伊藤 くるみ
私は、鈴木くんの他にもう1人からも恋愛に対しての協力を頼まれている。このもう1人が、鈍感なのかな?とんだ馬鹿なのかな?ひどい勘違いをしている彼女のことをときどき叩きたくなる。
「お願い、くるみ。私に協力してほしいの」
私は、友だちとして千春の話を聞くことにした。
「失恋のショック」
千春は庭野君のことが好きだった。庭野君は競争倍率が高いから仕方ないと思う。
相手は私も意外だったけど……こんなことになるまで名前すら知らなかった存在の人だったし。
「俊哉は幼なじみだからだと思うけど私の味方になってくれたり、困っているときに話を聞いてくれたり、俊哉にはすごく感謝してる」
千春、それは幼なじみだからではなくあなたのことが好きだからだと思うよ。
「今度は私が、俊哉のために力なってあげたい」
「幼なじみとして、私は俊哉のために」
「うん……そうなんだ」
適当な相づちを打ちつつも心の中ではツッこまずにはいられなかった。
「俊哉もそろそろ彼女が欲しいんじゃないかと思って、俊哉も17歳だしデートとかしたいだろうな~って」
「実は……私 鈴木くんのことが好き」
って千春に今 伝えたら千春は私が鈴木くんと付き合えるように協力してくれるのだろうか?でもそんなことをするのは、鈴木くんのことを裏切っているような気がして出来なかった。
鈴木くんからは千春と仲良くしたいって相談されていたのに、千春をキューピット役にしてしまったら鈴木くんの願いは叶いづらくなる。
鈴木くんから相談を受けていなければ、千春に私の気持ちを伝えられていたのかな?いいや、単純に私が弱くて勇気がなかっただけだ。鈴木くんは関係ない。
「俊哉はさ、麻由美のことが好きなんだと思う」
違うよ、鈴木くんは千春のことが好きなんだよ。中学の時からずっと……
「そ、そうなの?」
「私には分かるよ。俊哉とは幼なじみだから」
「幼なじみだから……俊哉はね、私に隠し事はできないよ 俊哉は隠してるつもりかもしれないけど」
分かってない、全く分かってないよ……
幼なじみなら、鈴木くんの嘘を全て見透す自信があるのなら気付いてあげてほしい。彼の好意を。
「想い人の気持ち思われ人には届かず」
どんなにこちらが強く想っていても言葉にしなければ相手には全く届いていないこともある。
「嘘と失恋と妬みは、この世からなくなることはない。人間が滅びたとしてもきっと」
私の好きな映画の冒頭部分に流れるこの言葉がとても大好きで大嫌いだ。
「どうかな?どうすれば麻由美が俊哉のことを意識するようになるかな?」
どうすれば……どうすれば千春は鈴木くんのことを意識するようになるのかな?
「相談はされたの?」
「されてないけど、される前にさりげなくサポートするのがいいと思うの。幼なじみだからできることだし」
「そうかな……私は、鈴木くんから相談されてからでいいんじゃないの?少なくとも私はぁ、そう思う」
「鈴木くんが麻由美ちゃんのことを好きだっていうのは、千春の憶測でしょぉ?鈴木くんは他に好きな人がいるかもしれないし」
「でも、間違いないよ俊哉は麻由美のことばかり見てるし、麻由美のこと可愛いって言ってたし」
「だから……千春!」
「それが、勘違いだって気付かないの?」
鈍すぎる千春にイライラしてしまい少し感情的になってしまった。久しぶりに誰かに対して怒りをぶつけたような気がした。
「…………」
千春は、大きな声を出した私の姿を見て驚いている。何故怒られたのかは多分分かっていないはず。
「ごめん……」
千春に怒った所で何も解決しない。
むしろ私に怒られるべきなのは私自信であるのに。人の相談役ばかりで自分は何も行動しないのはそっちの方が、楽だから、傷付きたくないから、嫌われたくないから。
「いや、私の方こそごめん くるみ。協力してほしいって勝手にお願いなんかして」
「ワタシ、くるみが優しいから甘えていた。私 麻由美と仲のいいっていう自信がなくって」
「ごめん、千春は大事な友だちだけどこの話は協力することはできない。協力するなら中途半端なことはしたくない、全力でやりたいから」
「実は 私も麻由美ちゃんと 自信ないんだよね」
私は、麻由美ちゃんのことは友だちというよりか一目置く存在で彼女と話すときは緊張してしまう。呼び方もちゃん付けだし。私は友だちと呼べるような関係性の人は呼び捨てだ。
麻由美ちゃんを言い訳にして断ったけれど
「この依頼には先客が入っています」
鈴木くんと千春を私の力で結ばせる。その方が2人もきっと幸せになれる。
「鈴木くん、この恋、叶えてみせる」
大丈夫。心配いらないよ この恋はきっと叶う。
だって私は、恋のキューピットくるみだから。




