死神起床、集会
…そんなこんなで迎えた翌日、午前5時俺の安眠は妨害されることになった。
「お``に``い``ぢゃん``~~!」
謎の叫び声が聞こえる、それと同時にこちらに強烈な足音が迫ってくる。
異常だ、異様だ。
6時におきて仕度をし、7時20分に家を出て、
授業開始十分前の8時50分には教室で待機するのが、俺のライフスタイル。
おかしい、何を考えている中二病似非妹。
そして、唐突に俺の部屋のドアが開かれた。
「どうした、化け物染みた叫び声をあげて」
「遅刻した~!」
「はっ?」
2度目だが今は朝5時、遅刻したとはどういうことだ。
早すぎるくらいだろう。
というか、学校があるのか?
ならなんでこんな所で泊まった?
そもそも、よその者のはずでは?
それに今日は土曜だ、俺の学校が午前授業なだけで普通の学校には授業がないはず。
「早すぎるくらいだと思うんだが、というか学校あるのか?」
「違うよ、集会だよ。死神たちの。」
ただの電波だった、いい中二病だ。うん嫌いじゃないぞ。
まぁ、早起きは三文の徳というし、たまには悪くないだろう。
「そうか、それは困ったな急いで支度しろよ。」
あくまで設定に乗ってあげる。本当に妹が出来た気分だ。
「あれ? 何も言わないの? ほら中二病の設定にしてもやりすぎだーとか。
俺の安眠をそんなことで妨害するなーとか?」
ついに設定と認めたか、そこはちゃんと貫き通せよ。
「別に、設定に一生懸命なのはいいことだし、たまには早起きに悪くない。
でも設定と認めるのはあんまり良くないぞ。」
「…変わった人。って! 設定じゃないし! 本当に死神なんだってば!」
「はいはい、で、わざわざ遅刻している中、
俺の部屋まで来たのには何か意味があるんだろう。」
「あっ、そうそう。パソコンない? 仲間に遅刻の連絡をしないと。」
仲間……か、こんな朝早くから中二病に付き合ってくれるなんて良い友達を持ってるな。
それなら協力しないわけにはいかない。
「分かったリビングの奴を貸してやる。っていうかスマホとかないのか?」
「そんなチートアイテム持ってないよ。異世界アニメの主人公じゃないんだからさ」
「現代の必需品だわ、ほら早く連絡してやれよ。友達待ってるんだろ。」
「いや、確かに友達もいるけど、先輩の死神の方が多……まぁ、いいか。
じゃあ準備宜しく。」
「おう、待ってろよ。」
俺は少女をリビングに招き、パソコンを準備した。
軽く準備を終わらせると、少女はパソコンを使い始めた。
……それにしても危なっかしいタイピングだ。
こいつはオタクだから、機械の類は得意なのかと勝手に思っていたが、
タイピングはかなり危なっかしい、というか両手の人差し指で打ってる。
…さて、早めだが朝食を作るか。
と言っても、昨日のうちに仕込みを済ませておいてあるから、そんなには時間がかからない。今日の朝食はカレーライスとサラダとコンソメスープだ。
土曜と言うこともあって簡素な朝食である。カレーとスープを適度に温めつつ、その間に野菜を切っているとあっという間に出来上がった。
そのまま、食器を用意して配膳し、冷蔵庫から缶コーヒーを取り出す。
時間のない朝には缶コーヒーだ。割高ではあるが、あいにく金なら腐るほどある。
味もまぁ及第点をやれるものを選んでいる。今日は時間があるが毎日の習慣と言うものだ。
そして、朝に缶コーヒーを飲むからこそ、夜の自分で入れたコーヒーのおいしさが光るのだ。
リビングには大きく光が差し込むようになっており、朝が来たと感じさせられる。
木製の机でゆったりと食べる。この優雅な食事が夜ほどではないが俺は好きだ。
「いただきます」
手を合わせて、食事を取る。
一日の始まりだ、さて今日は授業を終わらせた後どうしようか。
真面目に勉強をして過ごしてもいいだろう。勉強は好きだし。
それか、あいつらと一緒にどこかに出かけるのもわるくない。
休日と言うのはいいものだ。適度にあるのが良い。
毎日休日というのは嫌いだし、毎日平日と言うのも嫌だ。
この1日半の休みと言うのが、俺にとって絶妙だと思うのだ。
「うわ! カレーだ、おいしそう!」
「ん? なんだまだ行ってなかったのか?
