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西軍を勝たせたくてあの人になった件について  作者: 藤ノ木猿吉
第一次関ケ原の戦い編
5/12

俺が出てきていない件について

 時刻は同時刻、ここは、東軍、総大将、織田信長本陣。

「光秀は撤退したか?」

 陣の奥で真っ赤な南蛮産の甲冑を着て、南蛮産の金の玉座に座る男は、かの有名な第六天魔王織田信長である。


「ははっ! 明智隊は見事に柴田軍に破られ、全軍撤退した模様でございます」

 そう膝をつき、告げる男は、三河、駿河を治める大名でありながら、信長の支配下にある徳川家康である。


「勝家め……ワシに独立したいと言ってきた時はヒヤヒヤしたわい」


「勝家も少なからず信長様に感謝の気持ちはあるのでしょう……」

 そう言って陣に入ってきた男は、織田家、家老、丹羽長秀である。

「おお! 戻ったか長秀! 両川の軍は蹴散らしたか?」

 信長がそう聞くと、長秀はゆっくりとしゃがみ、頭を地につけて、深々と土下座をした。

「大変申し上げづらいのですが……両川軍は思ったより強く、我々は……精一杯戦ったのですが……」

 長秀がうじうじしていると、信長は立ち上がり横に刺さっていた刀を引き抜いた。

「長秀! 要するに両川の軍に負けたとな?」

「はい……」


 信長はそれまでの笑顔とは違う、真剣な顔になった。

「負けたなら何故ここに貴様がおる」

 そう言うと刀を構えた。

「申し訳ございませ……」

 信長は土下座をしている長秀の右腕を切り落とした。

「謝って済むならこの世に切腹はない」

 長秀はあまりの痛さに体を丸めた。

「あらら……」

 その場にいた家臣、足軽たちはそんな長秀を終わったな……と言わんばかりの目で見つめた。

「お前は追放だ、二度とワシの前に現れるな」

 信長はそう告げると、切り落とした長秀の右腕を拾い、陣の外へ投げた。

「待ってください……信長様……」

 大量の血を流しながら、今にも死にそうな声で長秀は助けを求めた。

「今すぐ消えろ、さもなくば、次は首を切る」

 長秀はぽたぽたと大量の血を流し、陣から立ち去った。


「使えない家臣は要らん、ワシが欲しいのは使える家臣のみ」

 信長はまさしく、魔王のように高らかに笑いながら、そう言うと刀の血を払い、再び玉座の横に刺し、玉座に腰を下ろした。


「信長様! 良かったのですか! 丹羽殿は家老でございますよ!」

 信長が玉座に腰を下ろした直後、一人の足軽が信長の前に立ち、そう怒鳴った。

「なんだ貴様は、ワシの前に立ち、怒鳴るとは……」

「丹羽殿は……私に足軽の私に……」


 スパッ。


 話している途中に首を切り落とされ、足軽は倒れた。

「情など邪魔になるだけよ、たかが足軽が信長様に怒鳴るなんてなおのこと……」

「勝家か」

 足軽の首を切ったのは、東軍、副大将にして、柴田家当主、柴田勝家である。


「信長様にお話がございます」

 勝家は足軽の首を拾い、陣の外に投げ、倒れている体には刀を刺し、信長の前に膝をついた。

「なんじゃ」

「伊達軍は小早川秀秋に敗れ、撤退した模様でございます」

「何! 伊達が撤退だと? 政宗はどうした! 政宗が小早川を倒すと言っていたではないか!」

「政宗には大阪城を……」

「なに……今、なんと申した!」

「政宗には別動隊を率いさせ、大阪城を攻めさせたでございます」

 信長は顔色を変え、立ち上がり、勝家に問いただした。


「勝家! 政宗がこの関ヶ原に居なかったら上田はどうする! 小早川を倒したのち、奴には上田を……」

 勝家はニヤリと笑い、立ち上がった。

「信長の軍は、魔王の軍は上田に勝つことも出来ないと?」


「なんだと?」

 信長は刀を再び地面から引き抜き、構えた。

「私を切る気ですか?」

「貴様の言葉次第では切る」

 刀の先を勝家へ向けながら、信長はそう言った。

「上田にビビっているようでは、天下は取れな……」

 最後まで聞かずに、信長は狂気に満ちた一撃で勝家の首に切りかかった。


フッ。

 勝家は笑いながら、信長の刀の刃先を右手に隠し持っていた小型銃で三発打ち、砕いた。

