歴史が変わってしまった件について
徳川軍に重元は殺された、そして、徳川軍は俺も殺そうと迫って来た、死を覚悟したその時、俺を助けてくれた謎の援軍。
そして、俺は足軽を殺した。
足軽を殺したことで俺の精神は今にも崩れそうだった。
「なんで俺は足軽を殺したんだ……殺す必要なんかなかったんじゃないか……」
頭の中を後悔に埋め尽くされた俺は、背後から忍び寄る足軽に気づくことが出来なかった。
「小早川秀秋の首取ったり!」
もちろん、そう叫ぶ足軽の声も聞こえなかった。
シュー。
背後でなにかが切れる音がした。
「何の音だ」
後ろを振り返ると、首から上が無い血まみれの足軽の死体が倒れていた。
「なんで、また死んでるんだよ! もう死なないでくれよ! 俺は……俺は足軽が死ぬのなん……」
俺が無意識に目を閉じて、下を向き、発狂する勢いで地面にそう叫んでいると、そっとなにか暖かいものに俺の体は包まれ、同時に耳元で優しい声が聞こえた。
「秀秋、お前はよくやった、お前は家臣の仇を取った、お前は私の自慢の弟だ」
俺の耳元に聞こえたのはさっきの若い? 女性の声だった。
その女の人の声を聞いてなぜだか分からないが、少し心が落ち着いた俺は状況を確認するためにゆっくりと目を開けた。目を開けると、黄色い、胸元が大きく開いた、下半身に猿の絵がでかでかと描いてある、花魁のような着物を着た女性に俺の体は抱きしめられていた。
「あなたは……」
俺がそう聞くと女性は。
「今は何も考えなくていい、お前の敵はお姉ちゃんが倒す」
と答え、そっと俺から手を離し、俺と女性を囲うように集まってきていた足軽を腰に差していた刀を抜き、次々に斬っていった。
「伊達軍?」
ふと、敵軍が掲げる旗を見ると伊達家の家紋が書かれていた。
「さっきまで戦っていたのは徳川軍のはず……」
歴史にあまり詳しいとは言えない俺だが、徳川家と伊達家の家紋を見間違える訳はない。それに重元も徳川軍と言っていた、何かがおかしい。
俺がそんなことを考えている間にさっきまで見渡す限り大量に居た伊達軍の大半が女性によって倒されていた。
「撤退じゃー!」
伊達軍の誰かがそう叫ぶと伊達軍は一斉にものすごい勢いで撤退した。
「あの人すごいなぁ……」
「お前のお姉ちゃんは最強だからな」
いつの間にか、さっきまで伊達軍の足軽を刀で次々に切っていた女性が俺の隣に立っていた。
「あの……」
俺は考えても仕方ないと思い、女性に聞くことにした。
「なんだ?」
「この戦いの西軍と東軍の総大将は誰ですか?」
「どうした秀秋? 重元の死はそれほど応えたか? 西軍の総大将は明智光秀、東軍の総大将は織田信長だ」
女性は少し不思議そうな顔をしながら答えた。
「歴史が変わって……いる」
俺が歴史を変えたのか、俺が、重元が、小早川軍が、徳川軍に攻撃をした。これは歴史上起こってはいないことだ。
きっとそれをきっかけに歴史が改変したんだ。
「西軍の戦況は? 戦況はどうなんですか?」
俺が焦りながらそう言うと。
「秀秋……かわいそうに、記憶を失うほど応えているのだな」
女性は俺の頭をポンポンと優しく叩くと俺の質問に答えた。
「明智殿は東軍副大将柴田勝家隊に攻められて壊滅、そのあと少しして撤退した」
「総大将が居なくなったら戦は終わりですよね?」
「そうだ、つもりこの戦いで西軍は負けた」
「なるほど……」
西軍は結局負けるのか……。
「と、なると勝者は東軍、織田信長ということですか?」
俺がそう当然のことを聞くと、女は少し考えてから。
「それが、そういうわけではないようだ」
と言った。
「どうゆうことですか?」
西軍と東軍の戦いで西軍の総大将が退却したのなら、普通に考えれば勝者は東軍のはずだ。だから女性が何を言っているのか、俺にはよく分からなかった。
「それが……どうやらこの関ヶ原に西軍にも東軍にも属さない第三戦力が迫っているようだ」
「第三戦力?」
女性のその言葉を聞いて、俺はより、よく分からなくなった。
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西軍を勝たせたくてあの人になった件について、第四話をお読みいただき誠にありがとうございます。
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