早く行ったほうがいいんじゃないか?」
「そ、そうだね。うん遅刻してるしね……ジュル」
こいつ分かり安すぎるだろ、露骨過ぎるわ。
まぁ、こんなに朝早くからだ、後で腹が減るのも困るだろうな。
「このカレーは作り置きのために多めに作っておいてある。
サラダの野菜はまだあるし、コンソメスープは夜も使う予定で多めに作ってある。
良かったら食べるか?」
「本当に! 食べる食べる!」
「時間は?」
「もうどうせ、遅刻してるからいいよ。遅れてくるって伝えてあるし。」
それはさすがに待ってくれてる友達が可哀想な気がするが…
とはいえ、ここまでこいつに付き合ってやるような友達だ。
おそらくこいつのこんな性格も理解したうえで付き合ってるんだろう。
じゃあ、まぁいいか。いや良くないだろうけど。
俺はテキパキと朝食の用意を済ませた。
「ほら、冷めないうちに食べろよ。」
「ありがとう! いただきます! ん! おいしい!
すごーい! お兄ちゃん主夫みたい!」
「自炊は慣れててな、というかそのお兄ちゃんって言うのやめろ。
俺はお前の兄じゃない。」
「あー、うんそうだね。もう洗脳は無理そうだし。
うん、そこはおとなしく認めるよ。
じゃあ、義理の兄と書くほうのお義兄ちゃんで!」
「それ、発音は変わってないからな。まぁいいけど。」
「いいの!?」
「どうせ、これ食ったら家帰るんだろ?
これでお別れだし、別にこだわることもないだろ」
「えっ? 私ここに住むけど?」
「……はっ?」
俺はおもわず耳を疑った。
何だよそれ、おいおい自分のことをお義兄ちゃんと呼ぶ美少女が突然押しかけて
家に住み着くとか、どこの2流ギャルゲだよ。いやまぁ、ギャルゲやったことないけど。
「親には何ていってるんだ?」
「両親はこの世界にはいないよ?」
「……そうか、なら学校は?」
「光琳中学に転校が決まってるよ? 月曜から編入。」
「うちの高校のすぐ近くじゃないか。というか俺の母校だ。
じゃあなんだ、身寄りのないお前を見ず知らずの俺に預かって欲しいと。」
「うっ、まぁそーいうことになっちゃうかな?
本当は妹だって洗脳して、違和感なくここに溶け込みつつ調査を続けようと思ったんだけど……。
やっぱり……無理……だよね?」
「……好きにしたらどうだ」
「えっ? それって。」
「中学生一人養うくらいどうってことはない位金はある。
住む場所もあまってる。正直俺としても困ることはない。
まぁ、異性と同棲するのも初めてじゃないし、お前は悪い奴ではなさそうだ。」
「えっ!? 彼女と同棲とかしてたの!? 高校生なのに?」
「いや彼女じゃない、普通に友人だ。」
そういえば、あいつは元気でやってるだろうか。
まぁ、さすがにもう大丈夫だとは思うが様子を見に行くのも面倒だしな。
あいつなら大丈夫だろう、多分。
「友達以上恋人未満ってことだね!」
「いや、普通に友人だが……まぁ当たらずとも遠からずってとこかもな。見方によっては。」
「おぉーやるね、お義兄ちゃん。
さすが! お義兄ちゃんってカッコいいし、家事も出来るし優しいしモテそうだよね。」
「残念ながら、俺はカッコよくもないし、モテない。
彼女いない暦=年齢の男だ。」
「そう? いやまぁ確かに雰囲気はちょっと……いや、かなり近寄りがたいけど」
おい。もうその時点でモテないだろ。
「でも、背高いし、顔はカッコいいから、普通にしてればモテそう」
「茶化すな、そんなわけないだろ。」
事実、俺は全くモテない、いや確かに女友達はいる。
だがあれだ、「○○くんって優しいけど、友達としか見れない」と言われるタイプの人間がいる。その○○くんの中に入るのが俺だ。
仮に百歩譲って俺がカッコ良かったとしよう、
だがそうだとしてもモテていないという事実には変わりがない。
「ちなみにお義兄ちゃん、結構背何センチ?」
「182だな。確かに高い方ではあるか」
「いや、普通に高いよ! 私なんか150ないんだよ! それで、高い”方”なんてよく言えたね!」
「お、おぅ…」
結構気にしてるらしい。背が低い方が可愛いと思うのは俺だけだろうか。
なんていうか、こいつが背高かったら違和感が半端ないと思う。
「ところで話は変わるが、俺はお前のことを何て呼べばいいんだ。」
とりあえず、怒らせたままでも悪いので別の話題を振ってみる。
「紗希でいいよ。」
「分かった、フルネームは?」
「安部紗希、陰陽師の安部の方の安部ね。
紗希はいとへんに少ないって書く紗と希望の希。
でもこれは仮の名前で死界の死神としての名前はレイ…」
「分かった、そこまでで良い。
ほら、そろそろ食べないと冷めるぞ。」
「うわあああ! 本当だ! 話してる場合じゃなかったああああ!」
おい、さっきの遅刻に気づいた時並に動揺してるぞこいつ。
どんだけ、食が重要なんだ。それともそこまでこれを気に入ってくれたのか?
