表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キブシ商店街  作者: 色生 詞晴
小さなヒーロー
7/31

赤毛


ーーーー・・・放課後


下駄箱で靴を履いてから外に出ると、夕暮れの光が綺麗に反射する赤毛が、俺を見て笑っていた。

忘れるはずのない姿に、体が硬直するのがわかる。



「こんにちは」


「お…」


「お?」


「おばけ!!!」



やっと思いで言葉が出たかと思えば、それと同時に校門とは逆の方へ体が走り出した。

後ろからは昨日より大きな声が、俺に向かって飛んでくる。



「待って!ねえ!また逃げるの!?」



そんな声も聞こえないかのように更に逃げようと足を早めると、途端に悲しそうな女の子の声が聞こえた。



「ねぇ、お願い!車椅子、1人じゃ上手に動かせないのよ!押してくれないかしら…?一緒に帰りましょう…?」



あまりにも悲しそうに話すから、思わず足が止まってしまう。

困ってる人には優しくしなさいって、秋が昔から言ってた。

だから、困ってる子を置いて帰ったら、きっと秋も怒ると思う。

助けなきゃという気持ちよりも先に、気づけば体は女の子の方へと向かっていた。



「お、おばけ…名前は…?」


「あら、おばけじゃないわ。入江(イリエ) 愛梨子(アリス)っていうの。

6年3組よ。

ビビリくん、貴方のお名前は?」



助けてやろうと戻ってきたのに、ムカッとする事を言われて嫌な気持ちになる。

思わず愛梨子を睨むような顔をしてしまった。



「び、ビビリじゃねぇよ!…鳳 春樹。3年1組。」



ムキになる俺を見て愛梨子は"ムキになっちゃって可愛い"とか言ってクスクス笑ってる。

首から頭にかけて熱くなるのがわかって、誤魔化すみたいにまた大きな声を出した。

それでもクスクスと笑う愛梨子がよく分からなくて、ずっと睨んでいた。



「ふふっ。睨めっこは程々に、そろそろ帰らないと仁に怒られてしまうわ。

申し訳ないのだけど、押してもらえるかしら?」



まるでどこかのお姫様みたいな言葉を使う愛梨子に、変なやつだなという目を向けた。

でも、また困ったような顔をすると、ぐっと言葉を飲み込んで車椅子の取っ手に手をかける。

ゆっくりと動き出した車椅子は、思っていたよりも重さを感じて、

ちゃんと愛梨子は生きているんだと感じた。



「春樹は優しいのね」



そうやって楽しそうに笑う愛梨子には、あまりにも似合わない大きな車椅子と、動かない足。

その時俺が背中に冷や汗を感じていた事も、持ち手を握る手が汗をかいていた事も、

自分の後ろが見えない愛梨子には気づけないんだろう。


挿絵(By みてみん)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