、こいつはホモじゃないだろ…多分。


 そして、いつものように普通の授業が再開される。

 普通の剣道の授業、特にこれといって変わったことが起きるわけでもない。

 しいて言えば、先生がゴーストナイトこと後藤に一瞬で負けて悔しがってたくらいか。

 今日はいつも先生が出張で剣道専門の体育教師だったんだけどな。

 あいつ本当に人間かよ。

 セミプロ格闘家並に強い武司とそこそこ運動神経の良い俺、クラスで一番剣道が強い服部の3人がかりで行って一瞬で負けたぞ、

 本当にいつ1本とられたか分からないレベルだ。

 しかし、そんな事はまぁ、取り立てるほどのこともない瑣末事。

 そのまま、何事もなく終わりの鐘がなり午前授業は終了する。


「じゃあ、また月曜なジュン!」

「あぁ、お前は今日どうする?」

「もちろん、アニメタイムだ! さっき言ってたアニメを1期から見返すぜ!」

「あぁ、続編ってわかったから見返すのか?」

「馬鹿野郎!

 それもあるが、昔の作画が違う藍那ちゃんをもう1回愛でる為にきまってんだろうが!

 すぅはぁすぅはぁ、1期9話の逆作画崩壊回の藍那タン可愛いよぉ」

「お、おぅ……」


 こ れ は 酷 い。

 折角のイケメンが台無しとかもはやそういうレベルじゃないぞ。

 こいつの事を好きな女子がこれをみたら余裕で卒倒する。

 俺は何も見なかったことにしてそのままその場を立ち去った。

 桜花との待ち合わせもあるしな。

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