割と手抜きなんだが、これ。
「いただきまーす。」
そういうと、紗希は猛烈な勢いでカレーを食べ始めた。
「うおおおおおおおお!!!」
カレーを食べながら叫ぶ人間を俺は初めて見た。
というか、どう考えても叫んだ方が遅くなるだろ。
それに、よく叫んでるのに口から何もこぼれないな。その技術もっと別のところに活かせよ。
「おらああああ!!!」
超高速でコンソメスープを飲む、いやもはや飲むというより吸引してる。
というか、こいつは何でこんな戦闘中みたくなってるんだろう。
……そして。
「うわああああ!!! そんなに好きじゃないサラダだけが残ったああああ!!!」
ここまで来て俺は一つ気づいたことがある。
これはもしかして……
こいつ、アホだな。
「うわあ、うわあー、ほあーん。」
謎の叫び声をあげながら、サラダを食べる紗希。
しかし、そのスピードは先ほどとは比べ物にならないくらい遅い。
……俺はその光景をただ呆然と見つめていた。
なんていうか……小学校からの腐れ縁の女友達に似てるなこいつ。
とくに、このアホさ加減が。外見は全く似てないけど。
というか、俺も食べないとな。時間に余裕があるとはいえ、
冷めてしまってはおいしくない。
「いただきます。」
そういって、俺も食べ始めた。
……それにしても誰かとこうして家で食事をするというのは一体何年ぶりのことだろうか?
外でなら、誰かと食べる機会はもちろんあるが、
家の中で、しかも自分の手料理となると一種の懐かしさすら覚える。
そんな感慨に浸りながら、ゆっくりと食べていると紗希はもう食べ終わったようだ。
「お義兄ちゃんごちそうさま! かなりおいしかったよ!」
「そりゃお粗末。それと、早く友達の所に行ったほうがいいと思うぞ。」
「うん、ありがとーお義兄ちゃん。行ってくるね~」
「あぁ、行ってこい。」
さて、妹(仮)を見送ったわけだが、俺にはこの朝食を食べ終えて後片付けをする時間を
差し引いても未だに時間に余裕がある。
……少し体でも動かすか。
そう思った俺は、食事の後片付けを済ませてから、
運動着に着替え、準備体操をしてから家の周りを軽くジョギングした。
無駄に広いので家の周りを走るだけでもそれなりの距離にはなる。
5週ほど走ってから、筋トレをしてみたりする。
そんな事をしているうちにいつもの時間になり、さっさと制服に着替え学校へと向かった。
「ごめんなさーい、遅れましたぁ!」
紗希は息を切らしながら、その集会の場所へと到着していた。
「全くお前と言う奴は、まだまだ未熟者よのぅ。ガハハハ!」
見た目は60歳ほどでありながら、ガッシリとした体つきで180cm以上ある白髪の男は、
紗希を豪快に笑った。
「レビちゃん、あれからうまくいったの? 洗脳。」
17,8ほどの年齢で流れるような銀髪、女性にしては高めの170cm前半ほどの背丈のスタイルのよい美女は紗希に聞いた。
レビちゃんとは紗希の本名レイヴィをもじったあだ名である。
そう、紗希の言っている事は本当だった。
設定でも何でもなく、彼女は一応本物の死神である。
ただし、実年齢も見かけどおりの子供だ。
「いや、何か失敗した」
「「えーーー!?」」
「おいおい、何ミスってんだよ。相手は一般人だろうが」
物陰から20代後半ほどの金髪の男が現れた。
獰猛な表情を浮かべて、紗希を軽く睨み付けている。
「うぅ、何か耐性があったんだよ~。
でもいい人だったから、普通に住ませてもらうことになった」
「なに人間に情けもらってんだよ! 死神としてどうなんだ!」
「まぁ落ち着けい、ヴォル。レイヴィはまだ14なのだ。
これが、死神としてどれほど若いか同じ死神なら分からない訳がないだろう。」
白髪の壮年の男の言葉を聞いたヴォルと呼ばれた金髪の男は
いったん黙りこんだ後、こういった。
「まぁ、確かにまだガキなのにこの任務につくだけの才能があるのは俺も知ってる。
人間で言うところの外見年齢と実年齢が一致してるのはお前くらいのもんだ。
っと、まぁ一応そこのリイナさんもそうだったか、なぁゴロルドのおっさん。」
白髪の男…ゴロルドはそれに対し、頷いた。
「その通りだ、多少のミスは気にすることなかろうて。大局に影響することはない」
「まぁ、普通に暮らせるなら問題ないわね。
で、問題なのは任務そのものよ。今日から調査開始だけど大丈夫?」
「問題ないよ!