「信長様、これが南蛮の最先端ですよ」

 左手で足軽の体に刺さっている刀を抜き、信長の首に刃をつけた。

「さらば、信長」


 勝家は目を閉じて、刀をゆっくりと動かした。

 バキバキ。

「ん?」

「なんだ?」

 勝家の刀、小型銃と信長の刀はバキバキと音をたて、その場に砕け散った。


 次の瞬間、陣に居た者が信長、勝家、家康、一部の家臣と玉座を除いて、空に砂ぼこりと共に舞った。

「勝家、貴様何をした!」

「私は何もしてません」

 勝家は即答した。


「うふふふふふふ…」

「何やつだ!」

 信長、勝家は声を揃えて言った。

 少しすると砂ぼこりの中から、ゆっくりと真っ黒なワンピースを着た女が歩いてきて、信長達の前に膝をついた。


「お初にお目にかかります、わらは、上田家、当主、上田信々と申します」

 名前を聞いた途端、信長、勝家、家康は唖然とした。

「ここで我が夢果てるか……」

「こいつが越後、甲斐、信濃をはじめとする……百万石以上を治める、上田家の当主か……」

「日ノ本の死神……」

 信々はまさに死神のように微笑んだ。

「皆さん、驚かないでくださいよー! 私は挨拶をするために来ただけですよ? それとも、い、ま、こ、こ、で死にたいですか?」

 背中に背負っていた大きな槍をゆっくりと抜き、信々がそう言うと、その場に居た者は全員、死を覚悟した。

「嘘ですよ!う、そ! 全く……そうゆうわけで撤……あ、その、前に、これ、落ちてましたよ」

 そう言うと槍を背中に戻し、マジックかのように右手に血を流した長秀の首を出した。


「長秀……」

 長秀の首を見ると信長の表情が変わった。

「あ、この首、あなたの家臣だったんですかー? 間違えて首を切ってしまいましたー! すみませーん!」

「上田信々殿と申したな……そいつはついさっき私の家臣じゃなくなったん……」

 信々は信長の話を最後まで聞かずに長秀の首を空に向けて投げた。

「何をする気だ」

「ちょっと楽しいこと」

 そう言うと信々は腰に差していた刀を抜き、空中で長秀の首を木っ端微塵に切り、刀をしまった。

 長秀の首は原型が分からないほど木っ端微塵になり、地に落ちた。


「貴様……それが武士に対して何を意味するか分かっておるのか!」

 信長は腰に差していた隠し刀を抜き、信々に切りかかった。


「信長殿……この程度ですか……」


 信々は背中に背負っていた槍を抜き、信長の刀を折った。


「上田……」


 自らの死を悟り、信長は目を閉じた。

「さ、よ、う、な、ら、信長殿」


 バキューン。


「誰ですか?」

 信長の心臓に槍が刺さる瞬間、信々は右足を鉄砲で撃たれ、バランスを崩し、槍を地に落とした。


「上田を討つなら今しかない」

 それまでただ見ているだけだった家康が腰に差していた刀を抜き、信々に切りかかった。


(刀が信々に当たる瞬間、ずるいですねぇ……家康さんと言わんばかりに信々はニヤリと笑った)


「これからワシに殺されるのに何故笑う」


「殺されるのは貴様だからだ」


 家康の耳にはどこからか女の声が聞こえた。


 グサッ。


 女の声が聞こえたタイミングとほぼ同じタイミングで突然飛んできた刀が横腹に刺さり、家康は力が抜け、刀を地面に落とした。


「誰だ……」

 家康が、刀が飛んできた方向を見ると、信々とは正反対な白いワンピースを来た女が立っていた。


「誰だ? ……誰に向かってそんな口聞いてるんだ、お前らみたいな小大名とは違う大大名、上田家家老、足利義氏だ」

お待たせいたしました。

あれ、更新早くない? と思った方、こんにちは。


西軍を勝たせたくてあの人になった件について、第五話をお読みいただき誠にありがとうございます。

いかがだったでしょうか? ブックマーク、評価、ありがとうございます。とても嬉しいです。

更新頻度については、基本は一週間に一話投稿(を目標にしたい)をしていきたいと思ってます。


ブックマーク、評価、コメント、レビューはとても励みになります。よろしければお願いします。

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