念願のタイムスリップが出来た件について
古びた校舎。ミシミシと鳴る床、雑巾の匂いがする教室、時間がズレている掛け時計。日本史の授業をする教師。
しかし、クラスの半分以上は睡眠学習をしている、もちろん俺も睡眠学習をしている。
そんな中俺は考える。
「もしも、関ヶ原の戦いで東軍ではなく、西軍が勝っていたら日本はどうなっていたのだろう」
と、ネットで調べると日本は崩壊するとか秀頼ではなく三成が豊臣政権の中心人物になるとか最終的に徳川家に滅ぼされて結局現代に繋がるとか色々言われている。
でも、それは憶測でしかない、何故なら実際に西軍が勝ったのを誰も見たことが無いからだ。
なら、俺が過去にタイムスリップして西軍を勝利に導けばいいじゃないか。
でも、今の時代にタイムスリップなんて非科学的なことが出来るわけもない。
だから俺はタイムマシンでタイムスリップするのではなく、俺が寝ている時に豊臣秀吉が歴史を変えてくれと頼んできてタイムスリップする、こっちに期待している。
期待してるから学校に来ても全部の授業、体育も立ちながら寝て、いつ秀吉に頼まれても大丈夫なようにしている、そんな俺をクラスの奴と教師は嘲笑う。
それでも俺は秀吉に頼まれる日が来ると信じて授業中に寝る。
「と、いうわけでテスト範囲終了です、来週のテスト頑張ってください」
授業が終わったようだ、俺は目を覚ましてトイレに用を足しに行った。
「ふぅ……いつになったら頼みに来てくれるんだ秀吉……」
「小僧、今秀吉様のことを秀吉と呼び捨てにしたか?」
用を足し、手を洗っていると突然脳内に男の声が聞こえた。
「誰だ、お前、とゆうか何故、俺の脳内に話しかけている?」
俺は冷静に男に質問を返した。
「お前が言ったのではないか、秀吉様に頼まれたいと」
こいつ、何言ってるんだ。
え、もしかしておれの妄想? そんなわけないよな、と、ゆうか妄想じゃないと思いたい。
「妄想などではない、お前の周りを見てみろ」
男に言われた通り周りを見渡すと蛇口の水が流れている途中で止まっていた。
「もしかして」
そう思い、左腕にしていた腕時計を見ると針が止まっていた。
「時間が止まっている?」
「そうだ、時間を止めた」
「すごい、こんなのアニメでしか見たことない、普通に驚いた」
「あにめ? とはなんだ」
こいつアニメを知らないのか。
「アニメってい……」
「そんなのはどうでもいい」
待って、今俺話してるよね? まぁ……どうでもいいか。
「そういえば、まだ名乗ってなかったな、俺は豊臣家、五奉行筆頭石田三成だ」
「石田三成ってあの石田三成?」
「そうだ」
と、ゆうことはついにタイムスリップイベント発生か。
「して、三成用件はなんじゃ」
話し方をそれっぽくしてみた。
「秀吉様よりお前に命を下しに来た」
「なんじゃ」
「一六〇〇年、関ヶ原の戦いで西軍を勝利に導けと」
やった、ようやくこの時が中学一年生の頃から寝続けて、五年ついにこの時が来た、感激のあまり俺の両目からは自然と涙が出てきていた。
「喜んで引き受けさせて頂く」
両目からでてきた涙を右手でこすって拭き、今までとは比べ物にならないぐらいの大きい声でそう答えた。
「有難い、では早速歴史を変えに行って来い」
その言葉を三成が発した瞬間、俺の体は宙に浮き、天井に現れた闇の中に吸い込まれていった。
「西軍を勝利に導いてやるぜ!」
こうして、俺は一六〇〇年、関ヶ原の戦い当日の関ヶ原にタイムスリップした。
西軍を勝たせたくてあの人になった件についてをお読みいただき誠にありがとうございます。以前投稿しました西軍を勝たせたくてあの人になった件についてのリメイク版です。読みやすくすることを意識し、リメイクしました。
ブックマーク、評価、コメント、レビューはとても励みになります。