おばけ
大きな車椅子に、小さな女の子が座り微笑んでいる。
初めて見る光景に、大きな不安を感じた。
怖い。そんな言葉が頭の中でいっぱいになり、言葉も出ないし体も動かない。
「あ…ごめんね、脅かしちゃったかしら?
私、歩けないの。」
「あるけ…ない…?」
やっとの思いで出た言葉は、うまく繋がらなくて言葉にならない。
「そうなの。あ、名乗り遅れちゃったね。
私は…」
大きな不安が目の前がクラクラして、気づいたらその場から走って逃げ出していた。
後ろで女の子の声が聞こえたけど、振り返るなんて出来なくてずっと走ってた。
秋の姿を見つけると、そのまま勢いよく抱きついてしまった。
「は…春樹…?どこに行っていたんだい。
こんなに怯えて…」
「あっ、あき…秋ぃ…おばけ、車椅子の…おばけぇぇえ…」
秋のお腹にしがみつくと、すごく安心して
我慢してたものが一気に出ていくみたいに、沢山涙が出てきた。
生きてるのか死んでるのかもわからないくらい、不気味で異常な光景に見えた。
それがたまらなく怖くて、ワンワンと泣いていた。
「あらまぁ…もしかして、愛梨子ちゃんの事かしら?」
「愛梨子?」
「えぇ、時計屋さんの姪っ子さんで…」
近くにいた着物のお店の女の人が、秋と話してるのを秋の腕の中で聞いてた。
そのうち泣くのも疲れて、そしたらどんどん意識が遠くなってきて、気づいたら眠っていた。