上田の家臣が現れた件について
次回、第一次関ヶ原の戦い編完結です。
開いた城門から男、宇喜多秀家、どうやら俺たち小早川家を嫌っているようだが、俺は同じ秀吉様の秀の字が入っている者同士仲良くしたいのだが、そうはいかないらしい。
ようやく大坂城の城内に入った俺と隆景さんと武吉は、秀吉様の命令で案内役を任された秀家に嫌々評定までの時間待っている部屋まで案内をされていた。
「ここで日没まで待っていろ! 隆景様は秀吉様がお呼びなので天守閣まで行ってください」
秀家はそう言い、そそくさと部屋を出て行った、どうしてそんなに俺を嫌うのだろうか、秀吉様に秀の字を貰った者同士仲良くした方がいい気がする。
「私は殿の元に行かせてもらう、お前たち日没まで大人しくしてくれ」
隆景さんは立ち上がり、俺たちを睨みながらそう言った。
「ってことは評定になったら暴れていいってことか? 景姉さん」
武吉は部屋の畳に横になりながら隆景さんの目を見ずにそう言った。目を合わせないってことは隆景さんが怖いってことなのか。
「さぁな、それはお前が決めろ、武吉、あとこの城で寝るのはやめておけ」
隆景さんは僅かに笑いながら部屋を出て行った。
「さて、秋、いやお前は何者だ?」
武吉は隆景さんが完全に部屋から離れたのを確認してから起き上がって、俺の前に目線を合わせてあぐらを掻いた。
「武吉さん……」
聞かれるとは思っていたが、こんな直球で聞いてくるとは思わなかった。というか、俺は話していいのか。
「話せ、俺はお前が誰であろうと今の小早川秀秋のお前に仕える」
迷う必要はないな、武吉は根っからの小早川家の村上武吉だ。
「分かりました、話します」
それから、俺は長々と日没までここまでの経緯を話した。
「秀秋、武吉、評定だ、早く来い」
隆景さんがドタバタと音を立てながら部屋の襖を開けてきた。もう日没か、話に夢中になっていて、気付かなかった。
「景姉さん、すまん、すぐ行く」
武吉は隆景さんの顔を見て、すぐに焦りながら、立ち上がった。
「行くぞ、秀秋」
武吉は俺の右腕を力強く掴みながら立ち上がらせた。
「あぁ、武吉、行こう」
俺は武吉より早く部屋を出た、俺はこいつの主だからな。こらからは、俺がこいつを先導する。
「お前たち、くれぐれも的外れなことを言って暴れるなよ」
隆景さんは天守閣の前の階段の最終段で釘を打ってきた、この釘は武吉に打ったんだろう。武吉に打ったなら、なんでお前、たち、なんだ。
「ってことは的外れじゃないことを言ってなら、暴れていいってことだよな?」
武吉はさっきと違って、隆景さんの目をしっかり見ながら、そう言った。
「ふん、勝手にしろ、お前が万が一、何かをやらかしても責任を取らされるのは小早川家だ」
隆景さんもさっきより笑いながらそう言い、天守閣に登った。俺と武吉もそれに続いた。
「おぉ、来たか、小早川家諸君」
秀吉様は俺たちの顔を見て、にこやかに笑った。隆景さんは秀吉様と同じ少し高い畳に座った。俺たちは隆景さんが指をさした数十人は居る武将の最後列に座った。
「さぁ、小早川家さんも来たところで、評定を始めるとしましょう」
秀吉様が目で合図をすると、最前列の真ん中に座っていた背中に青色の猿の絵が描かれた着物を着た男が話し始めた。
「まずは、豊臣の皆様、先の大戦ご苦労様でした」
男がそう言うと、前に座っていた武将たちが一斉に頭を下げた。俺の横に座っている武吉に小声で頭を下げるように言われたのでタイミングを他の武将たちに合わせることが出来
た。
「しかし、結果はあまりいいものではありませんでした。殿下、詳しいお話をお願いします」
「うむ、今回の戦、豊臣は西軍として戦ったのじゃが……肝心の総大将の光秀殿は早々に撤退してしまって、実質ここで戦の結果は決まっていたの……」
