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西軍を勝たせたくてあの人になった件について  作者: 藤ノ木猿吉
第一次関ケ原の戦い編
2/12

タイムスリップして早々ピンチ到来の件について

 結構強い火薬の匂いがする、耳を澄ますと叫び声が聞こえる、目を開けると少し先には死体が転がっている、そんな場所に俺は居た。


「ここは……」

「殿! すぐそこまで徳川軍は迫っています! どうされるか決められませ!」

「殿?」

 俺の前で四十代? ぐらいの男が訳の分からないことを言っている。


「あなたは誰ですか?」

 俺がそう言うと男は不思議そうに答えた。

「松野重元ですよ?」

 俺はその名に聞き覚えがあった。

「本当に俺はタイムスリップしたのか……?」


 俺の予想が正しければここは、一六〇〇年の関ヶ原だ、重元が俺を殿と呼んでいる。と、いうことは俺は小早川秀秋? 悩んでも仕方ない重元に直接確認してみよう。


「重元! 俺は小早川秀秋か?」

 我ながらひどい、家臣に自分が誰か聞く戦国武将なんて俺以外に居るだろうか……。あー、これが日本の歴史に刻まれるのか、ごめんなさい、小早川さん。


「殿は小早川秀秋様ですよ?」

 やっぱりな、俺は小早川秀秋だ、納得、納得……。

「ってなわけ、あるかよ」

 慣れないひとりツッコミをすると重元は気持ち一歩後ろに下がっていた。


「引いた?」

「全然」

 明らかにさっきより重元の俺を見る目が冷たくなっているのを俺は感じた。


 バキューン。


「殿!」

 重元は俺を遠くから飛んできた何かから守るために突き飛ばした。


「痛てぇ……いきなり突き飛ばすなよ、謀反か?」

 俺が文句を言いながら立ち上がると重元が飛んできた何かを刀で切っていた。


「殿、申し訳ございません、流れ弾が来ましたのでつい……」

 重元はさっきよりやや暖かい目になり、申し訳なさそうな顔でそう言うと、刀を収めた。


「オマエ、イマ、カタナデ、タマキッタヨナ」

 驚きすぎて片言になってしまった。

「ハイ、ソウデス、イマ、カタナデタマキリマシタ」

「なんでお前まで片言になってるんだよ……」

「いや……つい、つられて……」

 流石、小早川家の家臣だな、少し変わっている、待てよ……重要なことを忘れてる気がする。


「そうだ、俺、なんで小早川秀秋なんだよ!」

 やべ、つい声が出ちまった。

「殿……? どうしました?」

 重元はさっきよりものすごく暖かい目になり、頭大丈夫? みたいな顔をして俺を見てきた。


「ごめんなさい、俺が悪かったです、小早川秀秋大好き、超好き」

 これで大丈夫なはずだ、大丈夫だと思いたい。

「なら良かったです」

 重元の顔は頭大丈夫? みたいな顔から孫を見るおじいちゃんみたいな顔になった。


「多分これは、小早川秀秋として西軍を勝利に導けってことだな、やってやろうじゃないか、で、重元、今の状況をもう一回説明してくれ」


「徳川軍がすぐそこに居ます」

 重元はそう言いながら、右手の人差し指で右横を指した。


「あ、ほんとだ」

 右横を見ると凄まじい数の徳川の旗と足軽がこっちに走ってきていた。


「重元、逃げるぞ!」

 俺は大声でそう叫び全力で前だけ見て走った。

「殿! サイショニ、ワタシイイマシタヨネ? すぐそこに徳川軍が迫ってるって……」

 重元は後ろの徳川軍をチラチラ見ながら俺の隣を走っていた。

「お前、よくついてきたな、絶対死ぬと思った」

 歳的にキツそうだしな。

「わ……わ……私まだ……二十代ですよ……はぁ……!」


 嘘だろ……。絶対四十代だと思った、見た目が。

「殿……私……もう無理そうです……私が後ろから追いかけてくる……はぁ……徳川軍を……足止めしますので殿はその間に逃げてください」

 重元は今にも死にそうな声になって、それと同時に走るのも遅くなっていた。


「ふざけんな! 重元、お前が走るのを止めるなら俺も走るのを止める、俺は家臣を見捨てたりしない」

 後ろを走っている重元を見ながら俺がそう怒鳴ると重元はそれ以上の声で怒鳴り返してきた。


「殿……今、あなたの隣に私しか居ないのはみんなあなたを守るために死んだんですよ! あなたのために皆、命を落としたんです! あなたのために、あなたを生かすために、だからあなたは生きなければいけない、あなたは生きて、あなたのために死んだ者達に報いなければいけない、だから生きてください!」


 重元に言われて初めて気づいた、俺の周りにはこいつしか居ない。

「待てよ、みんな死んだってなんだよ! 別働隊としてどっかの軍と戦ってるとかじゃないのかよ!」

 俺はある程度、徳川軍と距離が出来たのを確認し、走る足を止めた。


「ち……違います、皆……あなたのために死にました」

 すぐ後ろに徳川軍が迫っているにも関わらず重元も走るのを止め、徳川軍の前に立ち塞がった。


「私は殿のために生きて、殿のために死ぬ、ここを通りたければ私を殺していきなさい、殿……どうか生きてください」

 小声でそう言うと、重元はゆっくりと刀を構えた。


西軍を勝たせたくてあの人になった件について、第二話をお読みいただき誠にありがとうございます。いかがだったでしょうか? 更新頻度については後ほど、第三話、更新時に決めて活動報告に投稿します。

ブックマークありがとうございます。とても嬉しいです。


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