村上水軍が味方だった件について
お待たせしました。最新話です。
切られた丹羽長秀、信長と対峙する柴田勝家、現れる死神とその家臣。
「足利義氏……」
その名を聞くと信長、勝家、家康、その場に居た信々以外の者は皆固まっていた。
「遅いなぁ、足利ちゃん」
「遅くなりました……申し訳ございません姫様……」
義氏はそう言うと、信々の前に膝をついた。
「もうーおっそいなー私が死んじゃうでしょー」
信々はワンピースをめくり、義氏に銃で撃たれた足をアピールした。
「姫様が撃たれるとは……誰にやられたのですか? まさかここに居る者の中に」
「あははは、全く義氏は冗談が好きなんだからー! ここに居る雑魚がこの私に上田信々様に傷を残すことが出来るわけないじゃん」
信々は義氏を睨みがら、そう言った。
「それもそうですね、まあ、そのお話は後ほど深く聞くとして……とりあえずこいつら殺りましょうか」
「そうだねー」
信々に刀を渡し、義氏は家康の横腹に刺さっている刀を抜いた。
「徳川家康、刀を取れ、構えよ、私と戦え」
刀の血を払い、少し、家康と間を取り、刀の刃先を向けた。
「……少し待ってろ」
横腹から血を流しながら家康は地面に落ちている自分の刀を拾い構えた。
「来い、足利」
「足利義氏、参る」
家康の一声で義氏は切りかかった。
「あっちはもう始まりましたね……」
信々は信長を睨み、持っていた刀を投げた。
「なんの真似だ」
信長は投げられた刀をゆっくりと拾った。
「いやーですねー私はこの槍があるので」
落ちている槍を拾い、槍の先を信長に向けた。
「貴様、ワシを殺る気か……」
「私はあなたを殺る気ですよ」
信長はその言葉を聞くと、信々に切りかかった。
「信長殿、わ、た、し、は、あ、な、た、に、ま、けなーい」
「フッ」
信長と信々の様子をニヤリと笑いながら木の上から見る者がひとり。
時刻は同時刻、伊賀の国、伊賀の里。
「全軍、止まれ!」
俺を助けた花魁のような黄色い着物を着た女性は、真っ白な白馬に乗り、後ろを向き、自らが率いている数千は居るであろう足軽にそう叫ぶと、女性の声を聞いた足軽隊は一斉に足を止めた。
「すごいですね」
女性の後ろに上手くバランスを取りながら乗り、足軽たちを見て俺が感激していると。
「何もすごいことはない、お前も前にしていたではないか」
と女性は笑いながら言った。
「ここはどこですか?」
詮索をされないように、話を逸らした。
「ここか? ここは伊賀の国、伊賀の里だ」
伊賀の里って確か、忍者の里じゃ……。
「そうだ、ここは我らと敵対する伊賀忍の里だ」
「えっ? 敵ってことは」
「ヒヒィーン」
突然、女性と俺が乗っていた白馬が高らかに前足を上げ、走り出した。
「ちょ、ま、ちょ待てよ!」
あまりに急なことだったので、俺はバランスと言葉遣いを崩した。
「大丈夫か? 秀秋、振り落とされるなよ、落ちたら死ぬぞ」
「いや、落ちても死にはしないと思いますよ」
死にはしないけど、スピードが速すぎて落ちたら骨が何本かいきそうだけど。
「いや、こいつの後ろ足を見れば分かるぞ、落ちたら死ぬ理由が」
後ろを見れば分かる、女性の言葉通り俺は後ろ足を見た。
「ん? よく見えないけど、黒い物体が馬の後ろ足に」
角度が悪くて、黒い物体が良く見えないので、身体を後ろに少し傾けた。
「あ、落ちる」
身体を傾けたことで崩れかけていたバランスが崩れ、俺は地面に落下した。
「手裏剣だよ」
女性は俺が落ちる直前、黒い物体の正体を言った、正体が知れて嬉しいが、欲を言うともっと早く言って欲しかった。
「てことは、俺……死ぬ……?」
俺に向けて大量の手裏剣が飛んで来ているのを見て、二度目の死を覚悟し、目を閉じた。
カキーン。
「秋、何諦めてんだよ、お前が死んだら景姉さんが悲しむからな」
目を開けると目の前にいかつい大柄男が銛のようなもので飛んでくる手裏剣を弾いていた。
「お前ら! 行くぞ、この伊賀忍共をぶち殺せ!」
大柄男のその声で、どこから湧いたのか分からない頭にバンダナをした男たちが一斉に銛のようなものを手裏剣が飛んできた方向に投げた。
グサッ。
一斉に投げられた銛のようなものは何かに刺さっていた。
「ありがとうございます、一体何に向けて投げたのですか?」
「今言っただろ! 伊賀忍だ!」
大柄男は俺を睨みながらそう言った。怖い。
「秋、今のうちに逃げるぞ、乗れ」
「どこにですか?」
「俺の肩に決まってんだろうが!」
そう言うと大柄男は俺を右手で持ち上げ、右肩に乗せた。
「お前ら! 後ろは任せた! 俺は秋を守りながら逃げる、後からついてこい! 一人でも伊賀忍が俺たちのところに来たら、お前ら全員銛で刺すからな!」
大柄男はそう大声で叫び、猛スピードで走り出した。
「落ちるぅぅぅ! もっとゆっくり走ってくださいよ」
「あぁ? 大丈夫だ、俺は絶対にお前を落とさないからな」
「じゃあ、信じます」
大柄男はしっかり俺を支え、落ちないように猛スピードで走った。後ろを見るとさっきまで飛んできていた大量の手裏剣は飛んできていなかった。
「ほらぁ、見えたぞ、景姉さんの白馬だ、並走するからスピード上げるぞ」
「これ以上、上がるんですか?」
大柄男はさっきの二倍ぐらいのスピードを出し、言葉通り、女性の白馬に並走した。
「おぅ、秀秋、無事だったか」
「これは無事と言っていいのですか? 体とハラハラしたから心がボロb……」
「あぁ、無事だぜ、景姉さん」
「それは良かった、ありがとう、武吉、来てくれると信じていたよ」
俺、まだ話途中だったのですが。
「あの、この男性は一体、誰なのですか?」
「瀬戸内海の覇者、海賊王にして、村上水軍頭領、村上武吉だ」
「あなたがむむむ、村上武吉なんですか!」
村上水軍と言えば、あの九鬼水軍と織田軍を破った最強の水軍、文字通り海賊王。すごい。
「でも、海賊って海に居るから海賊なんじゃ……」
「あぁ? じゃあ、陸に居る海賊だから山賊でいいや、村上水軍は水陸両用なんだよ」
「なんですか、その理論」
※前の話で書いたセリフはカットしました。次回からはカットしません。
久しぶりの最新話は、いかがだったでしょうか?
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と、いうわけで、更新再開です!
次回「ようやく女性の正体が分かった件について」
お楽しみに。