秀吉様は神妙な顔をしながら、今回の関ヶ原の戦いの結果を話していたのだが、その途中で突然、最前列の右側に座っていた赤色の猿の絵が描かれた着物を着た爺さんがゆっくりと立ち上がった。
「秀吉、光秀はどこに行ったのだ?」
「ふんっ……そんなことワシが知るか」
秀吉様は右手に持っていた扇子を開きながら高らかに笑った。
「利家殿、要件はそれだけか?」
利家? 利家ってことは前田利家か。近くに行って握手したい。
「秀吉、光秀を探さないのか?」
「……」
利家の質問に秀吉様は答える気がないようだ。
「そこまでにしましょう、前田殿」
「でもなぁ……長政」
長政は浅野長政か。この評定の司会をしているのが浅野長政。
「利家殿、詳しい話をしたいのなら後ほど、ワシの元に参られろ」
「そうだな、この話は豊臣ではなく、元信長公の家臣同士で話すべき話かもな」
秀吉の提案を呑み、利家はゆっくりと座った。
「では、話を続けよう、戦の結果は明智殿の撤退で決まったのじゃが、その後に上田が乱入したのは知っておるな?」
そういえば、関ヶ原で隆景さんが言っていたな、上田家が乱入したと。
「上田とその家臣が信長公と家康公に致命傷を負わせて、総大将の信長公は泣く泣く撤退を余儀なくされ、この戦いの勝者は上田になった」
秀吉様の話を聞いて、武将たちはざわついた。
「ここまでが先の大戦の結果じゃ、ここからが本題なんじゃが」
秀吉様がそう言うと、最前列と秀吉様の間に砂ぼこりと血で汚れた白装束を着た男が連れてこられた。
「どさくさに紛れて我が城に愚かにも攻めてきた伊達をどうするかじゃ」
あれが伊達政宗、独眼竜、だが、独眼竜と呼べる覇気は一切感じなかった。
「待て、その首、私たちが預からせて頂く」
その声と共に天守閣の天井から砂埃まみれの白いワンピースを着た女が降りてきた。
「これはこれは……上田の家臣殿」
「上田の家臣殿ではない、私の名は足利義氏だ」
その名を聞くと座っていた武将たちは一斉に立ち上がり刀の鞘に手をかけた。
「お前たち、その刀は抜かないほうがいいぞ」
義氏は武将たちを嘲笑いながらそう言った。
「たった一人でこの豊臣家の猛将たちに勝てると? 何を馬鹿な事を抜かしているんだ?」
立ち上がった武将たちでよくは見えないが、そう言いながら、武将の一人が刀を抜いた。
「ならやってみるといい、貴様たち如きでは私には勝てない」
義氏は更に武将たちを挑発した。この女は死にたいのか。
「まずいぞ、秀秋、お前は下を向いていろ」
武吉は立ち上がり、最前列に走った。
「まぁ待てよ、元春」
武吉はそう言いながら、刀を構えた武将の頭を天守閣にその音が響く勢いで床に叩きつけた。絶対痛いよなあれ。
「村上殿に命を救われたな、吉川元春、と言っても気絶してて聞こえないか」
義氏は笑いながらそう言い、秀吉様の前に座った。あれが毛利両川の吉川元春か、隆景さんの兄弟。
「元春、すまないことをした、でもこれが吉川の小早川の為だ」
武吉は気絶している元春を謝りながら背負い、天守閣の後ろに寝かせた。
「お前たち、刀を収めて、座れ」
秀吉様がそう言うと、武将たちは刀を鞘に収め、座った。
「すみません、豊臣殿、つい煽ってしまいました」
「いいんじゃ、いいんじゃ、気にするでない」
秀吉様は笑っていたが、今までの笑いとは明らかに違っていた。
「して、要件を聞かせて頂こうか」
「簡単に言うと、姫がそこにいる奥州の若造を欲しがっているので、譲って頂きたい」
義氏のその言葉に武将たちはざわついたが、更にざわつかせる一言を義氏は続ける。
「譲らないのであれば、関ヶ原の戦後処理として豊臣家を潰します」
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次回「島津家と戦うことになった件について」
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