この街に潜むっていう死神界を脅かす危険因子を探せばいいんでしょ!
中学校は任せて!」
「私も高校に転入するけど、ヴォルはどうするんだっけ?」
「俺はとりあえず、町の探索だな。
ちっ、この町にいやがる事は分かってんのに、巧妙に気配を隠してやがるのか?」
「ほほぅ、それではワシは我が愛しの娘とともに高校に……」
「あっ加齢臭は来ないでくださいね、あなたの年だと、教師だとしても退職の年齢なので。」
「…………」
ゴロルドは白目をむいた。リーナとゴロルドは実の親子であるが、
最近遅れてきた反抗期か何かなのかやけにゴロルドは嫌われている。
「……まぁ落ち込むなってゴロルドのおっさん。
10年位前は普通に仲良かったじゃねぇか。」
「たった十年でどうしてこうなった…、十年前なんてついこの間のことじゃぞ……
敬語で他人行儀なのがまた傷つく……」
「ま、まぁゴロルドさん、気にしないで」
「うぅ、レイヴィはよい子よのぅ、死界にいるお前の両親が羨ましいわい……」
「そこの汚臭は放っておいて、そろそろお開きにしましょう。
この広い町をくまなく探索するのだから。
そのためにこんなに早く集まったんでしょう?
私はある程度この町を探索したら、一回転入する高校に手続きに行って来るわ。」
「あのリイナ。私もリイナについていったほうがいいかな?」
「その必要はないわ。ところで、レビちゃんは中学の手続きもう終わってるのよね。」
「うん、昨日のうちに大体終わらせといたよ。」
「なら、ヴォルと一緒に探索ね。何かあったら私の携帯に電話してね。
それと、これ地図。で、ここが今の私の拠点ね。
丁度、転入する高校の生徒の家を洗脳できたから良かったわ。
レビちゃんも頑張って、私も頑張るから。」
そう言って、リーナは駆け足でその場を離れた。
「あー、じゃあ俺たちも行くか。レイヴィさっきは悪かったな。」
「そんなに気にしてないから大丈夫だよ!行こうか」
「ガハハ、おぬしはやはり凶悪な面をしておきながらいい奴よのぅ。」
「黙れ、白髪頭」
「グハァ! 己、ワシが気にしていることを……染めたほうがいいかのう」
「ゴロルドさんは白い髪の毛が似合ってるから大丈夫ですよ!」
「よっしゃあああああ!!!」
ゴロルドは年甲斐もなく、大喜びした。
こんな威厳のない男ではあるが、実は5桁は下らないほどの年月を生きてきた
死神界屈指の有力者であり、その実力は死神の中でも最高クラスである。
…最も、その実力を見たものは誰一人としていないが。
「…あのおっさん、本当に強いのか?」
「まぁ、多分強いとは思いますよ。
この重大任務を負かされたのはゴロルドさんだけで、私たちはあくまで付き添いですからね。」
「単独でこの任務を任せられるとはさすがはあの死神大王直属の家来…しかも最古参。
見た目だけならそう見えなくもないが…
相変わらずそれっぽくないな。」
死神大王とは全ての死神をすべる頂点であり、魔王のようなものである。
遥か昔から死神界を支配していると聞くが、その姿を見たものはおらず、
その代わりにいつもモラルドという、男が表舞台に現れる。
大王は実在するのか?それは全ての死神が持つ疑問である。
二人が探索へ向かった後、ゴロルドは一人残された公園でこう言ったという。
「…え、もしかしてワシ一人!?せっかく連れて来たのに!?」




